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巻ノ百九拾伍 探せ!見事な擬宝珠 の巻

 草津宿を出てから二時間は歩いただろうか。ようやく瀬田川に架かった瀬田の唐橋が目の前に迫ってきた。

 この辺りまでくると人の往来も随分と増えてくる。大作たちは周りの邪魔にならないように二列縦隊を作った。


 いよいよ姿を現した観光名所にお園も興味津々といった顔をしている。


「あそこに見えているのが瀬田城跡だ。本能寺の変が起こった時、城主の山岡景隆って奴は瀬田の唐橋と瀬田城に火を掛けて逃げたんだとさ。現代だったら現住建造物放火罪だぞ。アレはたとえ自宅に火を点けても罪に問われるからな。とにもかくにも、そのお陰で光秀は橋を架け直すまで三日も時間を空費したらしい。これがなければ後の展開も大きく変わっていたかも知れんのになあ」

「ふ、ふぅ~ん。自分のお城に自ら火を掛けるなんて、思いきりの良い城主よね、手ごわいわ」

「お前はラ()バ・ラルかよ! それはともかく、これって第二次大戦に例えるとレマゲン鉄橋みたいなイベントだよな。そんで、山岡景隆に相当するのはロバート・ヴォーンだ。知ってるか? ナポレオン・ソロの人だぞ。とにもかくにも、今の瀬田の唐橋は本能寺の変で焼けた後、秀吉が架け直した物らしい」


 またもや話が変な方向に行きかけたので大作は咄嗟に軌道修正を図る。しかし、まわりこまれてしまった! 百戦錬磨のお園にはそんな小細工は通用するはずもないのだ。


「ふぅ~ん。秀吉ってお方は大工仕事もなさるのね。こんな大きな橋を造るなんて、さぞや秀でたる大工だったのかしら」

「何その『法隆寺を建てたのだ~れだ? 大工さん!』みたいな発想。言っとくけど俺は突っ込まないぞ。年頃の男の子だからな」

「はいはい、ネタにマジレスカコワルイなんでしょう。それにしても大きな橋ねえ。私、こんなに大きな橋は見たこともないわ」


 スマホで調べてみると瀬田の唐橋は神功皇后の時代から架かっていたそうだ。それって邪馬台国とか卑弥呼とかの時代じゃね? 古代人の建築技術は侮り難いな。

 ちなみに、その場所は二十一世紀に橋が架かっている場所から川を八十メートルほど南に下ったところだ。そこで古代の橋脚が発掘されたんだとか何とか。

 それが現在の位置に架け直されたのは信長の時代らしい。ってことは長さも現代と同じくらいなんだろうか。

 いやいや、当時の長さは百八十間、約三百二十七メートルもあったって書いてある。

 これってニミッツ級やジェラルド・R・フォード級の航空母艦に匹敵する大きさなんじゃね?


「こんだけ長いとセスナ機くらいなら離着陸できるかも知れんな」

「でも、幅は四間しかないのよ。ちょっと狭くないかしら」


 大作の無邪気な思い付きを萌が現実という名のハンマーで無慈悲に叩き壊そうとする。

 だが、まだだ! まだ終わらんよ! セスナの力こそ人類の夢だから!


「四間ってことは七メートルちょいだよな。それくらいあれば行けるんじゃね? 世界最大級の総二階建て旅客機エアバスA380は幅八十メートル。そんな奴が四十五メートル滑走路で運用できるんだぞ。欧州航空安全庁や米連邦航空局が承認してるんだ。セスナの全幅は十メートルか十一メートルじゃん。普通に余裕あると思うんだけどなあ」

「橋には欄干って物があるのよ。翼が当たったら危ないでしょうに。そんな危険な運行は私の目の黒いうちは断じて認可しないわ。いい加減、現実を直視しなさいよ!」

「ちょっと待てよ、現実を直視できていないのは萌の方だろう! セスナは高翼単葉しかないんだぞ。そしてセスナ170でも高さは二メートル以上もあるんだ。欄干になんてぶつかるはずがない! 絶対にだ!」

「どうどう、気を平らかにして頂戴な。ここには『せすな』なんて無いのよ。そんなことで言い争うなんて阿呆らしいわ」


 お園がボクシングのレフェリーのように二人の間に割って入る。その顔には『ブレイク!』と書いてあるかのようだ。

 で、ですよねぇ~! 大作は神妙な顔をしながら心の中で激しくガッテンボタンを連打する。チラリと横目で萌の顔色を伺うと禿同といった表情だ。

 大作は小さくため息をつくと心の中のセスナ172を瀬田の唐橋に強行着陸させた。




 一行はぞろぞろと橋のたもとまで進む。見た限りでは橋守みたいな人はいないようだ。どうやら通行料金を取られたりはしないらしい。大作は勝手に解釈して渡らせてもらうことにした。


「知っているか、お園? ずらりと並んだ擬宝珠の中に見事な形のものが二つあるんだ。その意味がわかるな?」

「見事なる形の擬宝珠ですって? でも、なんで二つだけなのかしら。どれもみな、見事なる形をしていると思うわよ。『みんなちがって、みんないい』じゃなかったの?」

「そもそも美に万人共通の絶対評価なんて無いはずよ。あんたの言ってることは多様な価値観を否定する全体主義的な危険思想だと思うわ」


 萌が意地の悪そうな笑みを浮かべながら突っ込みを入れる。いやいや、あんた絶対に元ネタを知ってるやろ~! 大作は心の中で絶叫した。


「う、うぅ~ん。そうきたか…… そうは言うがなお園、この話の肝はアレなんだ。千利休と古田織部は同じ擬宝珠を見て見事なる形だと思った。この時代を代表する美術家? 芸術家? そんな感じの二人の感性がぴた~りと一致したっていう奇跡をだな……」

「奇跡は起きる! 起こしてみせるわ!」

「いやいや、急にどしたん?」

「いいから黙ってて頂戴な。気が散っちゃうじゃない」


 そう言うとお園は急に眉間に皺を寄せて擬宝珠を睨み付ける。もしかして奇跡って言葉が壺に嵌まったのか? 分からん、さぱ~り分からん。

 ちなみに『坪に』ではないので要注意だ。まあ、坪に嵌まるっていう状況がちょっと想像できないんですけどね。

 まあ、どうでも良いや。気の済むまでとことんやって下さいな。大作は心の中で小さくため息をついた。




 大作、お園、萌、サツキ、メイ、藤吉郎と相州乱破の四人は糞真面目な顔で橋の上を右に行ったり左に行ったりしながら擬宝珠を観察する。

 真剣そうなお園に感化されたんだろうか。誰一人として口を開く者もいない。こういう雰囲気は苦手だなあ。大作の悪戯心に火が点く。


「俺は…… 俺たちは橋の真ん中を渡るぞ!」

「いったいどうしたのよ、大佐。藪から棒に」

「このはしわたるべからずって知ってるか? 『この橋』と『この端』を掛けてるんだぞ。分かるかな~? 分かんねえだろうな~」

「大佐がそう思うんならそうなんでしょう、大佐ん中ではね。いいからもうちょっとだけ静かにしていてくれる? あと少しなんだから」


 大橋を渡り切り、川の西寄りに浮かぶ中之島を横切る。細長い中洲には柳の古木が生えており、その脇に小さな茶店が営業していた。とは言え、店先の床几には一人の客も座っていない。どうやら開店休業のようすだ。

 ちょっと一服して行きませんか? 大作は横目でちらりとお園の顔色を伺う。だが、擬宝珠に夢中でそれどころではないらしい。


 長い長い大橋に比べると短い小橋はたったの五十メートルほどしかない。あっという間に川を渡り切った一行は唐橋西詰に辿り着いた。

 大作はム○カ大佐になりきって声音を作る。


「時間だ!! 答えを聞こう!!」

「見事なる形の擬宝珠っていうのは東と西、両端の擬宝珠ね? そうでしょう?」

「私も端っこの擬宝珠が見事だと思ったわ」

「某も同じ物が良い形のようにお見受け致しました」


 くの一や藤吉郎のみならずチーム風魔の面々までもが禿同といった顔で激しく頷いている。


 擬宝珠なんてどれも一緒じゃん!

 さぱ~り見分けの付かなかった大作としては立つ瀬が無い。何ともリアクションに困る展開になってしまった。

 咄嗟にオーバーリアクション気味の反応を返すのが精一杯だ。


「な、なんだってぇ~! あぁ~ 目がぁ、目がぁ~!! って言うか、そんなにあっさり正解されちゃあ面白くもなんともないぞ。ちっとはボケて欲しかったんだけどなぁ」

「だってしょうがないわよ。見るからに見映が良かったんですもの。なるべく良い物を両端に置くっていうのは当たり前のことなんじゃないかしら」


 そ、そういうことかよ…… 一番綺麗な物や格好の良い物を手前とか上に配置するなんてディスプレイの基本テクニックだ。何でこんな単純なことに気付かなかったんだろう。

 幽霊の正体見たり枯れ尾花。仕掛けが分かってみれば千利休や古田織部もたいしたことないな。大作は二人の茶人としての評価を一段階引き下げた。




 川の対岸に渡った大作たち一行は北西へと向きを変えて歩みを続ける。

 何だか建物の密度が少しだけ増してきた感じだ。これはもう町並みといっても良いレベルなのかも知れん。


 視界のずっと先の方には大津の町と大津城らしき一群の建造物が並んでいる。その中でも望楼型で四重五階の天守が特に目を引いた。

 この城は琵琶湖に半分突き出した水城で二の丸や三の丸は内陸にあるらしい。だが、本丸は琵琶湖に接しており港湾機能を兼ね備えているんだそうな。


「あのお城が大津城だぞ。関ヶ原の戦いに先だって西軍は一万五千もの兵でもって城を十重二十重に取り囲んだ。京極高次はそれを物ともせず三千の兵と籠城して一週間も粘ったんだそうな」

「ふ、ふぅ~ん。ねばったのね。それでどうなったの? 京極高次ってお方は」


 お園が大きな目をキラキラさせながら話に食い付いてくる。例に寄ってこいつの興味の対象は予測不可能だ。大作はちょっと感心しながらも必死に記憶を辿る。


「確か剃髪して高野山に入ったんじゃなかったかな。でも、関ヶ原の直前に一万五千もの兵力を一週間も足止めした手柄はデカいだろ。後に家康から若狭小浜城八万二千石に転封してもらうんだ。って言うか、西軍ってこんな凡ミスばっかだよな。まあ、そんなことを言ったら秀忠の上田合戦なんて大チョンボなんだけどさ」

「ちょんぼ?」


 よりによって気になるのはそこかよ~! 大作は心の中で絶叫するが決して顔には出さない。


「麻雀で役が無いのに上がろうとすることだっけ? 中国語の錯和(ツァホウ)だか冲和(チョンフォウ)だかが語源だって書いてあるな」

「まあじゃん?」

「やっとこさ、ほのかを追放できたと思ったら今度はお前がどちて坊やかよ! お前、本当に麻雀について詳しく知りたいのか? 知らざあ言って聞かせてやるけどよ」

「いいえ、これっぽっちも知りたくないわ。ただ、揶揄っただけよ」


 心底から屈託のないお園の笑顔を見ていると怒る気力も沸いてこない。大作も力なく苦笑するのが精一杯だ。


「まあ、お園が楽しいんならそれで良いんだけどさ。ちなみに大津城を攻め落とした兵の中には五奉行第三席、増田長盛の手勢もいたんだそうな。この人って元大津城主だったんだぞ。そう言えば、伏見城攻めで甲賀衆に寝返るよう工作させたのもこいつなんだ」

「そいつってある意味、豊臣家を滅ぼした諸悪の根源よね。安藤英男が何かに書いていたわ。奴が管理していた百万石を超える蔵入地の人、物、金があれば西軍はもっと有利に戦えていたはずだって」


 萌が急に話に割り込んでくる。黙っていたら台詞が回ってこないと今ごろ気付いたんだろうか。

 いやいや、単に興味のある話題だったんだろう。大作は頭をフル回転させて気の効いた相槌をひねり出す。


「うぅ~ん。日本人ならではの損害回避傾向って奴なのかな。だけど、新幹線大爆破で主人公の健さんが言われてただろ? 博打が嫌いだからジリ貧になるんだって。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれって奴だ。重要な局面において、ただ傍観を決め込んでいるだけでは碌なことにならん。増田長盛、毛利輝元、豊臣秀頼。こいつらのうち一人でも積極的に動いていれば歴史は変わっていたのになあ……」

「もしかして、大佐は豊臣に勝って欲しいのかしら。でも、私たち来年には豊臣と戦うんでしょう? わけがわからないわ……」

「いやいや、単なる心構えの話をしているだけだよ。輝元や秀頼は判断能力が劣ってるだけなんだろう。だけど、長盛の場合は最後の最後で思いっきりハンドルを逆に切るみたいな? もしかすると、徳川の世になって歴史が書き換えられているのかも知れんけどな。とにもかくにも、増田長盛って人はいったい何をやりたかったのかさぱ~り分からんのだ。ヘス副総統とタメを張れるくらい何を考えてるのか分からん奴だぞ」


 そんな無駄話をしながらも歩いて行くと大津城を掠めるように東海道が緩やかに左にカーブする。時折、建物の隙間から見える琵琶湖には大きな船が何艘も行き交う姿が見えた。

 さらに進んで行くと道が急に左へと向きを変えた。右の方からは西近江路が合流してくる。

 この辺りが大津宿の中心なんだろうか。田舎町にしてはそれなりの賑わいを見せているようないないような。

 と思いきや、道は急に険しい谷間へと入って行く。ふと右に目をやると道路脇に鳥居が立っているのが目に入った。


「これが、かの有名な関蝉丸神社下社らしいぞ」

「これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関」

「何、その不思議な呪文は?」

「百人一首に決まってるでしょう!」


 萌が激しい突っ込みを入れるが大作はノーリアクションで受け流す。って言うか、知っててボケてるんだからスルーして欲しいなあ。


「この神社に祀られているのは畏れ多くも畏くも盲目の天才琵琶法師、蝉丸様にあらせられるぞ。ええ~い、頭が高い。控えおろう。言うなれば、平安のスティーヴィー・ワンダーってところかな? 逢坂山に住んでたらしいんけど、死んだ後に上社と下社に祀られたんだそうな。ちなみに歌舞音曲の神様でもあるぞ。御利益があるかも知れんから参って行こう」


 長い石段とかの無いバリアフリーの神社は目と鼻の先だ。それほどロスタイムにもならないだろう。


「ちなみに二十一世紀ではこの一の鳥居の目の前に踏み切りがあって京阪電鉄京津線が通ってるんだ。まあ、境内を鉄道が突っ切ってるお寺や神社って全国には意外と一杯あるんだけどな」

「ふ、ふぅ~ん」

「それと本当にどうでも良いマメ知識なんだけど、ここのレールのカーブが物凄い急でな。だもんで遮断器が降りると同時に線路への散水装置が作動するんだ。散水装置自体はそんなに珍しい物でもないけど踏切に付いてるって結構珍しいんじゃね?」

「ほ、本当に小気味よいくらいにどうでも良い話ね」


 鳥居を潜るとすぐ目の前に檜皮の本殿が建っている。ネットで見た話によると二十一世紀には宮司家が途絶えてしまい荒れるに任せているそうな。

 この時代にはそこまで荒れ果ててはいないらしい。だが、人影はまったく見えず閑散としたものだ。

 本殿の手前に石で囲まれた関の清水があった。


「これが関の清水ね。逢坂の 関の清水に 影みえて 今やひくらん 望月の駒」

「紀貫之だな。だけど枯れてるみたいだぞ」


 他に何か見る物は無いんだろうか? きょろきょろと辺りを見回すと本殿の脇に石灯籠が立っていた。どうやら鎌倉時代に作られた物で時雨(しぐれ)灯籠と呼ばれており、重要文化財に指定されているらしい。


「う、うぅ~ん。先に進もうか」

「そうね、それが良いかも知れないわね」


 気を取り直した大作と愉快な仲間たちは結構な上り坂を進む。七百メートルほど進むと道の右側に関蝉丸神社上社が現れた。


「こっちはバリアフリーじゃないな。こんなに急な坂の途中にあるのに道から外れて長い石段を登らにゃならんとは。私もよくよく運のない男だな」

「まあ、今日に始まった話じゃないわよ。さっさと行きましょう」

「はいはい」


 ちっちゃな本殿があるのみで人気がさぱ~り無い。まあ、何と言っても立地が悪いなあ。観光の目玉になるような物も無いみたいだし。


「さて、さっさと先を急ごう」

「……」


 引き続き坂道を二百メートルほど登ると道は右に急カーブして今度は下り坂になった。


「この辺りに逢坂関があったらしいな。峠の天辺に作るっていうのは理に適ってるといえば適ってるんだろうけど……」

「いまは何にも残っていないみたいね。大佐の時代にはどうなってるの?」

「ネットで見たことあるけど石碑と石灯篭があるくらいだったな。そうそう、公衆トイレがあったっけ」

「……」


 見るべき物が何にも無いのでスルーしてとっとと先に進む。二百メートルほど行ったところで右に蝉丸神社が現れた。


「いったい蝉丸神社って幾つあるのかしら?」

「安心しろ。これで最後だ。多分だけど……」

「えぇ~~~っ!」

「冗談だよ」


 やや急な石段を五十段ほど登ると鳥居があり、それを潜るとこじんまりとした本殿が現れた。

 みんなの参拝も三件目にもなると多少はぞんざいになってくる。


「こんなもんで良いだろう。もうちょっと行くと逢坂山名物、走井餅があるぞ。走井(はしりい)の名水と近江米でつきあげた美味しいお餅だ。走井茶屋で一服しよう」

「じゅるる~ どんなお餅なのかしら」

「私も丁度お腹が空いてたところだったのよ。朝餉がアレだったし」

「せ、拙僧も同じにございます」


 wktkしながら一行は山間に沿って進む。進んだのだが……


「これが茶店ですって? 誰もいないじゃないの! いったい走井餅は何処にあるって言うのよ?」

「アレ? おかしいなあ…… この噴き出してるのが走井の名水なのは間違い無いみたいなんだけどなあ。って言うか…… う、うぅ~ん、残念。走井餅の創業は明和元年(1764)って書いてあるぞ。百七十五年ほど早かったみたいだな。失敗、失敗。まあ、美味しいお菓子にも時間が掛かるってことなんじゃね? ね? ね? ね?」

「大佐、私の我慢にも限りってものがあるのよ。覚えておいた方が良いと思うわ」


 眉間に皺を寄せたお園がドスの利いた声を出す。周りを見ればくノ一コンビに萌や藤吉郎、相州乱破の四人までもが怖い顔をしている。

 大作は蛇に睨まれた蛙? いや、むしろ四六のガマになった心地だった。


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