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巻ノ百八拾伍 隠れろ!獣の臭い の巻

 大作が緊急招集した会議はなし崩し的に閉会となった。

 氏直と氏政が揃って剃髪し、白装束で金箔の十字架を担いで聚楽第に参上する。大作の発案によるそんな無茶苦茶なプランは取り敢えず受け入れて貰えたんだろうか。受け入れて貰えてたら良いなあ。まあ、どっちでも良いけど。

 小田原評定といえばウィーン会議と並んで結論の出ない会議の代名詞みたいになっちゃっている。だけど、本気でちゃっちゃと終わらせようと思ったら意外と何とかなるものなのかも知れん。

 もしかして俺の議事進行能力が凄かったせいじゃね? いやいや、きっとみんなどうでも良かったんだろう。大作は考えるのを止めた。


「そんじゃあ皆様、お疲れ様でした~ あとで議事録を回覧しますんで宜しくお願いしま~す」


 大作は爽やかな好青年を気取って明るく元気に挨拶する。


「お、おう。然らば是にて失礼仕る」

「大佐、御隠居様。関白殿下は油断のならぬお方と聞き及んでおります。何卒、気を緩めることなど無きように」

「京にはどのようにして参られるおつもりじゃ?」

「供回りは如何ほど連れて参るのかのう?」


 ほとんど同時に四人の男たちが声を揃えた。ひょっとして、こいつらの辞書には割り台詞って言葉は無いんだろうか? きっと普通に無いんだろうな。


「申し訳ござりませぬ。Je n'ai pas le temps. 僕には時間がないのでございます。然らば是にて」


 大作は深々と頭を下げたまま後退りでBダッシュした。




 廊下に出た大作はうろ覚えのルートを通って座敷を目指す。目指したのだが…… 迷ってしまった!

 振り返って見れば何故かは分からないがお園や萌、サツキ、メイも付いてきていない。

 どうやら助かったのは俺一人だけらしいな。大作は心の中で呟くが虚しさと寂しさで心が押し潰されそうだ。


 くる時にあれだけ注意していたのに嵌ってしまうとは我ながら情けない。せめてパンくずでも撒いて置けば良かったんだろうか。

 だけど、いまだにパン酵母は入手できていない。お園に初めて会った晩に立てた目標すら達成できていないとは。重ね重ね我ながら情けない。

 例に寄って後悔先に立たずんば虎子を得ずだな。こんなんで本当に京の都になんて行けるんだろうか。天竺にお経を取りに行くくらいの難事業に思えてきたぞ。何だか急に心配、って言うか面倒臭くなってきたんですけど。


 そんなことを考えながら大作は適当に廊下を進んで行く。するとさっきまでとは周りの雰囲気が随分と違っているのに気が付いた。


 ここっていったいどこなんだろう? 立ち入り禁止エリアってことはなさそうだけど。もう諦めて大声で助けを呼んだ方が良いんだろうか。

 でも、自分の城で迷子になった御本城様ってヤバくね? 大戦(おおいくさ)を目前にしてそんな醜態を晒したら家臣に見捨てられるかも知れん。だったらもう最後の手段を使うしか……


「御本城様のおな~り~~~!」

「ぎくぅ!」


 唐突に真横から掛けられた大声に大作は思わず小さく飛び上がる。

 引き攣った顔で横を向くと広々とした座敷に四人の若い女が神妙な顔でかしづいていた。いやいや、神妙っていうよりはどっちかっていうと笑いを我慢しているように見えなくもない。

 もしかして驚いて悲鳴を上げたのを聞かれたんじゃなかろうな。大作は照れ隠しに普段以上の糞真面目な表情を作ると勿体ぶって向き直った。


 四人の女性は二十代ってところだろうか。髪や着物はお姫様より少しグレードが落ちるようだ。見た目も不細工では無いが絶世の美女とは程遠い。こいつらはきっと名前も無いようなモブキャラなんだろう。


 そんな失礼なことを考えていると部屋の奥に四、五歳の女の子が二人並んで座っているのが目に入る。こんなチビッ子だというのに将来の絶世の美女感が半端ない。こっちにはちゃんと名前がありそうだ。きっとお姫様クラスのキャラに間違いない。

 例に寄って高級そうな着物の上に豪華絢爛な色打掛を羽織っている。だが、髪型だけはどうにかならなかったんだろうか。輪のように結った髷が頭の天辺で左右に並んでいる。

 なんだか牛若丸みたいにユニークなヘアースタイスをしていらっしゃる。確か稚児髷とか言うんだっけ?

 って言うか、マーチンベイカーMk.7射出座席とかのフェイスカーテンハンドルみたいって言ったほうが分かり易いか? いやいや、反って分かり難いだろ!

 大作は想像して吹き出しそうになったが際どいところで我慢する。


 それはそうと『却って』と『反って』ってどっちが正しいんだっけ? 確か川端康成は『反って』を使っていたような気がする。やはりここはノーベル文学賞の権威に従っておく方が吉だろうか。


 大作がそんなことを沈思黙考している間、女性陣は空気を読むように一言も言葉を発しない。何だかちょっと気不味い雰囲気なんですけど。

 もしかして偉い人が口を開くまで自分からは話し掛けちゃダメみたいなルールでもあるんだろうか? だけど、たまたま迷い込んだだけで用なんて無いんだけどなあ。

 そんなことよりお園たちを探す方が先決なんじゃなかろうか。閃いた! こいつらに御本城様の座敷が何処なのか教えて貰うって手もあるか? いやいや、御本城様が自分の座敷を知らないってのも恥ずかしいぞ。だからといって座敷を求めてさ迷い歩くってのも同じくらい恥ずかしいしなあ。

 もう、どうすれバインダ~! 大作は考えるのを止めると右手を軽く掲げた。


「Hi! I'm Colonel Muska. 大佐と呼んでくれ」

「た、大佐ですって?」

「なんで? 何故に御方様は大佐を知ってるの?」


 その瞬間、部屋の一番奥にいた筈のチビッ子コンビが飛び付くように駆け寄ってくる。

 せいぜい保育園児くらいの大きさしか無い癖に、その勢いたるや大人をも凌ぐほどだ。だが、そんなことより何やら聞き捨てならないことを言っていたような。


「もしかしてお前ら大佐を知っているのか?」

「知っているわよ。大佐はいま、何処にいるのかしら?」

「私たちどうしても大佐に会わなくちゃならないの。教えて頂戴な」


 二人の童女は期待と不安の入り混じったような顔で問い返す。だが、大作としては素直に教えるわけには行かない。

 ここは例に寄って例の如くお約束の展開だな。とは言え、歴史と伝統は守らなければならん。絶対にだ!


「それはお前らが何者かを聞いてからだ。二人が何処の誰なのか分からんうちは大佐のことを教えるわけには行かん」

「駄目よ。こっちも大佐が何処にいるのか聞くまでは私たちのことは言えないわ。そうでしょう? ほのか」

「あぁ~~~ん! もう、何で未唯ったらそれを言っちゃうのよ!」


 二人の口から予想外の、って言うかほぼ予想通りの名前が飛び出した。

 語るに落ちるとはこのことだな。大作は心の中で嘲り笑うが決して顔には出さない。

 せっかくだからもうちっとばかし揶揄ってやろうかな。大作の灰色の脳細胞が邪悪な考えでフル回転を始めた。


 取り敢えず四人の女性たちに席を外して貰うよう頼み込む。乳母だか侍女だか分からん連中は深々と一礼すると黙って出て行った。

 三人は部屋の真ん中で丸い輪になって座り込んだ。


「それで? ほのかと未唯は大佐とどういった間柄なんだ?」

「未唯は大佐の連絡将校よ。スケジュールの管理を任されていたの。私がいないと大佐は何にもできないから困っていると思うわ」

「私めは財務経理と人事っていうのを任されていたわ。あと、スネアドラムを作って貰う約束になっていたの。でも、なかなか作って貰えなかったんで津田様ってお方に自分で頼んだのよ。どうなっちゃったのかしら。私めのスネアドラム……」


 ほのかと思しき童女が心底から悔しそうに口元を歪めた。

 お前はどんだけスネアドラムに思い入れがあるんだよ! 大作は心の中で顔を顰める。


「まあ、アレだな。人間、諦めが肝心だぞ。それにここは1589年なんだ。前にいたところでは手に入らなかった珍しい楽器が手に入るかも知れないじゃん。南蛮人からリュートとかヴィオラ・ダ・ブラッチョみたいな弦楽器を手に入れるってのはどうじゃろ?」

「またそんなこと言って! スネアドラムの時だって本当は笛を買って貰える筈だったのよ。大佐ったらそうやってどんどん先送りするんだもん」

「いやいや、俺は大佐じゃないから。文句があるんならその大佐って奴に言ってくれるかな~? いいとも~!」


 調子に乗った大作は我を忘れて羽目を外す。だが、二人の童女は意地の悪そうな半笑いを浮かべるだけで話に乗ってこない。

 と思いきや、不意に背後から足音が近付いてくるのが聞こえる。慌てて振り返るとそこには呆れた顔で微笑む絶世の美女が立っていた。


「もぉ~う、大佐ったらこんなところで油を売っていたのね。随分と方々を探したわよ」

「ん? 誰だっけ、お前? いやいや、思い出した。お園だよな」

「「えぇ~っ! 何ですってぇ~~~っ!」」


 二人の童女の絶叫が座敷の隅々にまで木霊した。






 大作、ほのか、未唯の三人はお園の後ろに金魚の糞みたいにくっ付いて城の廊下を進む。

 こんな時、完全記憶能力者って便利だなあ。大作がそんなことを考えているとお園が振り返って話し掛けてきた。


「それで? ほのかと未唯はいったい誰になっているのかしら」

「未唯は千姫って呼ばれていたわ。私、姫なんて呼ばれたのは生まれて初めてよ。何だかとっても嬉しいわ」

「私めは万姫よ。二人とも御本城様の姫御前なんですって。お園こそいったい誰になっているの?」

「私は督姫っていう御裏方様なのよ。また大佐と夫婦になれるなんて思いもしなかったわ。夫婦は二世の契りっていうのは真のことだったのね」


 お園の得意満面の笑顔は何だかとっても挑発的だ。まるで勝ち誇るかのように踏ん反り返っている。

 だが、チビッ子コンビはそんなことを言われっぱなしで納得する気はないらしい。不満気な顔で口を尖らせて言い返す。


「だったら主従は三世の縁よ。連絡将校の未唯は孫子の代まで祟って…… じゃなかった、お仕えするわ!」

「私めも、私めも七代先まで祟っ…… お仕えするわよ!」


 今度はお仕えする競争かよ! もう、勝手にやってろ。って言うか、祟られるのだけは勘弁だぞ。

 これはどげんかせんといかん。大作は咄嗟の機転で得意の話題反らしを試みる。


「どうでも良いけどお前らの髪型ってミスドのハニーチュロみたいだよな」

「はに~ちゅろ! それって美味しいの?」

「外側をカリッカリに揚げた蜂蜜味のスペイン風ドーナツだよ。スペインではホットチョコレートとチュロのセットが朝食の定番メニューなんだってさ。考えてみるとドーナツも広義のパンみたいなもんじゃね? よし、次なる目標はハニーチュロを作ることにしよう」

「じゅるる~ 早く食べたいわね。それとホットチョコレートっていうのも気になるわ」


 やはり話題を反らせるには食べ物の話が一番だな。その代わりにまた一つ、って言うか二つ仕事が増えてしまったけれど。


「ところで大佐。南蛮人からリュートかヴィオラ・ダ・ブラッチョみたいな弦楽器を手に入れてくれるのよね? 確と約したわよ。嘘ついたら許さないんだから」

「だったら未唯にも何か貰えないかしら。私だけ仲間外れなんて非道なことしないわよね?」


 ほのかと未唯が意味深な笑みを浮かべながら左右からにじり寄ってくる。

 何だこりゃあ! ちょっと油断しただけで四つも仕事が増えてしまうとは。大作は心の中で小さくため息をついた。






 そんな阿呆な話をしている間にも一同はようやく座敷に辿り着く。部屋には例に寄って先住民族…… じゃなかった、先住者が待っていた。

 甲斐姫に憑依している萌。その義理の妹に憑依しているサツキとメイ。小姓に憑依している藤吉郎とナントカ丸。いやいや、ナントカ丸は現地人だっけ。

 と思いきや、焙烙頭巾を被った見知らぬ老人が部屋の一番奥で偉そうにふんぞり返っているのが目に入る。


 こんな物を被った奴、直に見るのは始めてだな。黒田如水が頭巾を被っていたのは禿隠しだとか梅毒のゴム腫を隠すためだったとか聞いたことがある。もしかしてこの爺さんも禿隠しなんじゃなかろうか。

 大作がそんな失礼なことを考えていると突如として老人が声を張り上げた。


「出ておじゃれ。隠れていても、獣の臭いは隠せませぬぞ!」

「ぎくぅ!」


 あまりにも突然のことに大作の口から思わず悲鳴が零れる。


 取り敢えず怪しまれるのは不味いな。ここは精一杯の虚勢を張るしかないだろう。

 大作は不敵な笑みを浮かべると左腕を眼前に翳す。そして着物の匂いを嗅ぐようにクンクンと鼻を鳴らしながら話しかけた。


「いやいや、隠れておったのではござりませぬぞ。されど、左様に臭いまするかな? そう申さば昨晩は風呂に入っておりませぬ故、多少は汗臭いかも知れませぬな。何卒、ご勘弁下さりませ」

「おや、御本城様にござりましたか。されど某は御本城様を臭いと申したのではござりませぬぞ。何やら相州乱破の臭いが致しませぬか?」

「ラッパ? ラッパにござりまするか? 拙僧はアルトサックスなら持っておるのですが…… 宜しければお聞かせ致しましょうか?」

「もおぅ、大佐ったら。乱破っていうのは忍びのことよ」


 半笑いを浮かべたお園が間髪を入れずに突っ込みを入れる。だが、大作としてはそんなことは百も承知でボケたのだ。

 と思いきや、くノ一三人組が急に顔色を変えると自分の着ている着物の匂いを嗅ぎだした。『今のお前らはくノ一じゃないだろ~!』と大作は心の中で激しく突っ込むが決して顔には出さない。


 ちょっと待てよ。そんなことより今はこの爺さんの正体を探る方が先決かも知れん。それに、この偉そうな態度は何処から湧いてくるんだろう。

 まさかとは思うけど御本城様より偉いんじゃなかろうな? 大作の胸中を漠然とした不安が満たして行く。

 とは言え、あんた誰なんて聞きにくいな。取り敢えずは卑屈な笑みを浮かべながら腫れ物に触るように顔色を伺う。


 暫しの沈黙の後、老人が焦れたように廊下側の障子に目をやると苦笑した。


「軒下に猿が一匹潜んでおると申しておるのでございます」

「な、なんだって~! 総員退避ッ! 総員退避~ッ! フッ、間に合うものか……」


 日本猿は狩猟鳥獣ではないので狩猟免許や狩猟者登録があっても撃つことはできない。鳥獣保護法に基づいて個別に自治体に申請を行い、許可を得なければならないのだ。そもそも鉄砲なんて持ってきていないし。

 大作たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出…… その瞬間、大作はお園に髷をむんずと掴まれて仰向けに引っ繰り返った。


「痛い、痛い、痛いって! 暴力反対! 千切れたらどうすんだ。勘弁してくれよ、まったくもう」

「ごめんなさいね、大佐。でも、とっても掴み易かったんですもの。そんなことより軒下の猿っていうのは軒猿のことじゃないかしら」

「そんなん言われんでも分かってるがな~! ちょっとボケただけじゃん。ネタにマジレスカコワルイだぞ。んで、外に何がいるって?」


 いい加減、この不毛な遣り取りにも飽き飽きしてきたところだ。大作は広々とした廊下を横切ると勢い良く障子を開けようかと暫し迷う。大いに迷う。そして散々に迷った末、ほんの少しだけ障子を開いてそっと外を覗き見た。すると外には殺風景な庭が広がっていて、目の前の足元に一人の大男が跪いていた。


「うわぁ、びっくりした!」

「風間出羽守にございます。此度は風魔一党の頭目として御本城様のお召しにより参上仕りました」

「風間か風魔かどっちだよ! ビジネスとプライベートで使い分けてるとかですかな? ま、まあその。面をお上げ下さりま…… じゃなかった、面を上げられよ」

「ははぁ」


 男はこの時代には滅多にいそうもないほどの大男だった。その姿は見ているだけで遠近感が変になってきそうだ。それに信じられないくらいにムキムキマッチョしている。

 これでホッケーマスクを被っていたらマッドマックス2のヒューマンガスだったのにな。大作は想像して吹き出しそうになったが空気を読んで我慢する。

 まるで巨神兵かと思うような酷い歯並びは見ているだけで気の毒なほどだ。歯列矯正に保険が使えれば良かったのに。長く伸びた後頭部はエイリアンのそれを想像させられる。もしかしてオルメカ人みたいに子供のころから頭蓋骨を変形させられたんだろうか。

 その、あまりにも異形な姿のお陰で年齢の見当はさぱ~り分からない。そもそもこいつは本当に人類の仲間なんだろうか?


 そんな失礼なことを考えていると大男がニヤリと笑う。いや、本当に笑っているんだろうか? 大作はイマイチ自信が持てない。


「如何なされましたかな、御本城様。何なりとお申し付け下さりませ」

「あ、あの。何で地べたにいるんですか? じゃなかった、おるのじゃ? 苦しゅうない、座敷に上がって参れ」

「されど、御本城様。あの、その……」


 大男の顔が困惑しているように歪む。化け物みたいな風貌に似合わず意外とこいつ小心者だったりして。もしかして心優しきフランケン・シュタインなんだろうか?

 あるいはアレか? 座敷にいる偉そうな爺さんに遠慮しているのかも知れん。乱破だか軒猿だか知らんけど昔は忍者って蔑まれていたっぽいし。

 まあ、実際のところ盗賊集団みたいな物なんだからしょうがないんだろう。とは言え、水軍だって海賊みたいな物だ。目糞鼻糞の類いじゃね?


 とにもかくにも、こいつは忍びなんだからナチスに例えると国防軍情報部に君臨するスパイマスターのカナリス提督ってことだ。

 だとすると爺さんは水軍の筈だからレーダー提督やデーニッツ提督に相当する。でも、カナリス提督って海軍出身だよな。だったらそんなに仲は悪くないんじゃね?


 分からん、さぱ~り分からん。こうなったらもうアレをやるべきなんだろうか? 転生オリ主の定番中の定番、忍びを重用するっていうアレだ。

 でも、これから大戦(おおいくさ)ってタイミングで家臣団の序列を弄るっていうのも悪手だな。どうすれバインダー? ポク、ポク、ポク、チーン、閃いた!


「だったら拙僧が地べたに下りましょう。お待ち下され」


 そう言うと大作はバックパックから靴を取り出して履く。そして地べたに銀マットを敷いてその上に座り込んだ。


「ささ、どうぞ。ご遠慮なくお座り下され。ちょっと風が冷たいけど、良い天気にございますぞ」

「真に宜しいのでございますか、御本城様?」

「遠慮は無用と申しておりましょう。拙僧と風間さんの仲じゃございませんか。どうぞどうぞ。ってか…… 臭っさあ~~~!」


 なんじゃこりゃあ! あまりの臭さに鼻が曲がりそうだ。例えるなら動物飼育小屋の臭い。アレを百倍にした感じだ。だけど忍びが臭いって変じゃね? 匂いで敵に位置がバレちゃうと思うんだけど。いや、あまりにも臭いと嗅覚が麻痺して場所が分からなくなるのかも知れんけど。

 そう言えば子供電話相談室で『鼻糞はどうして臭くないんですか?』って凄い質問の答えがこれまた凄かったな。人間の嗅覚は一分もすると麻痺してしまうから臭いのにも慣れちゃうんだとか。だから、あの臭い臭いガス漏れなんかも少しずつ少しずつ漏れると気付かないんだそうな。


 まあ、こうやっている間にも俺の鼻が麻痺してくれるかも知れん。それかもう、褌のクリーニングやレンタルのビジネスでも始めるべきなのか? 大作はそんなことを考えながら座敷の老人に目をやってみる。

 偉そうにふんぞり返っている爺さんの目は『だから初めに獣の臭いは隠せないぞって言いましたよね?』と笑っているかのようだった。


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