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巻ノ百八拾壱 いざ!掻餅飯せん の巻

 北条氏規を名乗る胡麻塩頭の戦国武将を目の前にして大作は考え込んでいた。いったいこれからどうすれバインダ~?

 この異常事態の原因がスカッドのせいなのは間違いなさそうだ。だけど、肝心のおっさんは無駄蘊蓄に興じていて真面目に話をする気はこれっぽっちも無いらしい。

 こうなったらもう考えるのを止めて流れに身を任せちゃおうかな? ダーウィンは申された。変化に対応できた者だけが生き残る、とか何とか。

 いやいや、それじゃあただの茹でガエル現象じゃんかよ。カエルを入れた鍋の温度を少しずつ上げる。そしたら逃げ出さずに死んじゃうっていう例の都市伝説だ。そもそも、そんなことしたら動物虐待案件なんじゃね? それはそうと……


「あれって宇治拾遺物語『児のそら寝』にちょっとだけ似ているような似ていないような」

「児のそら寝っていうと掻餅飯(かひもちひ)を作るお話ね。然るに朝餉の後に菓子は出てこないのかしら?」


 大作が思わず口にした独り言をすかさずお園が拾う。相変わらず地獄耳(デビルイヤー)なことで。

 って言うか、掻餅飯って牡丹餅のことじゃなかったっけ? たしか、古典の教科書に載っている現代語訳ではそうなっていたような気がする。

 でも、砂糖が貴重だった平安時代の僧侶たちにそんな物が作れたんだろうか。もしかすると塩餡を使ったのかも知れないけど。


「おまえなぁ~! あんだけ食っといてまだ食べる気かよ。甘い物は入るところが別ってか?」

「何を言ってるのよ大佐、掻餅飯が甘いですって。大佐の生国にはそんな物があるっていうの?」

「牡丹餅は甘いに決まってんだろ! まあ、それは砂糖が安くなったお陰なんだけどな」

「えぇ~~~っ! 蕎麦掻に砂糖を入れて甘くするですって! 私、あんまり食べたくないわねえ」


 珍しいことに食いしん坊キャラの食指が動いていないらしい。って言うか、掻餅飯って蕎麦掻のことだったんだ~!

 また一つ賢くなっちゃったな。それはともかく、甘い蕎麦掻なんて何だか不味そうだ。できれば遠慮しておきたいぞ。

 大作がそんな阿呆ことを考えているとようやくスカッドの無駄蘊蓄が終わったらしい。気が付くといつの間にかスピーカーが沈黙していた。


「もしもし、もしも~し、スカッドさん? Can you hear me? 有難いお話は終わりましたか?」

「あ、あぁ。終わったよ、何もかもな。生須賀くん、疲れたろう。僕も疲れたんだ。なんだか、とても眠いんだ」

「Uh-Oh! 駄目駄目、寝たら凍え死んじゃいますよ! まだ大事な話が残ってるんでしょう?」


 スカッドの声は草臥れ果てて今にも天に召されそうな雰囲気だ。大作は意味不明な義務感に突き動かされて必死に声援を送る。それが効いたのだろうか、スカッドの声にほんの僅かに明るさが戻った。


「う、うん。そだね~ それじゃあ本題に戻るよ。まず、君が今そこにいる原因。それは君自身にあるんだ」

「私のせいですって? 私、何か失敗しましたっけ? 最終回って言われたのに何も起こらなかったから時間を潰してただけなんですけど?」

「君のところに時空警察が行ったでしょ? その時、捜査に非協力的な態度を取ったそうだね。容疑を認めるどころか自分が本人であることすら認めなかったとか何とか。お陰で君は今、保護観察中なんだよ。だからこのミッションをクリアしなきゃならないんだ」

「えぇ~~~っ! そんなの聞いていませんよ。私はスカッドさんのことを聞かれたんで黙秘してただけなのに。そもそもいったい何の容疑なんですか?」


 こんな話、大作としては寝耳に水も良いところだ。って言うか、そんなことしたら中耳炎になりそうだな。耳栓して寝た方が良いんだろうか。

 いやいや、本来の意味は寝ている時に水の音が聞こえてびっくりするってことらしい。だから耳栓なんてしたら逆効果にしかならない。

 大作は心の中のゴミ箱に耳栓を放り込んだ。


 だが、そんな大作の胸中に気付くこともなくスカッドは勝ち誇ったように宣言する。


「時空商取引法違反だよ。君、萌ちゃんに金を白金やルテニウムと交換してくれって頼んだだろ? アレに目を付けられたんだ。FBIがアル・カポネを脱税で捕まえたみたいなもんだな」

「それって変じゃないですか? アレは時空警察がきた後の話ですよ。連中に会った後、回転式脱穀機で押し麦を作ったでしょう。そんで、川を下って船を見て平佐城で感電したら萌と会えたんですもん。前後関係が合わないじゃないですか!」

「いやいや、相手は時空警察だよ。犯罪を犯す前に逮捕しにきても良いんじゃね? だって、時空警察だもの……」

「そんなわけあるか~! やってもいない容疑を認められるわけがないでしょう? そもそも、それって法の遡及適用じゃないですか?」


 大作は頭をフル回転させて必死に反論する。とは言え、スカッドはマトモに議論するつもりはこれっぽっちも無いらしい。

 これはもうダメかも分からんな。いや、まだだ! まだ終わらんよ!


「スカッドさん、是非ともご再考をお願いします。私と萌は内縁関係? っていうか事実婚と言っても良いほどの深い仲なんですよ。言ってみればアレは夫婦の共有財産の等価交換? みたいな? そんなんで何とかお目こぼしをお願いできませんかねえ?」

「いったい何がそんなに嫌なんだい、生須賀くん? もともと君は歴史改編がしたかったんだろう? だったらこれはご褒美みたいな物じゃないのかなあ? 滅亡に瀕した北条を救うなんて血湧き肉躍るスプラッターな展開だろ? ねっ? ねっ? ねっ?」

「怪しいなぁ~ スカッドさん、あなた何か嘘をついてはいませんか? 本当は厨二病少年の希望が絶望に相転移する瞬間の莫大なエネルギーが目当てみたいな? そんなベタなオチだったら私は協力致しかねますよ」

「ぎくぅ!」


 突如として大作が反転攻勢に打って出る。思わぬ反撃を受けたスカッドがほんの一瞬だけ言葉に詰まった。

 だが、その僅かな隙をお園が目敏く突いてくる。


「ねえ、大佐。萌と内縁関係ってどういうことかしら。事実婚だとも言ってたわね。大佐と私は夫婦だった筈よ? きちんと得心が行くように説いて貰えるかしら?」

「いやいや、アレは嘘も方便って言うか何というか……」

「嘘やったんかい! 勘弁してくれよ、生須賀くん。ともかくこれはもう決定事項なんだ。騙されたと思ってやってみ。思ったより楽しいからさ。ハックルベリー・フィンの冒険に出てきたペンキ塗りみたいな物だよ。あと、その時代の人達はみんな君のことを北条の…… 誰だっけ? 政? 政? 政ナントカだと思い込んでるから。何をやっても絶対に疑われることは無いよ。だから安心して楽しんでくれたまえ。そんじゃあまたね。Adieu(アデュー)

「アッー!」


 スカッドがあまりにも唐突に電話を切ったので大作は奇妙な呻き声を上げることしかできなかった。

 ってか、Adieuって永遠の別れじゃんかよ! こっちから掛け直すことはできないのか? スマホを操作してみるがどうやら無理っぽい。


 だだっ広い座敷を再び沈黙が支配する。大作は冷えきった雑炊を掻き込みながら心の中で突っ込む。『それってトム・ソーヤの冒険なんじゃね?』

 だが、その心の叫びは誰にも届くことはなかった。




 暫くすると若い四人の男が現れて空になった膳を下げて行った。その顔触れはさっきと同じなんだろうか。大作にはさぱ~り見分けがつかない。

 当分この時代で暮らすんなら顔くらいは覚えた方が良いんだろうか。無理を承知で記憶しようと試みるが、まるで覚えられる気がしない。


 大作がそんな無駄な努力をしているとお園が遠慮がちに口を開いた。


「大佐、スカッド様と申されたかしら。あの一寸法師はお休みになられたの?」

「う、うん。そうみたいだな。小さい生物は体重に比べて体表面積が大きいだろ? だから人間よりずっと代謝率が高いんだ。本川先生の『ゾウの時間・ネズミの時間』とか読んでみ」

「ふ、ふぅ~ん。そうなんだ。それで、私たちはこれからどうするの? 当分ここで二人っきり、じゃなかったわ。三人で暮らすんでしょう? 私、その覚悟はできているわよ」


 そう言いながらお園は部屋の隅に視線を向けた。そこには若い小姓頭の恰好をした藤吉郎が小さく縮こまっている。

 その顔色は青白く、表情はとっても暗い。だが、目が合った途端にその引き攣った顔が僅かに綻んだ。


 これは不味い兆候かも知れん。大作は慌てて警戒レベルを引き上げる。

 人は不安を感じている時に優しくされると愛情と勘違いすることがある。吊り橋効果と似た現象だ。

 いま、お園を寝取られるのだけは避けねばならん。絶対にだ!


 まずは適当に景気の良い話をして信頼感を取り戻すとするか。大作はポンと手を打って全員の注目を集めた。


「注目! 今からみなに大事な話がある。北条の存続に関わる非常に重要なことだ。心して聞いて欲しい」

「そ、其のような大事なる話を斯様な面々で伺って宜しいのでございましょうか?」

「北条が滅ぶなど俄には信じられませぬ。その一寸法師は空言で我らを欺こうとしておるのではござりますまいか?」


 苦虫を噛み潰したような顔で老人二人が声を荒げる。その顔には『ごめんなさい。こんな時、どんな顔したら良いか分かんないの』と書いてあるかのようだ。

 とは言え、急にこんな話を信じろという方が無理な相談なんだけれどな。大作は努めて陽気な仕草を装って話を続けた。


「その件に関しましては幾度もご説明している通り、北条は滅びません。何度でも蘇ります。具体的には政直が死んでも氏規の子孫が一万一千石の大名として二百八十年後まで続くのです。残念ながら明治維新後は版籍奉還とか秩禄処分で武士の身分を失います。ですが、日本中がそうなんだから文句を言ってもしょうがないでしょう? それにその後も子爵として華族になれたんですよ。一旦は朝敵になった徳川なんかに比べたらよっぽどマシじゃないですか」

「盛者必衰にございますな。とは申せ、天下の大名が悉く滅びるならば為む方無きことで」

「侍では無くなりましたが北条の血筋は二十一世紀まで続いておるのですぞ。それに比べたら、あと二十六年で滅んじゃう豊臣の方がずっとずっと悲惨でしょう? まあ、あいつらは天皇家と血縁関係になったってだけでも凄いんですけどね。ってなわけで北条が滅ぶって話はNo problem! 次、行きましょう。次!」


 襤褸を出す前に巻いて行かなければ。老人コンビが一瞬怯んだ隙を突いて大作は話の主導権を強引に奪いに行く。

 さっきスカッドが言っていたことが本当だとすれば少しくらい無茶をやっても大丈夫な筈だ。スマホで適当に情報を見繕いながら白髪頭の老人に次なるターゲットを定めた。


「えぇ~っと。こちらさんは兵部少輔の播磨守でしたっけ? ってことは…… あった! 小笠原康広さんでお間違いありませんか? ご安心下さりませ。お宅はちゃんと徳川に再就職が叶います。スタートは三百五十石の旗本ですが後に加増されて七百八十石になるって書いてありますぞ。そんでもって…… ありゃあ! 残念ながら明治維新で断絶してしまいますな。ご愁傷様です」

「さ、左様にござりまするか。儂の家が滅びるとは無念でなりませぬ」


 上機嫌で微笑む胡麻塩頭に比べると白髪頭の落ち込みようは見ている方が辛くなるほどだ。

 家が途絶えるってそんなにショックなんだろうか。三百年続いたってだけでもかなり凄いと思うんだけどなあ。

 これは何か適当なことを言ってフォローした方が良いのかも知れん。でも、どんな風に? 大作は頭をフル回転させる。閃いた!


「康広さんの嫡流は絶えますがご親戚は頑張っておられますぞ。たとえば二十一世紀まで続いておられる小笠原流弓馬術宗家は小笠原平兵衛家とかいう家ですな。他にも茶道や礼法、兵法、エトセトラエトセトラ。天正二十年(1593)に小笠原諸島を発見したのも信濃小笠原氏のお方ですぞ。まあ、あれは嘘っぱちだったらしいですけど。とは言え、何だかんだ言ってみんな凄いですなあ。胸を張って宜しゅうございます。うちなんて普通のサラリーマン家庭にすぎません。お恥ずかしいかぎりで」

「大佐、サラリーマンだからって何も恥じることはないわよ。それにニ十一世紀では七割の人が第三次産業に従事しているんでしょう?」


 お園が可哀想な子を慰めるように優しく宥める。だが、まるで同情するかのようなその口調は大作の安っぽいプライドをいたく傷付けた。

 甘いな、俺が這いつくばって礼を言うとでも思ったのか! 大作は心の中で絶叫するが決して顔には出さない。


「いやいや、別に俺だって本気で恥ずかしがってるわけじゃないんだからね! それに、サラリーマン=第三次産業ってことでもないぞ。一次や二次産業にもサラリーマンはいるだろ? 三次産業にだって自営業者はいるだろうし。大体そんなことを言い出したら……」

「どうどう、気を平らかにして。ごめんなさい、私の言い方が悪かったわね。機嫌を直して話を進めてくれるかしら。それで? 私たちこれから何をすれば良いの?」

「う、うぅ~ん。問題はそれなんだよなぁ。史実では北条は滅びないんだ。だから歴史改変するとしたら北条を滅ぼす? やってやれんことは無いだろうな。でも、それをやって面白いと思うか?」

「おもしろき こともなき世を おもしろく すみなしものは 心なりけり。だったわね? 大事なることは気の持ちようよ。それに私、この時代が気に入ったわ。だって食べ物がとっても美味しいんですもの」


 そう言うと心底から満足そうにお園が微笑んだ。その顔を見ていると大作は急に真面目に考えるのが阿呆らしくなってくる。

 もう、どうでも良いや。V-MAXレッドパワー発動! 大作は心の中のリミッターを解除した。


「どうやら結論が出たようだな。史実の通りにやっても北条は滅びん。ってことは失敗のリスクは無視できるほど小さいってことだ。このような状況下で立ち止まっていても状況は改善しない。赤の女王仮説って覚えているかな?」

「その場に止まるには走り続けなきゃいけないんだったわよね?」

「そうそう、それそれ。そこで我々は確率論的アプローチを取ろうかと思う。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる作戦だ。そのためにはPDCAなんかじゃ間に合わん。DとCのサイクルだけを高速回転させて試行回数を上げる。失敗はリスクではなく必要コストなんだ。そして九年後の1598年に迫ったシビル・ハン国の滅亡を阻止する! 日本にとって最大の脅威は海の向こうのアメリカなんかじゃない。やっぱ、血に飢えた未開で野蛮なロシア帝国なんじゃね? そして連中のシベリア進出を阻止するには今が最後のチャンスなんだ。あと、この地域に強力な独立国家が存在すれば中国に対するカウンターフォースになるはずだろ?」

「そうかも知れないわね。そうじゃ無いかも知らんけど」


 お園が曖昧な笑みを浮かべながら短く相槌を打った。その顔にはそろそろ話を終われと書いてあるかのようだ。

 大作は胡麻塩頭と白髪頭に向き直ると軽く頭を下げる。二人の老人は深々と頭を下げると静かに座敷を出て行った。






 広い座敷には大作、お園、藤吉郎、ナントカ丸の四人が残された。大作は手振りで三人を呼びよせて円陣を組むと声を落とす。


「さて、これから少し予習をしようか? ここでの人間関係とか、史実でこれから起こることとか。そんなことを知っといた方が話がスムース…… スムーズ?」

「滑らかってことよね? それは表記の揺れだからどっちでも良いって言ったでしょう。いいから早く話を進めてちょうだいな」

「はいはい、お前は本当にせっかちだよなあ。いいか? 今日は天正十七年(1589)十月二十三日の木曜日だ。だから秀吉の軍が山中城を攻めるまで、あと五カ月もあるんだぞ。それより大きな問題は政直が天正十九年(1591)十一月四日に疱瘡で死ぬってことだな」

「え、えぇ~~~っ! 政直って大佐のことなんでしょう! あと二年でお亡くなりになるっていうの? まだお若いっていうのにお気の毒なことね」


 お園が大袈裟に驚き、目を丸くした藤吉郎とナントカ丸も小さく息を呑んだ。

 利いてる効いてる。大作は心の中で一人ほくそ笑むが決して顔には出さない。


「No probelm! 前にも言ったけど種痘っていう予防ワクチンを作ろうかと思うんだ。作り方は詳しく分かっている。だから試行錯誤の手間は最小限で済むはずだ。人・物・金を惜しげもなく注ぎ込めば二年で実用化は十分に可能だろう。一説によれば督姫。お前も慶長二十年二月四日(1615)に疱瘡で亡くなるそうだぞ。ちなみに毒饅頭を食ったってのは作り話らしいな」

「なんてことを言うのよ、大佐。いくら私が食いしん坊だからって毒饅頭なんて食べるわけないでしょう?」

「それってやっぱり匂いとかで分かるのかな? まるで可哀想な象の話みたいだな。俺、なんだかちょっと悲しくなってきたぞ」


 餌を求めて一生懸命に芸を披露するお園。そんなシュールな状況を想像した大作は自然と溢れてくる涙を止めることができない。


「泣かないで、大佐。って言うか、早く話を進めてちょうだいな。私の堪忍にも限りっていうものがあるのよ?」


 お園の声音が一オクターブ下がった。そのドスの効いた口調に藤吉郎とナントカ丸は震え上がる。

 だが、生来の鈍感さで大作は何とも感じない。相変わらず気楽な調子で話を続けた。


「そうそう、毒と言えばこんなプランはどうかな? 実は名胡桃城襲撃に先立って秀吉は長束正家って奴を兵糧奉行に任じて兵糧の買い付けを申し付けているんだとさ。つまり、小田原征伐は既に決定していて名胡桃城襲撃は切っ掛けに過ぎないてことなんだ」

「ふ、ふぅ~ん。それで? それが毒とどう関わっているのかしら?」

「まあまあ、話は最後まで聞いてくれよ。ここからが面白くなるんだからさ。その、長束正家は米を二十万石ほど買い付けて駿河の江尻や清水に運ぶんだそうな。んで、小田原の辺りでも三万石くらい買ったんだとさ。そこでこの米にあらかじめ遅効性の毒物を仕込んでおく。いざ戦が始まると米を食った兵どもがバタバタ死ぬ。そんで戦意はガタ落ちする。ばんざ~い、ばんざ~い!」

「あのねえ、大佐。食べ物を粗末にすると地獄に落ちるわよ」


 見たことも無いほど不機嫌そうな顔のお園が吐き捨てるように呟く。

 これは駄目かも分からんな。そうだ! 北条にだって忍びくらいいるはずだ。そいつらを使ってお園には内緒の作戦として実行すれば良い。


 それはともかく、ワシの歴史改変プランは百八式まであるぞ! 大作は心の中で絶叫するとスマホから面白そうなネタを探す作業に戻った。


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