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巻ノ百伍拾六 細菌戦争の恐怖 の巻

 大作の思い付きで始まった夜の臨時幹部会はのっけから暗礁に乗り上げていた。

 適当に人を割り当てただけのプロジェクトは絶望的といって良いほど進んでいないようだ。

 そもそも、まったくスキルが足りていないらしい。それに、史実より早く研究することによるペナルティも掛かっているんだろう。

 どうすれバインダ~! ま、いっか。どうせ初めから期待していなかったし。大作は考えるのを止めた。


「要するにプロジェクトは全然進んでいないってわけだな。でもなあ、みんな。大変なのは分かるけど島津は待ってはくれないんだぞ。三年後には何が何でも完成していなきゃならないんだ」

「私、間に合わないんじゃないかって気がするわ。もしも駄目だった時のことも考えておいた方が良いんじゃないかしら?」


 お園が目を反らしたまま、気まずそうに口を開く。他の面々も禿同といった顔でみんな揃って小さく頷いた。


「いやいや、何が何でもってのは言葉の綾だよ。まあ、金山さえ稼働してくれれば煙硝も鉛も堺から買えば済む話だしな」

「き、金山じゃと! もしや、和尚はここで金を掘っておられるのか?」


 うっかり大作が漏らした言葉に重嗣が目敏く食い付く。

 しまった~! 慌てて反省するが後の祭りだ。大作は咄嗟に口から出任せで誤魔化しを図る。


「いやいや、きんざんではござりませぬ。ぎんさんと申し上げたのでございます」

「ぎんさんじゃと? そは、何者なのじゃ?」

「百八歳まで長生きした元気なお婆さんでございます。ちなみにきんさんっていう双子の姉は百七歳まで長生きされたそうな」

「姉が百七で妹が百八じゃと! 姉妹が揃って百を越すとは俄には信じ難き話じゃな。されど、僅か一年とは申せ妹の方が長生きしたのじゃな」


 気になるのはそこなんだ~! やっぱ目の付け所が常人とは違うな。大作は重嗣の意外な観察眼にちょっとだけ関心した。


「ちなみにぎんさんは戸籍上だと妹ですが、先に生まれたそうですぞ。当時の太政官令に従えば先に生まれた方が姉とするのが定め。されど、きんさんぎんさんの親御は後から生まれた者を姉としたそうな。当時の習わしに従ったそうにございます」

「うむ、昔からそのように申すのう。後から生まれた子の方が母胎の奥にいた筈じゃ。よって、奥にいた子の方が先に生じたからじゃとな。弟や妹は兄や姉の露払いとして先に出てくるとも申すのう。それが道理という物じゃろうて」


 が~んだな。まさか重嗣までもが無駄蘊蓄を傾けてくるとは。

 大作はちょっと頭がクラっときたが何とか立ち直る。


「古代ローマでも後から生まれた方が兄とか姉だったそうですな。ところが、ヨーロッパでは基本的には先に生まれたのが兄や姉だったんだとか。一部の限られた地域では二十世紀初頭くらいまでは後から生まれた方が兄や姉だったそうですが。まあ、ぶっちゃけた話、一卵性双生児に先も後もありませぬがな」

「されど、双子は家を分かつじゃの、畜生腹じゃのと忌み嫌われて……」

「スト~~~ップ! それ以上申してはなりませぬ。お控え下さりませ」


 大作は咄嗟に重嗣の口を手で押さえた。あまりに突然のことに、側に控えていた弥助も目が点になっている。


「恐れながら加賀守様。そのような差別的言動はお控え下さりませ。こちらの楓と紅葉も双子の姉妹にございますぞ。社会的マイノリティの人権は最大限に尊重されねばなりませぬ。我ら山ヶ野金山においては多様性を認め合える社会を目指しておるのです」

「いま、山ヶ野金山と申されたのではないか?」


 またしても大作が口を滑らせ、重嗣はそれを見逃さない。


 しまった~! またやってしもうた……

 俺の学習能力はゼロなんだろうか? うん、きっとゼロなんだろうな。大作はちょっとだけ落ち込む。

 いやいや、そんな筈は無い。きっと重嗣の注意力が異常に鋭いんだろう。大作は自分で自分を慰めた。


「で~す~か~ら~! 何度も申しておりましょう。ぎんさんでございます。ちなみに、きんさんっていう背中に入れ墨のある遊び人もおられますな。って言うか、入来院様の御領内にだって串木野金山がありますでしょうに」

「な、何じゃと! 串木野で金が採れると申すか! そはまことか?」


 大作がさらなる墓穴を掘り、重嗣が外堀を埋めに掛かる。


 なんだか面倒臭くなってきたぞ。いっそのこと、もう金山の話はオープンにしちゃうか?

 いやいやいや、さすがにそれは不味いぞ。大作は切れ掛けた集中力にオーバーブーストを掛ける。


「そんなこと、拙僧は知りませんがな~! 隣の芝生は青いと申しますぞ。人を羨んで生きるくらいならあの匍匐…… じゃなかった、葡萄は酸っぱい、とでも思っときゃ宜しいのです。アドラーは申された。『人生に意味はない』と。人生に意味を感じると他人と比べてしまいますでしょう? すると、どっちが優れてるとか劣ってるとか気になるではありませぬか。他者に関心を持つことを止めることから初めてみては如何かな?」

「さ、左様な物かのう。儂のような俗人には到底真似ができぬ話じゃな」


 そう言うと重嗣が遠い目をしてちょっと寂しげに微笑んだ。

 どうやら上手いこと話を脱線させられたようだ。大作は胸を撫で下ろす。

 だが、このおっさんの脳内から金山の話を消すためにはもう一踏ん張りしておいた方が良いかも知れん。

 何でも良いから適当な話題は無いかなあ。閃いた!


「それでは加賀守様。我らは幹部会に戻らせて頂いて宜しゅうございますか?」

「うむ、苦しゅうない。儂に構わず進められるが良かろう」


 重嗣が鷹揚に頷く。

 だ~か~ら~! なんでお前はそんなに偉そうなんだよ! 大作は心の中で絶叫するが決して顔には出さない。


「さて。俺は…… 俺たちはこれまで対アメリカ戦略を安全保障の基本に据えてきたよな? だが、ちょっと待って欲しい。二十一世紀の日本にとって最大の脅威は中国なんじゃなかろうか? 連中の人口はアメリカの四倍以上。近い将来にはGDPでも世界ナンバーワンになることだろう」

「ちゅうごく? 山陰道の辺りのことかしら」


 お園が小首を傾げて相槌を打つ。Chinaのことを中国って言うようになったのって江戸時代からだっけ? この時代は何だったかな。大作は記憶を辿る。


「ユパ様風に言うなれば遥か西方にある強大な軍事国家だよ。謝謝(シェシェ)とか再見(ツァイチェン)とか言うだろ?」

「そんなこと言うかしら? もしかして、それは明国のことじゃないの?」

「それそれ! 明だよ、明。どうでも良い話だけどフラッシュ・ゴードンに惑星モンゴのミン皇帝とかいうのが出てくるよな。凄いネーミングセンスだと思わんか? まあ、それは今はどうでも良いや。いま考えなきゃならんのは明国をどうするかだ。さ~あ、みんなで考えよう!」


 大作はそう言うと両手を広げて得意の丸投げを試みる。別に真剣な答えを求めているわけじゃない。単なる時間潰しの無駄話なのだ。

 そのことはみんなにも伝わったらしい。さも面倒臭そうにお園が口を開く。


「アメリカのことはどうでも良くなっちゃったの? このままだと三百万もの方々が命を失うんでしょう?」


 それを聞いた重嗣が小さく息を飲む。だが、さっきの一言が効いているのだろうか。空気を読んで口を挟んではこない。


「はっきり言ってどうでも良いな。戦前の日本だって一応は民主主義だったんだ。合法的な選挙によって選ばれた政府が正規の手続きを踏んで開戦を決意した。それがどのような結果になろうと国民はそれを甘受せねばならん。自己責任って奴だな。ヒトラー総統も最後の十二日間でそんなことを申されておられたぞ」

「でも、選挙権を持っていなかった童や赤子だって大勢が亡くなったんでしょう。それも自己責任なのかしら。気の毒だとは思わないの?」

「う、うぅ~ん。まあ、同情の余地はあるかな? でも、そんなん言い出したら上野動物園の象やライオンの方がよっぽど可哀想だぞ。空襲で檻が壊れて逃げ出すかも知れん。そんな阿呆みたいな理由でたくさんの動物たちが殺されたんだ。どっちみち東京大空襲では一晩で十万人も焼け死ぬっていうのにな。地獄のように燃え盛る業火の中、象やライオンが駆け回る。映像的にはそっちの方が絶対に面白いんじゃね? ジュマンジみたいだぞ」


 大作は心底から楽しそうに捲し立てる。その、あまりのテンションの高さに未唯が首を竦めて縮こまった。

 暫しの沈黙の後、淀んだ空気を入れ換えようとでもいうのだろうか。お園が努めて明るい声で口を開く。


「象って鼻の長い獣だったかしら。ぱお~んとか鳴くんでしょう?」

「鼻が長いですって! 天狗様みたいに?」


 よっぽど居心地が悪かったのだろうか。慌てたように未唯も話題に飛び乗ってくる。


「どっちかって言うとそれは鼻が高いっていうんじゃね? 鼻が長いっていうのはキノピオ…… ピオキノ? ピノキオ? 何だっけ? 分からん! それはともかく、アレってお話だと陸軍が一方的に悪者にされてるだろ? でも、本当は殺処分を命じたのは東京都長官だったって知ってるか? 実は動物たちを地方へ疎開させようかって話もあったんだ。でも『国民の危機意識を煽る』とか何とか、そんな理由でパフォーマンス的に殺されたんだ」

「ふ、ふぅ~ん。でも、どうやったら一晩で十万なんて途方も無い数の人が亡くなるのかしら」

「防空法って阿呆な決まりのせいだよ。火事になっても逃げずに火を消せってな。でも、焼夷弾がバケツで消せるかってんだ。そもそも首都が爆撃を受けることを想定してる時点で勝ち目なんて無いだろ? だったらイタリアみたいにさっさと降伏すれば良かったんだ」


 大作は他人事みたいに気楽に言う。だって他人事だし。

 って言うか、どうやったって燃やされるんならいっそ自分で火を点けちゃえば良かったのに。

 皇帝ネロみたいに燃え盛る帝都を都庁から眺めながらバカ笑いする東京都長官。ちょっとシュールだな。


 だが、好き勝手に言いたい放題を言ったお陰でちょっとは気が晴れた。そろそろ話を戻さねば。大作は頭を切り替える。


「そもそも動物園って存在自体が動物虐待なんだよ。明治時代に上野動物園に連れてこられた二頭のキリンを知ってるか? はるばる遠い日本までやってきたのに寒い冬に耐えられず一年足らずで死んでしまったそうな。町中で珍しい野生動物を見たいなんて人間のエゴだろ。そんな理由で遠いアフリカから連れてこられた動物の気持ちになってみ? 広いサバンナを自由に駆け回っているのと狭い檻に閉じ込められるのならどっちが良い?」

「さばんなを知らないから私には分からないわ。大佐はどっちが良いの?」


 そう言うお園の顔には心の底からどうでも良いと書いてあるかのようだ。


「うぅ~ん、どっちだろ? 弱肉強食のサバンナより三食昼寝付きの動物園の方が幸せかも知れんな。カート・ヴォネガットのスローターハウス5って知ってるか? 主人公の爺さんがポルノ女優とカップルで宇宙人の動物園に展示されるって話だ。あんなんだったらそんなに悪くないかも知れんな」

「私も大佐と一緒だったらどっちでも良いわよ。その時は連れて行ってね」


 口ではそんなことを言っているがどこまで本気なんだろう。半笑いを浮かべているお園の表情からは真意がさっぱり読めない。

 とは言え、スカッドに戦国時代へ無理矢理に連れてこられた現状だって似たような物かも知れん。大作は考えるのを止めた。


「まあ、動物愛護の話はこんなところで良いだろう。余裕ができたらワシントン条約みたいな野生動物保護の枠組みを検討しよう。それより、今考えなきゃならんのは対中国…… 明国への戦略だな。さ~あ、みんなで考えよう!」

「大佐ったらそればっかりね。ちょっとは自分でも考えてちょうだいよ」


 口を尖らせたお園が不満気に呟いた。

 繰り返しはギャクの基本なんだけどなあ。大作は悔しさのあまり唇を噛み締める。


「この時代の明の人口は七千万人くらいだったかな? だとすると日本の四、五倍ってところだろう。それくらいなら丁度良いハンデなんじゃね? 阿片戦争ではイギリス軍はたったの二万人で清を打ち破っているんだ。イギリス人にできたことが俺たちにできん筈は無い」

「ふ、ふぅ~ん。いったいどうやったの?」

「ヴァイキングと同じだな。海軍を使って徹底的なヒット&アウェイを仕掛ける。長い海岸線の手薄なところをチクチク攻めりゃ良いんだよ」


 大作は例に寄って気軽に言ってのけた。どうせ本気じゃ無いんだ。口だけなら何とでも言える。


「何だかんだ言ってもイギリス人の要領の良さは見習わなきゃならん。連中は十倍以上も人口のあるインドだって支配してるしな。とは言え、長期的に支配し続けるのは無理だ。世界の四分の一を支配したモンゴル帝国だって長続きしなかっただろ」

「だったらどうしようも無いじゃない。大佐には何か良い考えがあるって言うの?」

「一つは生物兵器だ。第一次世界大戦では四年間に渡る激しい戦いで二千万人近い人が死んだそうな。でも、その後に流行ったスペイン風邪による死者は五千万人とも一億人とも言われている。ちなみに野口英世のご母堂もお亡くなりになったとか。とにもかくにも、ジュネーヴ議定書も生物兵器禁止条約も無いこの時代。生物兵器は圧倒的に低コストな攻撃手段なんだ。通常兵器の千分の一にも……」

「い、一億人じゃと!」


 重嗣が目を剥いて大袈裟に驚く。その顔は何か言いたくてうずうずしているようだ。

 ここは軽くガス抜きしておくか。大作は揉み手をしながら卑屈な笑みを浮かべた。


「加賀守様はご存じですかな。明がまだ元だった二百年ほどの昔のことを。彼の地では黒死病(ペスト)と申す流行り病で民草の半分が亡くなったそうな。この恐るべき疫病は元が滅亡する一因となり、東ローマ帝国やヨーロッパの国々を大混乱に陥れました」

「た、民の半分が亡くなるじゃと? じゃが、そのように恐ろしい流行り病じゃと自らをも滅ぼすことにならぬのか?」

「ご安堵下さりませ。まずは種痘と申す疱瘡の薬を作ります。それをみなに施してから疱瘡を人為的に流行らせれば宜しゅうございます」


 種痘なんて作れるのかって? 人、物、金を惜しげもなく注ぎ込めば何とでもなるだろう。だって、ただの田舎の開業医だったエドワード・ジェンナーに作れたんだ。十八年も掛かったらしいけど。


 だが、重嗣の様子はと言えば顰めっ面で首を傾げている。どうやらいまだに納得が行かないらしい。小首を傾げると忌々し気に口を開いた。


「されど、殊更(ことさら)疫病(えやみ)を流行らせるなど、あまりにも非道じゃろう。御仏のお心に背いておるのでは無かろうか?」

「化学兵器や生物兵器は卑劣で非人道的だと申されまするか。ならば、核兵器は倫理にのっとった人道的な兵器だとでも? それこそアメリカの術中に嵌っておるのです。貧者の核兵器とも言われる化学兵器や生物兵器は全面禁止。高価な核兵器は五か国が独占。そんな自分勝手なルールは神が許しても御仏はお許しになりませぬ!」

「どうどう、大佐。気を平らかにして」


 お園に軽く肩を叩かれた大作は平静を取り戻す。軽く手を上げて謝意を示すと重嗣に向き直って頭を下げた。


「申し訳ござりませぬ、加賀守様。生物兵器のこと故、ついつい興奮してしまいました。お許し下さりませ。天国から来たチャンピオンが申されておられましたぞ。『悪評はライバルに押し付けろ。我々がルールを作ってフェアにプレーする人気チームになるんだ』と。要はルールを作る側に回れば良いのでございます」

「いやいや、儂も些か口が過ぎたようじゃ。和尚の遠慮の程こそ神妙なれ。して、これより先は如何いたす所存じゃ?」

「まずはバイオセーフティーレベル4の実験施設を人里離れた僻地に建立致します。そして、いま疱瘡にかかっておる者や疱瘡に掛かったことのある者をスタッフとして集めます。それから疱瘡を兎か猿にうつし、その膿を子牛の腹に接種。さらにその膿を石炭酸グリセリンで薄めてやれば牛化人痘ワクチンのできあがり。めでたしめでたし。そうそう、人体実験に使う被験者も必要ですな。罪人や戦で捕らえた捕虜を使いましょう」

「う、うぅ~~~む。心も得ず心もとなく思ふ事なれど、疱瘡の薬とは心ときめく話じゃな」


 さぱ~り分からんといった顔の重嗣が曖昧な笑みを浮かべた。

 このくらい引っ掻き回せばもう十分だろう。大作は顔色を窺いながら言葉を選ぶ。


「このワクチン開発プロジェクト。入来院様と祁答院、そして東郷様の共同開発と致しませぬか? 疱瘡の薬はまさに人類の宝。拙僧のポケットには大き過ぎるようにございます」

「さ、左様か。うむ、宜しゅうお頼み申す」


 重嗣は相変わらず分かったような分からんような顔で軽く頭を下げる。

 だが、もう大作の集中力はゼロなのだ。こうして夜の幹部会は何だか良く分からないうちに終わりを告げた。




 大作は一人用テントを張ると重嗣を押し込む。二日目にも関わらず、若い殿様は不安そうな顔だ。


「こわくない、こわくない。一休み、一休み」

「いやいや、儂は怖がってなどおらんぞ!」


 重嗣が血相を変えて声を荒げる。大作は吹き出しそうになったが空気を読んで何とか我慢した。




 もうすっかり夜も更けて来たようだ。一同はそれぞれの寝床のある小屋へと別れる。大作とお園は愛や未唯と一緒に巫女軍団の宿舎を目指した。

 巫女たちはすでに寝静まっているらしい。大作とお園は昨晩と同じ二段ベッドの下段に横になる。


「ねえ、大佐。何だか話が途中で終わった気がするんだけど、つまるところ明国をどうするつもりなの?」

「え~~~! もしかしてあんな話を本気にしてたのか? あれって本当は金が四キロも採れたって話をみんなにしてやろうと思ってたんだ。でも、重嗣が付いてきちゃったから適当な話をでっち上げただけなんだよ。とは言え、生物兵器で中国の人口を半減させるって作戦はありかも知れんな。その後はエマニュエル・トッドの移行期危機を使う。まずは復興支援の名目で工場や学校を建てる。そして女性に高等教育を施したり工場で就労させたりする。女性の社会進出が進んで出生率は二に近付く。すると中国の人口は三千万人くらいで横這いになる。ばんざ~い! ばんざ~い!」

「そんなに上手く行くのかしら」

「だ~か~ら~~! こんなの全然本気じゃ無いって言ってんじゃんかよ~!」


 それはそうと重嗣はいったいつまでここにいるつもりなんだろう。明日こそ出て行って欲しいなあ。

 いやいや、こうなったら俺たちの方が虎居に行くってのもありかも知れん。そんなことを考えているうちに大作は眠りについた。


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