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巻ノ百伍拾弐 詐欺にご用心 の巻

 楽しかった食後の語らいもそろそろお開きの時間だ。大作は用済みとなった重嗣を半ば強引に一人用テントへ押し込む。


「Good night, sir.」

「お、おう。和尚も、およらさせたまへ」


 若い殿様は不安気な表情を圧し殺すようにして狭苦しい寝床へ消えて行った。


「さて、弥助殿は若殿のお側が宜しゅうございますな。こちらでお休み下され」


 少し離れたところに敷いてある筵を手振りで指し示す。それを見た弥助は無表情で軽く頷いた。

 喜んでもいないが、がっかりしているようでも無い。こんな物だろうと覚悟していたんだろう。


「御馬様は馬屋で丁重におもてなししております。ご安堵下され。それでは、何か用がございますれば遠慮なく声をお掛け下さりませ」


 そう言うと大作は皆を引き連れて逃げるように小屋を後にした。




「悪いけどくノ一のみんなは作業小屋で寝てもらえるか。さすがに若殿と雑魚寝は不味いだろ。余裕ができたらお客様を泊める迎賓館みたいな物も作らなきゃならんかも知れんな」

「ここはお寺って建前だから建てるとすれば宿坊ね」

「そうなると朝餉は精進料理っぽい物をお出ししたいな。ちょっとメニューを工夫してくれるかな?」

「いいとも~!」


 お園がノリノリで答える。とりあえずこっちは任せて大丈夫だろう。

 それよりも今はもっと大事なことがあるのだ。大作はゾロゾロと全員を引き連れて作業小屋に移動した。


「まずはくノ一のみんなに頼みがある。交代で若殿と弥助を見張って欲しいんだ。二人が話をしていたら内容も記録してくれ。もし、勝手にうろつくようなら泳がせて良い。どんなことをしていたか後で詳しく知りたい」

「何か怪し気なところがございましたか?」


 桜が真剣な表情で声を落とす。サツキも糞真面目な顔だ。

 これは緊張を解いた方が良いかも知れん。大作は頭を捻る。


「今のところは何も無いな。だが、警戒はして然るべきだろ? ゲーテ曰く、悪魔は天使の顔でやってくる。そもそも奴が入来院の若殿だって確証すら何も無いんだ。実は不動産詐欺だって可能性も十分にある」

「ふどうさんさぎ?」


 首を傾げたサツキが鸚鵡返しした。大作はもっともらしい話をしようと頭をフル回転させる。

 若殿の名を騙る男が金山の権利を狙ってきた。そんな設定で良いんじゃなかろうか。


「積水ハウスみたいなプロの不動産屋ですらマンション用地取得で六十三億円もの被害に遭ってるんだ。銭で言えば四万貫文ってところかな。でも、騙すのは良いとして、そんな莫大な銭をどうやってやり取りしたんだろうな?」


 銭四万貫文って銅銭だと百五十トンくらいだろうか。金塊でも三百キロ以上にはなるだろう。いったいどうやって決済すれば良いんだろう。

 そんな益体も無いことを考えていた大作の意識が現実に引き戻される。


為替(かわし)を使うたのでしょうな。されど、銭四万貫文と申さば銭十貫文の割符(さいふ)(まい)らしても四千枚にもなりまするか。違割符(ちがいさいふ)とすれば損せぬとは申せ、間銭(あひせん)だけでも大損にござりましょう」


 声の主を振り替えると宗久が怪訝な顔をしていた。そう言えば、こいつが若殿を連れて帰ってきたんだっけ。


「おお、今井様。若殿に気を取られておった故、忘れておりましたぞ。ところで、今のお話は真にござりまするか? 拙僧がネットで読んだ話によれば十六世紀初頭には割符は急に使われなくなったとか何とか。中世流通経済専門の桜井先生が書いておられましたぞ」

「じゅうろくせいき? 堺ではみなが使うておりまするぞ。虎居にも割符屋がござりますまいか」


 そう言えばそうだっけ。大作は金を鑑定して貰うために割符屋と替銭屋を訪ねたことを記憶の奥底から思い出す。


「言われてみれば左様にござりまするな。まあ、今井様の如き才ある商人にならばこの件をお任せしても大事ござりませぬな。後ほどお礼はたっぷりと致します故、若殿の件をお頼み申します」

「いやいや、某もいろいろと忙しゅうございます。それよりも申し合はせたき儀がございまして」


 挑戦的な目をした宗久が微笑んでいる。面倒事を丸投げしようとしたら思わぬ反撃を食らってしまったようだ。

 きっと青左衛門もいつもこんな気持ちなんだろうな。大作は小さくため息をついた。


「どういったお話にござりましょうや。拙僧如きがお役に立てるとは思えませぬがお話だけはお伺いいたしまする」


 大作は目一杯の予防線を張る。だが、宗久はお構い無しといった顔だ。


「実は人足に払う銭が足らずに難儀しております。大佐殿の伝を使うて手に入れることは叶いませぬでしょうや?」

「ぜ、銭が無いですと! 二貫目の金がありましたでしょうに。あれを全部使っちゃったと申されまするか? そんな阿呆な……」


 大作は目の前が真っ暗になった。眼前暗黒感って奴だな。一般にいう立ちくらみだ。脳が一時的に酸欠状態になっているのかも知れん。

 いやいや、そうじゃない。どんどん小屋を建てたり大量の人足を集めたりしてたのは知ってたけど、どれだけ無駄遣いしたらこんなことになるんだ? マリー・アントワネットの首飾り事件かよ! 会計担当のほのかはチェックしていなかったのか?

 きょろきょろと血走った目でほのかを探すが見当たらない。あの野郎、逃げやがったな! と思いきや、背後からほのかの声が聞こえた。


「大佐、誰か探しているの?」

「うわらば! 何で真後ろに立ってるんだよ。俺が眉毛の太い人なら命が幾つあっても足りんぞ」

「良かった、大佐の眉が細くて」


 そう言うと、ほのかが満面の笑みを浮かべた。ところで何か用があってほのかを探してたんだっけ? 分からん、さぱ~り分からん。


「そうだな。もういっそ、お公家さんみたいに引き眉にしてみるか?」

「眉を剃ったお坊様なんて見たこともないわ。止めておいた方が良いんじゃないかしら」

「ほのかがそう思うんならそうなんだろう、ほのかん中ではな。まあ、止めとくよ。って言うか、眉毛ってのはおでこの汗が目に入らないようにって大事な機能があるんだ。そんな物を剃っても良いことなんて何も無いさ。んじゃ、この話はお仕舞い」

「大佐殿、銭の話にございますが……」


 振り返ると宗久が遠慮がちに声を掛けてきた。なんだ、おっさんまだいたのかよ。

 いやいや、忘れてた~!


「おい、ほのか! 二貫目の金塊を何に使った!」

「え? あれなら香の物を漬ける重石にしてるわよ。五平どんに茄子を頂いたから味噌漬けにしてるの。良かったら朝餉に出すわよ」

「茄子の味噌漬けか。美味そうだな。期待してるぞ。って言うか、糠漬けが発明されたのは江戸時代だからまだ無いんだな。糠に大根とか瓜とか胡瓜とかいろいろ漬けてみろ。きっと美味しいぞ」

「じゅるる~」


 隣から大きな涎を啜る音が聞こえた。慌てて振り向くとお園が目を輝かせている。あんだけ食った後にこの反応かよ。美味い物は入るところが別なんだろうか。


「大佐殿、宜しければ銭の話を……」


 振り返ると宗久が困った顔をしている。まだいたのかよ~! 大作は心の中で絶叫する。

 いやいやいや、こっちが本題なんだっけ。反省、反省。


「ほのか。漬け物石なんだけど、他の物と替えて貰っても良いかな。今井殿がご入り用なんだ」

「そうなんだ。重くて丁度良い塩梅だから重宝してたんだけど。でも、しょうがないわね」

「藤吉郎、適当な岩を見繕ってくれるか。真っ暗だからLEDライトを持って行け。頼んだぞ」

「御意」


 外はもう真っ暗だ。太陰暦で二十九日だからほとんど新月なので日没前に月は沈んでいる。

 菖蒲が一歩前に進み出ると口を開いた。


「一人ではライトと岩を一緒に持てませぬ。私が手伝うても宜しゅうございますか?」

「そうね、お願いするわ。菖蒲は気が効くわね」

「お手を煩わせて忝ない」


 藤吉郎が恭しく頭を下げると菖蒲がはにかむように微笑んだ。 

 二人は寄り添うように暗闇の中に消えて行く。

 何だこいつら? やっぱできてんのか? 大作の心の中にどす黒い嫉妬の炎が渦巻く。


 いやいや、別に菖蒲は攻略対象じゃ無いやん。そんなことより何で菖蒲は俺じゃなく、お園に許可を求めたんだ? 巫女軍団はお園の直轄だけどチーム桜は俺の親衛隊なんだけどなあ。命令一元性の原則を曲げないで欲しいんだけど。

 よし、こうなったら……


「大佐殿、銭の話をしても宜しゅうござりまするか……」


 振り返ると宗久が死んだ魚のような目をしていた。どしたの?

 いやいやいやいや、こっちを待たせてたんだっけ。申し訳ない。


「大変お待たせいたしました、今井様。って言うか、もう夜も更けて参りましたな。ややこしい話でしたら明日に致しませぬか? 拙僧からも水飴のことでお願いがございます」

「左様にございますな。明日できることは明日に致しましょう……」


 魂から絞り出すような声で宗久が小さく呟く。もしかして気を悪くしたんだろうか。まあ、明日には機嫌も直ってるだろう。大作は考えるのを止めた。

 横から現れた二人の山師が疲れた顔の若い商人を脇から支える。そのまま抱えれられるように人足たちの小屋へと消えて行った。




 チーム桜の面々と別れた大作はお園と未唯を連れて巫女軍団の宿舎を目指す。

 三十名ほどの若い女子たちは二段ベッドで横になっていた。だが、まだ眠ってはいないらしい。明るい話し声に交じって時々、大きな笑い声が外にまで聞こえてくる。


「お邪魔するよ。俺たちもこっちに泊めて欲しいんだけど、空いてるベッドはあるかな?」

「御免なさい、二つしか空いてないわ。良かったら大佐は私と一緒に寝る?」


 愛が悪戯っぽい笑顔を浮かべる。それを見たお園は大作と体を密着させるように腕を組んだ。


「ありがとう、愛。でも、大佐は私と一緒に寝るわ。未唯、あなたは一人で寝なさい。上で寝て良いわよ」

「はい、お園様」

「お休みなさい」


 言葉は優しいが何だかお園の口調が妙に刺々しい。その微妙な空気を感じ取ったのだろうか。愛や未唯は筵を被ると黙り込んでしまった。


 大作とお園は二段ベッドの下段で床に就く。明日は何をしようかな。大作がそんなことを考えているとお園が小声で話しかけてきた。


「ねえ、大佐。お代乃ってどんな娘だったの?」

「お前の劣化コピー…… は失礼か。縮小コピーみたいにクリソツ(死語)だったぞ。クローン人間みたいだったな」

「きっと大佐のお守りで苦労してたんでしょうね。幾つくらいだったのかしら」

「う~ん。舞と同じくらいに見えたな。数えで十五ってところじゃね?」


 正直言ってあんまり良く覚えていない。大作は適当な相槌を打つ。だが、それを聞いた途端にお園の態度が豹変した。


「十五年の後に十五の娘がいたの! それってどういうことかしら? もしかして今すぐ交合(まぐわ)わなきゃならないのかしら?」


 ざわ…… ざわ…… 巫女たちが一斉に聞き耳を立てたのが大作にもはっきりと分かった。


「そ、そういう話は二人っきりの時にしようよ。って言うか、新婚の三年間は二人でエンジョイしたくね? それに、子供を作るのは島津を倒してからって言ったじゃん。話は変わるけどマグワイヤーって野球選手を知ってるか?」

「う、う~ん。私、ややこも欲しいけど新婚もえんじょいしたいわね。どっちも一遍にってわけには行かないのかしら」


 お園が眉間に皺を寄せて首を捻る。マグワイヤーのことは完全スルーらしい。


「三年なんてあっという間だぞ。それくらい待てるだろ? 高齢出産って歳でもないんだしさ。そうだ、閃いた! お前が子供を産むと同時に死んじゃうって新展開はどうじゃろう? 残された子供を俺が男手一つで育てて行くって子育て物語に路線変更するんだ。ウォルフガング・ペーターゼン監督の第五惑星って映画みたいだろ? そこから一気に十五年後とかになってお前がお代乃役を演じたら絶対に面白いぞ」

「どうやったらそんな途方もない阿呆なことを思いつくのかしら。大佐の阿呆面には心底うんざりさせられるわ。ばん、ばん、かちかち、あら?」


 そう言うと、お園がにっこり微笑んで不意に口付けしてきた。またもや巫女たちのざわつく気配がする。

 これは早いところ王族専用の寝室を作らなければ。そんなことを考えているうちに大作は急に眠くなってくる。この夜、大作はお園と手を繋いで眠った。






 翌朝、大作は珍しくすっきり爽やかに目を覚ました。夢は見たかも知れないが覚えていない。


「おはよう、大佐。こんなに朝早くに起きるなんて珍しいわね」

「何でだろうな。目が冴えちゃったよ。まあ、今日はやることが一杯あるから丁度良いか。よし、時間だし俺が起床ラッパを吹いてやろう」


 大作はサックスを片手に小屋の外に出る。とは言え、普通に起床ラッパを吹いても面白くないな。ヨハン・ゼバスティアン・バッハ、君に決めた!

 そう心の中で絶叫すると『目覚めよと呼ぶ声あり』を情感たっぷりに演奏する。

 待つこと暫し。巫女やくノ一たちが三々五々、小屋から現れた。三分もしないうちに全員が見事に整列する。


「なんだ、こいつら。軍隊みたいに訓練されてるんじゃね? いやいや、着の身着のままだからかな? まあ、どうでも良いや。整列!」

「巫女軍団、総員三十名、事故なし、現在員三十名、健康状態異常なし」

「チーム桜、総員十名、事故なし、現在員十名、健康状態異常なし」

「集合終わり」


 留守にしていた数日で何があったんだろう。軍隊ごっこみたいで嫌な感じだなあ。大作は心の中で顔を顰めるが決して口には出さない。

 これくらいのことで機嫌良く働いてくれるんなら好きにやらせておこう。


「え~っと。今日は六月十五日の日曜日だな。折角の日曜日に急で悪いんだけど本日の床下祓いは臨時休業だ。予定を変更して昨日の四十丁の鉄砲の製品検査を行うことになった。どっかの会社みたいに検査データを誤魔化して後で大問題になったら大変だろ? 青左衛門殿の作られた鉄砲が仕様通りの性能を発揮するかしっかりとテストして欲しい」

「ほほう。いよいよ鉄砲を撃つのじゃな」

「うわらば!」


 急に背後から掛けられた声に大作はまたしても飛び上がるほど驚く。血走った目で振り返ると又五郎…… じゃなかった、重嗣と弥助が半笑いを浮かべていた。


「か、か、加賀守様にございましたか。おはようございます」

「うむ。和尚もおひんなりまいたか」


 重嗣が鷹揚に頷く。居候の癖に偉そうに。大作は心の中で毒づくが決して顔には出さない。


「本日は昨晩お約束した通り、鉄砲のデモンストレーションをご覧に入れましょう。ほのか、人足たちの作業も休業にしてくれ。ついでに連中に鉄砲の撃ち方を覚えてもらう。加賀守様、烏合の衆に過ぎぬ人足どもが僅か半日の修練にて殺人マッスィーンへと変わる様をとくとご覧下さりませ」

「さ、さつじんまっすぃ~んじゃと? 何やら恐ろし気な響きじゃな。確と拝見仕ろう。じゃが、その前に朝餉といたさぬか?」


 う~ん。もしかして、このおっさんも食いしん坊キャラなのか? 早いとこ追い返さないと食費が大変だ。大作は早くも気が滅入ってきた。

 食事当番の巫女とくノ一が大慌てでお湯を沸かして雑炊を作る。これのどこが精進料理なんだろう? 大作は疑問に思わないでもない。だが、言ってもしょうがないので空気を読んで黙っていた。




 食事の支度を待つ間にラジオ体操で時間を潰す。重嗣と弥助は興味津々の顔をしていたが加わってくることはなかった。


 手早く朝食を済ますと巫女軍団とチーム桜の面々に鉄砲を一丁ずつ手渡す。チーム桜のくノ一たちは突然に手渡された鉄砲に緊張の面持ちだ。

 それに比べ、巫女たちは昨日と同じことの繰り返しにちょっと呆れているようだ。やはり同じことの繰り返しだとすぐ飽きられてしまうらしい。

 大作は何か面白いネタはないかと無い知恵を絞る。


「鉄砲一丁当たり人足を五人ずつ担当してくれ。やってみせて、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ。まずは諸君らが手本を見せる。それから一人ずつ火薬を使わずに練習。大丈夫そうだったら実際に撃たせて見せる。そんな段取りだ。ところで、赤い旗とか緑の布って無いかな?」

「掛襟や緋袴は赤いわね。でも、緑の布なんてあったかしら?」


 お園が戸惑いがちに首を傾げて未唯の肩を軽く叩いた。急に無茶振りされた未唯は大袈裟に狼狽える。


「緑の布切れですって? そんな物あるわけ無いわよ~!」

「あるのか無いのかどっちだよ~! いやいや、無いんだよな。う~ん、どうしよう」

「そんな物をいったい何に使うのかしら? 白や萌黄の布ならあるわよ。それか、人足の方々の脚絆とかは?」


 ほのかが人足たちの小屋の方を手振りで指し示す。そう言えば、全員ではないが一部の人足は脛に薄汚い脚絆を巻いていたような気がしないでもない。


「射撃訓練中かどうかの目印に使うんだ。赤旗が上がってる鉄砲はいつ撃つか分からんから要注意ってな」

「緑の布切れは何の目印なの?」

「安全係の鉄帽のカバーだな。まあ、鉄帽その物が無いんだからどうでも良いか。それに、みんな人足の脚絆を頭に巻くなんて嫌だろ? まあ、適当に注意してくれ」


 みんな揃って禿同といった感じで頷く。まあ、赤旗があれば事故が防げるってわけでもない。肝心なのはどれだけ真剣に注意するかに掛かっている。一人ひとりの注意力に期待するしかないだろう。

 大作は巫女軍団とチーム桜の面々を引き連れて人足たちの作業場に向けて移動する。


 二百人の人足たちも朝食を済ませて作業場に集合していた。突如として現れた少女たちが鉄砲を担いでいるのを見て唖然としている。

 集団から初老の男が進み出てきた。こいつ誰だっけ? 五平どんだ。何でこいつがリーダー面してるんだろう?

 いやいや、このおっさんには総括安全衛生管理者をお願いしてたんだっけ。大作は危ういところで大事なことを思い出した。


「大佐さま。お久しゅうございますな。本日は如何なされましたか?」


 しまった~! 何にも考えていなかったぞ。何か面白いこと言わなきゃ。大作は必死に頭をフル回転させる。閃いた!


「今日は皆様方に、ちょっと殺し合いをして頂きたく存じます」


 ドン引きする人足たちの視線に大作は激しく後悔する。だが、例に寄って後の祭りだ。

 巫女軍団とチーム桜たちから聞こえてくる激しいため息を大作は華麗に聞き流した。


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