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巻ノ百四拾弐 飛べ!コンコルド の巻

 唐突に大佐から主役交代を告げられたお園は小首を傾げて思案していた。

 大佐の言う島津との戦まで三年しかない。しなければならないことは山積みになっている。

 にもかかわらず大佐の頭の中は四百年後の戦で一杯らしい。ここは私が上手に操るしかないのかも知れない。


「それで? つまるところ大佐はどうしたら良いと思うの?」

「まずはカリブ海の制海権確保かな。とは言え、大西洋を七千キロほど渡って来るだけのスペインと違って、こっちは大変だぞ。マゼラン海峡を回ってもインド洋を通っても二万七千キロもある。そこでパナマ運河…… いや、ニカラグア運河を作ろうと思う。距離は長いが掘削量が少なくて済むらしいな」

「うんが?」

「掘割? 堀切? 四十里ほどの長い大きな溝を掘って船を通すんだ。そんなの無理だって思うか? No Problem! 江戸城外堀のたった十倍に過ぎん。ともかく、これを作るだけで一万二千キロもショートカットできるんだ」


 大佐は自信満々の笑顔で言い切る。その意味不明な自信はいったいどこから湧いてくるんだろう。お園は内心でイラっとしたが無理矢理に笑顔を作った。


「えどじょうそとぼりは知らないけど、それっていくらくらいお金が掛かるのかしら?」

「さぱ~り分からんけど二十一世紀なら三兆円くらいかな。単純計算でニ千万貫文ってとこだろう。この時代のGDPに匹敵するかも知れん。でも、金に換算すればたったの百トンほどに過ぎんぞ。それにこれは戦国時代が終わって用済みになった武士の棄民や失業対策にもなるんだ。次の幹部会で議題に上げるから支持を頼むな」

「そう、良かったわね。そろそろ気が済んだ?」

「それともう一つだけ良いかな。核開発は物凄く時間が掛かるだろ。だからちょっとでも早く始めたい。まずは山ヶ野に重水精製施設でも作ろうかと思うんだ。エタノール蒸留と技術的に被るところもあるし、廃熱を有効活用できるかも知れんぞ」


 大佐は心底から嬉しそうに続ける。しかし、お園はその話を右から左に聞き流した。

 って言うか、やっぱり私に大佐を操るのは荷が重すぎるみたいだ。諦めるなら早いに越したことはない。


 お園はなるべく優しい声を出すよう意識してゆっくりと話し掛けた。


「そうね、幹部会で語らいましょう。それじゃあ、夕餉の支度にしましょうか。そろそろ藤吉郎たちも帰って来るわよ。それはそうと、主役なんだけどやっぱり大佐がやってくれないかしら?」

「どうした? もう嫌になったのか?」

「何だか知らないけど頭の中で考えていることが全部、地の文になるのよ。気持ちが悪いわ」

「そ、そうか。そりゃあ悪かったな。本当言うと俺もせっかくの無駄蘊蓄が地の文にならなくて困ってたんだ。じゃあ、俺の主役復帰な」


 大作はにっこり笑って右手の平を上げた。お園も苦笑しながらハイタッチする。

 そんな二人のやり取りを未唯は部屋の隅っこから他人事のように眺めていた。




 夕食の支度が終わるのを見計らったように藤吉郎と菖蒲が帰ってきた。

 何だか見るからに疲れ果てているようだ。しかし、二人とも満面の笑みを浮かべている。


「ただいま戻りました、大佐」

「おう、おつかれちゃ~ん。腹が減ってるだろ。食べながら話そう。んで、どうよ? サブの方は」


 大作は時代遅れの業界人になったつもりで馴れ馴れし気に話しかける。意味不明なハイテンションに二人は目を丸くして驚いているようだ。

 その微妙な空気を華麗にスルーして鍋から雑炊を掬う。そしてそれを豪快に椀に注ぐと箸を添えて差し出す。もちろんレディーファーストだから菖蒲が先だ。

 恭し気にそれを受け取った藤吉郎は口を付けずに脇に置いた。もしかして猫舌なんだろうか。ラング・ド・シャだな。


「はっ、油の熱さと硫黄の混ぜ具合を五つに分けました。都合ニ十五の組み合わせを試しております。青左衛門や菖蒲殿のお手伝いもあって無事にサブを作ることが叶いました」


 藤吉郎は懐から紙包みを取り出すと勿体ぶった手つきでそれを開く。中から大きめの消しゴムくらいの物体が現れた。

 大作はおっかなびっくりそれに手を触れてみる。ちょっとネバっとしていて思っていたより硬い。


「こんなんで印刷なんてできんのかな。もしかして無理なんじゃね?」

「裏をご覧くださりませ。早、試みておりますれば」


 言われて反対側に引っくり返すと墨で薄汚れていた。その表面には文字の凹凸が刻まれているようないないような。

 もう試してたのかよ~! 大作は心の中で絶叫するが必死にポーカーフェイスを作る。


 ここは『すばらしい藤吉郎君!』とか褒めるとこなんだろうか? でも、回転式脱穀機に続いてフレキソ印刷でもポイントを稼がれると俺の立場が脅かされるんじゃね? 大作の心の奥底で仄暗い嫉妬の炎が揺らめいた。

 大作は首を傾けて養豚場の豚を見るような目で藤吉郎を睨みつける。そして、一切の感情を込めないよう注意しながら吐き捨てた。


「要するに裏面を百枚印刷するという目的は達成できなかったわけだな? 藤吉郎、君には失望したよ……」

「は、はぁ?」


 藤吉郎が唖然とした顔で呆けている。この顔はいつ見ても堪えられん。大作は畳み掛けるように告げる。


「現時刻を以て理化学研究所副所長の任を解く。別命あるまで自室で謹慎したまえ」

「何を阿呆なこと言ってるの、大佐! 藤吉郎は見事なる働きを上げたわよ!」

「左様にございます。今日一日でサブを作る術は分かりました。明日には必ずや百枚刷り終えてみせまする」


 お園と菖蒲が顔色を変えて藤吉郎の弁護に回った。えぇ~! こいつら藤吉郎派なのか? 助けを求めるように未唯に目をやると我関せずといった顔で雑炊を啜っている。

 予想外の展開に大作は焦った。だが、いまさら手の平を返すわけにも行かない。ここは強気で行くべきだろう。


「しっかりしてくれよ、二人とも。お前らはみんな認知的不協和に陥ってるんだ。埋没費用(サンクコスト)はどうやっても回収できない。コンコルド効果を知ってるだろ?」

「こんこるど?」

「音の倍も速く二千里の彼方まで飛んで行く超音速旅客機だよ。エアポート'80っていうトンでもない映画があったっけ。ちなみに劣化コピーのツポレフ Tu-144はマッハ二で飛ぼうと思ったらアフターバーナーを焚かなきゃならんらしいぞ」

「あふた~ば~な~?」


 分からん言葉をいちいち聞き返すのは止めて欲しいぞ。大作は心の中で深いため息をつく。いやいや、今のは俺の説明が悪かったかも知れん。

 過ちては則ち改むるに憚ること勿れ。過ちて改めざる、是を過ちという。


「ごめんごめん、アフターバーナーっていうのはゼネラル・エレクトリックの登録商標だったよ。コンコルドのエンジンはロールス・ロイスだからリヒートって言わなきゃならんな。ちなみに、プラット&ホイットニーだとオグメンタになる。そんで、Tu-144もD型ではエンジン換装によってアフタ…… オグメンタを使わなくてもマッハ二で飛べるようになったんだ。たったの五機しか作られなかったんだけどな。初期型の……」

「ありがとう、大佐。でも、その話はもう沢山よ。って言うか私、大佐の無駄蘊蓄には(やうや)うと興が失われてきたわ。藤吉郎と菖蒲は明日も印刷を続けて頂戴。いいわね、大佐?」


 お園は満面の笑みを浮かべている。だが、一切の反論を許さぬその厳しい口調に大作は震え上がった。


「そ、そうだな。ところでTu-144 D型のコレゾフ RD-36-51エンジンは……」

「それとね、大佐。無駄蘊蓄は夕餉の半刻だけにしてもらえるかしら。四百年後の謀りごともその時だけにしてね」

「えっ!? それはちょっと……」

「い・い・わ・ね?」


 有無を言わせぬお園の鋭い視線が怖い。大作は小さく震えながら黙って唇を噛み締めるしか無かった。




 大作はちょっと冷めた雑炊を啜りながら考えていた。

 お園が禁止したのは無駄蘊蓄と四百年後の計画を口に出すことだ。頭の中で考えることまで禁止されたわけじゃない。

 たとえ自由に話すことを禁じられようと、想像力を保っている限りはその牢獄の鍵を握っているようなものだから。フランスばんざい!

 そうだ! エンジンはイギリス製だけどconcordeってスペルはフランス語だぞ。よ~し、こうなったら……


 ふと視線を感じて我に返ると隣に座っている未唯が熱い視線を送ってきていた。何か言いたいんだろうか? と思っていると、そっと大作の耳元に口を寄せてくる。


「私、大佐のお話は楽しいから大好きよ。何を言ってるかは良く分からないんだけど。お園様のいない時はいつでも私にお話ししてね」


 そう言うと未唯は素早くウィンクした。その瞳には何だか憐みが込められているようないないような。

 何が悲しゅうてこんなちびっ子に同情されなきゃならんのだろう。大作はちょっとだけ悲しくなる。

 いやいや、今はこいつだけが頼りの綱だ。いまある物で我慢しなきゃ。


「ありがとな、未唯」


 大作はにっこり笑って未唯の耳元で囁く。そして『未唯の凍結を現時刻をもって解除。ただちに攻略を再開させろ』と心の中で宣言した。




 食事を終えるとみんなで食器を洗って歯を磨く。無駄蘊蓄を止められた大作は他にすることも無い。仕方ないのでとっとと寝ることにした。

 部屋の隅に筵を敷いていると未唯が少し遠慮がちに話し掛けてくる。


「ねえ、お園様。私も一緒に寝て良いかしら?」

「別に良いけど、急にどうしたの?」


 普段は見せたことが無い未唯のアグレッシブな一面にお園がちょっと面食らっている。だが、未唯は退かない、媚びない、省みない。


「私は連絡将校よ。いつも大佐と一緒にいなきゃいけないわ。お願い、お園様!」

「別に駄目なんて言っていないでしょ。好きにしなさい。じゃあ、寝ましょうか」

「いやいや、二点同時加重攻撃は勘弁してくれよ! いや、過重? 荷重? 分からん、さぱ~り分からん!」


 大作は必死に抗議の声を上げる。だが、二人の耳にはまるで届いていないようだ。まあ、良いか。別にアバラを持ってかれるわけじゃなし。大作は考えるのを止めた。






 翌朝、藤吉郎と菖蒲に印刷を任せた大作はお園、未唯と共に山ヶ野への帰路に就いた。


「今日は六月十四日の土曜日だよな。幹部会は月曜だから丸一日の余裕があるぞ」

「そう言えば藤吉郎も幹部要員だったわよね。連れてこなくて良かったのかしら?」

「知らん! 覚えてたら明日に来るんじゃね? 来ないかも知らんけど」


 通い慣れた田舎道を歌ったり世間話をしながらひたすら歩く。さすがにもう迷うことも無い。

 五時間ほどで見慣れた作業場が見えてきた。小屋の回りに何人か女らしき人影がたむろしている。


 そのまま顔の見分けが付くほどの距離まで近付く。桜、ほのか、メイ、サツキ、愛、それと名前の分からないくノ一が三人が突っ立っていた。

 そこにいる全員がちょっと緊張した顔をしている。その中から桜が一人だけ離れて一歩前に出た。


「どした? 綺麗所が雁首を揃えて」

「大佐、貴方を逮捕します」

「What?」


 大作は素っ頓狂な声を上げて大袈裟に驚く。名前の分からん三人のくノ一が素早く周りを取り囲んだ。


「ちょっと待ってくれよ。俺は山ヶ野のリーダーだぞ。不逮捕特権があるはずなんだけど」

「それはすでに停止されております。先ほど開かれた幹部会にて逮捕許諾が決議されました」

「お前ら自分のやってることが分かってるのか? これは国家に対する重大な反逆だぞ! お前達の父母兄弟は国賊となるので皆泣いておるぞ!」


 しかし、桜はまったく動じる様子がない。腰に手を当てると胸を張って宣言するように答えた。


「我ら救国戦線評議会はただただひとえに国家の為に行動しております。大佐の私兵ではございませぬ」

「そ、そ、それっておかしくないか? 特にサツキとメイ。お前らは俺が百地様から直接雇用したはずだぞ。『伊賀の忍びは雇い主には神掛けて(まつろ)う者』とか何とか言ってたじゃんかよ。これって契約不履行じゃね?」

「されど、幹部会の決定は絶対にござります。そうお決めになったのは他ならぬ大佐にございましょう」


 もしかして、もしかしないでもこれって結構なピンチじゃね? 大作の首筋に嫌な冷や汗が滲む。ここは敢えて死中に活を求めるしかない!


「いやいや、だからそれは普通におかしいぞ。今日はまだ土曜だ。何か勘違いしてるんじゃね? 幹部会は明後日だぞ」

「いえ、今日(けふ)は閏五月二日でございます。前の幹部会で五月二十五日が火曜日だと申されたのは大佐でありましょう」


 桜の声音には感情が全くこもっていない。氷のように冷たい視線に射竦められて大作は背筋がぞくっとした。

 とは言え、こんな無茶な話に黙って従う義理はない。ちょっと斜に構えて顎をしゃくると桜を睨み返す。


「重要なのは今日が土曜だってことだろ? いまからそれをツェラーの公式を使って証明しよう。まずは西暦の上二桁をC、下二桁をYという中間変数で表す」


 そう言いながら大作はバックパックから取り出したタカラ○ミーのせ○せいに「C=15,Y=50」と書いた。

 一瞬、桜が何か言いかける。だが、サツキが手でそれを制した。とりあえず話を聞く気はあるようだ。


「西暦だと今日は十四日だな。次に六月なので六に一を足してニ十六倍する。これを十で割って小数点以下を捨てると十八になる。それからYは五十だな。さらにYを四で割って小数点以下を捨てると十二だ。それから……」


 大作はスマホをチラ見しながら計算を続ける。本当にこんなんで曜日が分かるんだろうか。間違ってたら格好悪いな。

 想像して思わず吹き出しそうになる。だが、縁起でも無いので頭を振ってその考えを振り払った。


「グレゴリオ暦は1582年10月15日から始まってる。だから今はユリウス暦だな。この場合はCを六倍して五を足すと…… 九十五だ。十四足す十八足す五十足す十二足す九十五は…… 百八十九になる。七で割ると二十七? 割り切れちゃったぞ」

「大丈夫、合ってるわよ」


 そう言いながらお園が小さく頷く。良かった、合ってた。大作も思わず安堵のため息を漏らす。だけど、これが本当に土曜日なんだろうか?

 もう一度スマホを見るが問題無さそうだ。余りゼロは土曜日だってちゃんと書いてある。大作はドヤ顔でスマホ画面を掲げる。


「ほらな、やっぱり今日は土曜日だろ~?」

「ちょっと待って、大佐。何で余りがゼロだと土曜なの? その(ゆえ)を知りたいわ」


 お園から意外な突っ込みを受けた大作は大いに焦る。って言うか、お前は本当にそれが知りたいのか?

 そもそも土曜がゼロなんて決まりは無いのだ。たとえばISO 8601だと一の月曜から始まっている。JIS規格も同様だ。

 一方、CやJavaはゼロの日曜から始まっている。ところがVBやexcel、Oracleなんかは一の日曜始まりだ。


 ここは適当に誤魔化すしか無いのだろうか。大作は頭をフル回転させて無い知恵を絞る。閃いた!


「そもそも一週間を七日と定めたのは古代バビロニアの連中だったらしいな。月の満ち欠けは二十九日半くらいだろ? それを四で割ったんだろう。そしてその七日間に順番に星の名前を付けたんだ」

「だから、その順がどうなっているのかを知りたいのよ。なんで土から始まっているのかしら。一週間の歌は日曜から始まっていたわ」

「それはアレだな。当時発見されていた水星、金星、火星、木星、土星の五惑星。それと太陽と月を遠い順に並べ替えたんだ。バビロニアの連中は土星、木星、火星、太陽、金星、水星、月の順番だと思ったらしい」

「それって日月火水木金土とは全然違うわよね?」


 お園が物凄く不服そうな顔で相槌を打つ。桜たちくノ一も禿同といった顔で頷いた。

 何て気の短い連中なんだろう。大作は腫れ物に触るような気持ちで精一杯の優しい声を出す。


「まあ、話は最後まで聞けよ。古代エジプトの天文学者は一日をニ十四等分したらしい。そんで、それぞれに土星から順番に星の名前を付けていった。二十四割る七は三、余り三だ。すると二日目は太陽、三日目は月から始まるだろ。こういう感じで土日月火水木金って順番になったんだ。めでたしめでたし」

「ふ、ふぅ~ん」


 不承不承といった顔でお園が小さく頷く。くノ一連中はまだ納得が行かないって顔をしている。だが、これ以上は付き合ってられん。

 大作は会話の打ち切りを告げるように両手を小さく打ち鳴らした。


「今度こそ納得して貰えたかな? そういうわけだから、お前らがさっき開いたっていう幹部会は無効だ。そこで決議された逮捕許諾も無効になる。よってこの逮捕も不当なんだ。俺は何も悪く無い!」

「では、お伺いしとうございます。大佐、何故にそれを我らに伝えおきませなんだ? とんと合点が参りませぬ」


 桜の眉が吊り上がり、目が攻撃色に染まっている。

 ただ単に忘れてたなんて言いにくいな。みんなが素直に納得できる理由があれば良いんだけど。

 大作は適当な言い訳を探して無い知恵を絞る。閃いた!


「宇宙が誕生して百三十八億年。太陽系が出来て四十六億年。それに比べりゃ二日なんて誤差みたいな物だろ。How about it?」

「それが大佐のお考えにござりまするか。よう分かり申した」

「うわぁ!」


 不意に背後から掛けられた言葉に大作は小さく飛び上る。慌てて振り返るとそこに立っていたのは藤吉郎だった。


「ちょ、おまっ! お前は虎居にいるはずだぞ。何でここにいるんだ?」

「大佐、貴方は良い御方にござりました。だが、貴方の父上がいけのうござりました! フフフフ、ハハハハハ!」

「藤吉郎? 謀ったな、藤吉郎!」


 何なんだこの唐突な展開は? これこそ俺が待ち望んだ超展開だぞ。大作は待ってましたとばかりにノリノリで突っ込みを入れる。


 それはそうと俺の親父が今の状況にどう関わってくるんだろう。

 これはもしかしてアレか? 戦国○衛隊1549みたいな感じなのか?

 閃いた! 俺は元々は戦国時代に生まれた。だけど子供のころタイムスリップで二十一世紀に飛ばされて今の親に育てられた。そして二ヶ月前に戦国時代に戻ってきたんだ。

 だとすると藤吉郎や小竹は俺の実の弟になるのか? いや、きっと二十一世紀で暮らした十年のせいで藤吉郎の歳を追い越したんだろう。ってことは……


「会いたかったよ、兄さん!」


 大作は藤吉郎に飛びつくや思いっきりハグする。

 藤吉郎は『こういう時、どんな顔すればいいか分からないの』といった情けない表情で周囲を見回した。


「おめでとう」

「おめでとう」

「めでたいわね」


 みんなの口から次々にお祝いの言葉が飛び出す。大作は脳内で残酷な天使のアレを再生した。頭の中で流すだけなら著作権は無問題だ。






「そろそろ起きて、大佐。朝餉の支度ができたわよ」


 お園に肩をゆさぶられて大作は目を覚ました。


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