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巻ノ百四拾 監視社会の恐怖 の巻

 大作は切れかけた集中力を必死に繋ぎ止め、打開策を探して頭をフル回転させていた。

 目の前に座っているのは祁答院氏十三代当主良重の嫡男にして齢十二になる重経だ。すぐ傍には弥十郎も控えている。


 どげんかせんといかん。せっかく昨日、半日がかりで作った鉛板がこのままでは完全否定されてしまう。それだけは何としても避けなければ。

 これぞまさに典型的なコンコルドの誤謬だろう。『分かっちゃいるけどやめられない』って奴だな。


 眉間に皺を寄せて考え込む大作を気遣うようにお園が声を掛ける。


「ねえ、大佐。何をそんなに難しい顔をしているの? 『ふれきそいんさつ』じゃ駄目なのかしら」

「う~ん。印刷の版にサブを使うってことは消しゴムはんこの親戚みたいな物だろ。それってナ○シー関さんの専売特許みたいな物じゃね?」


 理屈もへったくれもあった物じゃ無い。だけど、とりあえず何でも良いから口から出まかせで時間を稼がねば。大作は独自の理論と言うかナニをナニする。

 しかし、お園にそんな適当な言い訳が通じる筈も無い。


「特許制度ってまだ定まっていないんでしょう。な○し~せきってお方も文句を言えないはずだわ」

「ぐぬぬ…… 分かった、降参だ。この件も藤吉郎に任せよう。全責任は俺が取る。サブを使った版による印刷が実用に耐えうるか検証してくれ。でも、ゴムって墨を撥くんじゃないのかな。いや、消しゴムはんこって水性インクでも使えたっけ?」

「それもやってみれば分かるわよ。Let's try together!」


 お園が勝手に話を纏めに入る。もしかして、もしかしないでも俺って当てにされていないのか?

 もうどうでも良いや。もはや大作の印刷に対する関心は完全に失われていた。

 他に何か忘れていなかったっけ? 大作は手の甲に書いたメモを見つめながら記憶を辿る。

 閃いた! じゃなかった、思い出した!


「若殿。印刷の件は持ち帰って検討させて頂きます。それとは別に若殿にお許し頂きたき儀がござります」

「なんじゃ、まだあるのか? 申してみよ」

「その取説に書かれておるのは回転式脱穀機の使い方にござりまする。我が寺ではこれを百台ほど作り、ご領内の村々にお配りする所存。その際、若殿のお名前をお借りしとうございます」


 重経と弥十郎が揃って怪訝な顔で見つめ合う。もしかして、こいつらデキてんのか? 戦国時代ってそういうのが普通にあるから怖いよな。大作はちょっとだけ背筋が寒くなった。


「かいてんしき? 何じゃそれは?」

「回転式脱穀機にござります。ドラムにループ状のピンを植え付けて回転させまする。これに稲穂を当ててやると千歯扱きより遥かに効率的に籾を落とすことが叶いまする」

「せんばこき?」


 千歯扱きも知らんとは。やはり特権階級の若殿は庶民とは別世界の人間なんだろうか。

 いやいや、千歯扱きは元禄年間に発明されたんだっけ。


「詳しくは取説をご覧下さりませ。とにもかくにも、これを村々にお配りする折、若殿の思し召しという体で行いとうございます」

「それは構わぬが、何故に若殿の御名(みな)を欲しておるのじゃ? これを配るだけならば地侍や百姓共も文句は言わぬであろう。もしや、商いに乗ずるつもりではあるまいな?」


 弥十郎…… 恐ろしい子……! 本音を一発で見抜かれた大作は背筋が凍りつきそうになった。

 もしかして、こいつらが居れば夏場の電気代が節約できるかも知れん。研究してみる価値はありそうだ。

 大作は内心の焦りを押さえて極力ポーカーフェイスを作る。


「決して若殿にご迷惑はお掛け致しませぬ。そもそも、この事業は非営利目的にござりますれば拙僧には利など僅かばかりもござりませぬ。ただただ(ひとえ)に大恩ある祁答院様に報謝せんがためにござります」

「じゃから、何故に若殿の御名を欲しておる? 和尚の御名を持って施せば宜しかろう」

「恐れながら拙僧はいまだ、ご領内の民草から信を得ておりませぬ。若殿の御名におすがりするしか無いのでござります。どうか若殿。どうか、どうか……」


 もう、駄目なら駄目で結構だ。いざとなったら入来院か東郷にくれてやろう。面倒臭くなってきた大作はやけくそ気味にひたすら頭を下げる。

 お礼とお辞儀はタダなのだ。タダより高い物は無いだって? アレは嘘だ!


 集中力が完全に切れた大作は頭の中で帰り支度を始める。だが、若殿から掛けられた声で我に返った。


「よかろう。儂の名を貸して進ぜよう」

「若殿の御名を汚すようなことあらば容赦はせぬぞ。ゆめゆめ忘るるでないぞ」

「有難き幸せ。この御恩、生涯忘れませぬ」


 すでに諦めモードに入って別のプランを検討していたんだけど。そんなタイミングで言われても正直言って全然有難く無い。だが、大作はそんな胸中をおくびにも出さない。


 微妙な空気を感じ取ったのだろうか。フォローするかのように弥十郎が口を開く。


「大佐殿が儂の前に訪れて一月半になろうか。鉄砲を作りしだけでも驚かしきことと思うておったが、印刷に回転式脱穀機とは恐れ入ったぞ。和尚は如何にしてこのような物を思いつかれたのじゃ?」


 これは長引きそうな予感がする。もう集中力はゼロなのに。大作は緊急脱出を決意した。


「そのことは近々、本にして出版しようと思うておりまする。それを読んで下さりませ」

「さ、左様にござったか。じゃが……」

「申し訳ござりませぬ。生憎と歯医者の予約を入れておりまして、拙僧は急ぎ帰らねばなりませぬ。See you later.」


 大作は額を床に擦り付けたまま器用に後退りする。そして廊下まで下がるやいなや立ち上がってBダッシュで逃げ出した。




 屋敷の外に出て振り返ると、お園、未唯、藤吉郎、(しょう)…… 菖蒲(あやめ)たちも付いてきていた。

 お園が不思議そうに小首を傾げる。


「ねえ大佐。なんであんな嘘を付いたの?」

「嘘なんて人聞きの悪いこと言うなよ。答えにくいことを聞かれたんでエスプリの利いたユーモアで返したんだ。戦国時代に歯医者なんているわけ無い。誰だってジョークと分かるだろ」


 ジョークのネタを解説しなければならないとは酷い屈辱だ。大作は不機嫌さを顔に出さないよう注意しながらも真面目に答えた。


「未唯は真の話かと思っていたわ。戯れだったのね」

「某も空言とも思いもよりませなんだ」

「私も『はいしゃ』とは何かと思うておりました」


 完敗だ。天は我を見放した。こいつらにニ十一世紀のジョークは早過ぎたんだろう。大作は考えるのを止めた。


「さて、それじゃあ油と硫黄を買いに行こうか」

「それより先に指物師(さしものし)に三角(のみ)をお返ししましょう」

「それもそうだな。でも三角鑿ってどこで売ってるんだろう。刀鍛冶や野鍛冶が作ってるわけじゃなさそうだし」


 藤吉郎の案内で一行は指物師に向かう。そこは青左衛門の鍛冶屋とは目と鼻の先だった。


「頼もう! 拙僧は大佐と申します。昨日、我が寺の者がお借りした三角鑿をお返しせんと罷り越しました」

「これはこれは大佐様。主人の小野宗兵衛にございます。大殿の御用にござったそうですな。お役に立ちましたでしょうか」


 店の奥からしょぼくれた爺さんが姿を現す。身嗜みとかに気を使わない人なんだろうか。主人と言う割りに寝巻きみたいな着物が妙に不釣り合いだ。


「大殿ではなく若殿にござりまする。とは申せ、すべての計画はリンクしております。問題はございませぬ。それはともかく、此度は無理なお願いを聞いて頂き、有り難うございました」


 先に若殿に話を通しておいて良かった。大作は胸を撫で下ろす。


「ところで、一つお聞きしても宜しゅうございますか? この三角鑿はどちらでお買い求めになられたのでございましょう」

「鑿鍛冶が作っておるのでしょうな。鑿だけに。虎居には鑿鍛冶がおりませぬ故、わざわざ川内から取り寄せました」

「左様にござりましたか。そのように大事な物をお貸し頂いたとは、お礼の言い様もござりませぬ。これは僅かですが心ばかりのお礼にござります。とっておいて下さりませ」


 大作は馬鹿の一つ覚えのように決めゼリフを披露する。ぽか~んと口を開ける職人たちを放置して指物師を後にした。




「そんじゃあ、藤吉郎。後は任せたぞ。この金で油を一升ほど買え。硫黄は青左衛門のところにある筈だ。それと追加情報を一つ。安定剤に重炭酸カルシウムを混ぜろって書いてある。それって石灰石を砕いた粉のことだよな? とりあえず配合比率と温度を変えながら最適解を探ってくれ」


 そう言いながら大作はタニタ製の揚げもの用温度計を手渡す。確かアマゾンで千三百円くらいしたんだっけ。

 零度から二百四十度まで五度刻みに目盛りが振ってある優れ物だ。機械式なので電池も不要、ガラス製みたいに落として割る心配も無い。


「心得ました。サブを(こしら)えることさえ叶わば後は刷るだけにござりまするな」

「今日のところはな。だけど、本格的にフレキソ印刷しようと思ったら課題は山積みだぞ。版胴に適量のインクを転移するには細かいメッシュを刻んだアニロックスロールってのが要るらしい。それと環境に優しい大豆インクも入り用だな。環境意識の高い欧米では今や大豆インクが主流なんだ。あと、インクが乾くまで他の紙に裏写りしないよう並べなきゃならんか。そもそも輪転機だって圧延機の単純な転用では使い勝手が悪すぎる。大幅な仕様変更が必要になるぞ」


 夢がひろがりんぐ! この調子でガンガン行くぞ! って言うか、ガンガン行って貰うぞ。

 こいつには馬車馬のように働いて貰わねば。大作は思い付いたことを片端から並べ立てた。

 だが、それを聞いた藤吉郎はがっくり肩を落として項垂れている。


「どうした、藤吉郎。仕事が一杯あるって嫌なことか? 仕事が無い方がよっぽど大変なんだぞ。NEETや引きこもりの自立支援に政府がどれくらい苦労してると思う?」

「いえ、決してそのようなことはござりませぬ。ただ、某一人では力が足りず大佐のお役に立てぬことが悔しゅうてならぬのです」


 俯き加減の藤吉郎が表情をさらに曇らせた。と思いきや、その瞳は何か言いたいことを秘めているように見える。


「何だ? 良いアイディアがあれば言ってみ。対話のドアは常に開かれているぞ」

「ならば申し上げます。実は某には弟がおりまして、歳は三つ下なれど某より余程のしっかり者。必ずや大佐のお役に立つことにござりましょう。此方に呼び寄せることをお許し願えませぬでしょうか?」


 もしかして、これはアレか。『藤吉郎は仲間を呼んだ』みたいな展開?

 さすがにこれ以上キャラを増やすのは勘弁して欲しいな。とは言え、頭ごなしに拒絶すると反感を買うかも知れん。大作は言葉のジャブで距離を取る。


「藤吉郎の弟ってことは小竹(こちく)だよな」

「如何にも小竹と申します。されど、何故に某の弟の名をご存じで?」

「お前のことなら何でも知ってるぞ。姉が(とも)で妹が(あさひ)、御母堂が(なか)殿だろ」


 大作は『俺が藤吉郎のことを一番良く知ってるんだ!』といった意味深な笑みを浮かべる。

 だが、藤吉郎は完全に引いているようだ。まるでストーカーを見るような目をして微妙に距離を取られてしまった。


 失敗した、失敗した、失敗した!

 田中角栄みたいに家族の名前や歳を覚えておいてスラスラ言ったら歓心が得られると思っただけなのに……

 とりあえず、何でも良いから適当な話題で間を繋ごう。


「一つプライベートなことを聞いて良いかな? 小竹の父上は竹阿弥殿か弥右衛門殿かどっちなんだ? ああ、嫌なら答えんでも良いぞ」

「生憎と某にもよう分かりませぬ。母者(ははじゃ)も良う分からんと申しておりました」


 え~~~! そんなことってあるのか? 若者の乱れた性? この話題には触れないほうが吉っぽい。


 それはそうと史実でも小竹は秀吉に仕えたはずだ。

 そのタイミングで信長と秀吉から一字ずつ偏諱を貰って木下小一郎長秀と名乗ったらしい。

 それがいつごろだったのかはWikipediaですら分からない永遠の謎だ。秀吉が結婚した永禄7年(1564)よりは後だったっぽい。

 後に羽柴美濃守長秀に進化し、小牧・長久手の戦いの後に秀長へ進化。最終的には大和大納言豊臣秀長でカンストだ。


 戦国武将としての知名度はイマイチだけど文武両道に優れた名将? 秀吉の天下統一にも大きく貢献したとかしないとか。

 もし秀長が秀吉より長生きしていたら豊臣は滅びなかったかも知れん。滅びたかも知らんけど。

 そんな奴が史実より十五年も早く秀吉とタッグを組んだらどんな副作用が出るかさぱ~り分からん。クーデターとか起こされたら最悪だ。

 とは言え、今はたかが十歳の子供に過ぎん。上手いこと手懐けられるなら有能な人材は喉から手が出るほど欲しい。


「お園は小竹のことをどう思う? 採用した方が良いかな?」

「私に聞かれても困るわよ。今、初めて名前を聞いたんだから。でも、藤吉郎がしっかり者だって言うんならそうなんでしょう。藤吉郎の中ではね」

「秀長って言えば九州征伐の時に兵糧を高値で転売しようとした浅ましい奴だって話があるぞ。でも、七回もキャリアチェンジした転職魔の藤堂高虎が秀長からは中途退職しなかったそうだ。それだけの人望はあったんだろう。でも俺、藤堂高虎も大嫌いだなんだよな。あいつは天正の一揆で百姓を皆殺しにしたんだぞ。降参した者は勿論、赤子から翁、嫗までな」


 大作はスマホから適当なエピソードを拾い読みする。だけど、まだ犯してもいない犯罪行為の責任を問うのは筋違いなんじゃなかろうか。

 そんなことしたらマイノリティ・リポートみたいな恐怖の監視社会が実現してしまうぞ。

 だいたい、トム・クルーズは何であんなに自分でスタントをやりたがるんだろう。MI6だってそのせいで四ヶ月も撮影が中断したそうな。

 そう言えば、ミッションインポッシブル6をMI6って略すと英国情報局秘密情報部と紛らわしいよな。

 それはそうと大脱走の公開当時、マックイーンが全編ノースタントで演じたって宣伝してたっけ。バイクごと鉄条網に突っ込むシーンには驚愕したもんだ。あれがスタントマンだと分かった時にはがっかりしたぞ。

 いやいや、話を戻そう。そんなことを言い出したら秀吉だって雇えないんじゃね? 大作は自分で自分に突っ込みを入れた。


「降参したお百姓さんを皆殺しにしたの? 酷い話ねえ」

「群民蜂起って知ってるか? 正規の軍人じゃない民間人だって外敵の侵略に際しては武器を取って戦うことが認めらてる。国際法に従って公然兵器を携帯し、交戦法規を遵守する限りは百姓だってハーグ陸戦条約で規定された立派な合法交戦者なんだ。にも関わらず、降伏を認めず虐殺するなんて戦争犯罪だろ! 秀長のク・ソ・ッ・タ・レ……」


 話しているうちに大作は本気で腹が立ってきた。やはり秀長は許すわけに行かん。絶対にだ! 高虎と纏めてぶっ殺してやりたいぞ。


「どうどう、落ち着いて。でも、それって小竹がやったわけじゃ無いんでしょう?」

「まあそうなんだけどな。でも、雇用者としての責任があるだろ? ってことは藤吉郎。お前が一番悪いんだろ~! それはともかく、連座制は絶対にやってはいけないことなんだ」

「れんざせい?」

「集団罰はジュネーヴ諸条約の第四条約の第三十三条で禁止されているんだ。絶対に許しちゃならん。俺たちがこの国の統治権を回復した暁には過去に連座制に関与した奴等を徹底的に処罰してやるぞ。それこそミトコンドリアイブまで遡って血縁者を根絶やしにしてやる!」


 世の中で何が嫌だと言って連座制ほど嫌な物は無い。

 自分は何も悪いことしていないのに連帯責任とかで怒られるのは本当に真っ平御免の助だ。


「ふ、ふぅ~ん」

「そもそもアレだアレ。藤吉郎は理化学研究所の副所長なんだぞ。反縁故者法に触れちまうだろ」

「はんえんこしゃほう?」


 大作以外の全員がハモる。相変わらず息の合ったことだ。


「調べるからちょっと待ってくれ。え~っと、公職者が政府機関に親類縁者を雇用することなどを禁じた法律だな。リンドン・ジョンソン大統領の署名で1967年に成立したらしい。俺たちの組織は徹底した実力主義がモットーだろ。野党から『政権の私物化』とか非難されたら嫌じゃん」

「でも、未唯は愛や舞と姉妹よ。楓と紅葉も双子だわ」

「いやいや、お前らを採用したのは選挙より前だったろ。でも、まあ良いか。良く考えたら俺たちの理化学研究所は民間研究機関だもん。それはそうと小竹を引き抜いたら残った家族が困らんか? いっそ仲殿、智、旭も纏めて呼んだらどうだ。給料は弾むぞ。もちろん交通費や支度金も出す」


 もう、どうでも良くなってきた大作は適当にはぐらかす。

 だが、藤吉郎はそれを真に受けたのだろうか。ぱっと表情を綻ばせた。と思いきや、またもや表情が曇る。


「お許しを頂き、有り難き幸せにござりまする。されど、ここ筑紫島から尾張は海を越えて二百里の彼方。如何して呼び寄せれば良いものやら……」

「ノープランかよ! 堺までなら文も届くけど、そっから先はどうすりゃ良いんだろうな? それに満十歳の子供に一人旅は辛いか。でも、マルコ・ロッシなんて九歳で母を訪ねて三千里だぞ。それに比べりゃたったの十五分の一くらい屁でも無いんじゃね?」

「信秀長生き作戦では堺から人を遣るんでしょう。それに合わせて呼べば良いわよ」

「ナイスアイディア、お園。そんじゃあ、藤吉郎。具体的な雇用条件は人事部長のほのかと詰めてくれ。これにて一件落着! サブの件、頼んだぞ!」


 大作は陽気に明るく一方的に宣告する。

 唖然とする藤吉郎を放置して油屋の前で別れを告げた。




 大作たち一行は虎居の城下を適当にぶらつく。


「どこで時間を潰そうかな。良いアイディアのある人?」

「え~~~! 考えて無かったの? とりあえず、窯元をお尋ねして蒸留塔やコークス炉がどうなってるか聞いてみたらどうかしら」

「あ~ そんなのあったっけ。半月掛かるって言ってたな。ってことは後、十日くらいか。いやいや、そうなると原料となる酒の手配を進めた方が良いかも知れんぞ。この時代の酒は薄めて売ってるとか何とか。焼酎を蒸留した方が手間が省けるはずだ。んじゃあ酒屋に行って焼酎を買うぞ~!」

「お、おぉ~~~……」


 お園、未唯、(しょう)…… 菖蒲(あやめ)が不承不承と言った顔で唱和する。

 乗りの悪いやっちゃなぁ…… 大作は心の中で小さくため息をついた。


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