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巻ノ百弐拾伍 鍋とヘルメット の巻

 石鹸を手にして首を傾げる入来院氏の十二代当主、入来院重朝(しげとも)岩見守。

 その眼前で涙目をして小さく震える有島千手丸。

 ブリオッシュのことを考えて涎を垂らしそうになっているお園。


 そんな同床異夢の三人を前にして大作も全く関係無いことを考えていた。


 青左衛門の圧延機を使えば薄い鉄板を安価に作ることができる。

 これをプレス加工してM42シュタールヘルムを大量生産しよう。

 戦国時代の足軽や雑兵が陣笠の代わりにナチス風のヘルメットを被る。ヴィジュアル的にもインパクトがあって何だかとっても素敵だぞ。

 どうせなら旗印はアレが良いな。赤地に大きな白い丸、その真ん中に四十五度傾けた卍を描いちゃおう。

 どっかの誰かに文句を言われないかって? no problem! 卍は仏教の象徴だ。ハーケンクロイツじゃないから平気だもん!


 ちなみにWikipediaでは足軽と雑兵をはっきり別物だとしている。ただし、その定義は時代や地域によって微妙に異なるようだ。

 戦国時代の足軽は正規雇用の最下級武士、あるいはギリギリ武士未満。それに対して雑兵は短期の非正規雇用という位置付けらしい。労災とか保険といった待遇に大きな差があったのは間違い無さそうだ。

 いずれにしろ彼らの具足は御貸具足と言って雇い主が貸し与えていた。借りる立場の足軽や雑兵たちはこれを御借具足と言ったそうな。


 大作は頭の中で素早く方針を纏める。居住まいを正すと重朝の顔を真正面から見据えた。


「岩見守様に申し上げまする。軽くて丈夫で頭が蒸れない。それでいて量産性に優れて低コスト。そんな夢のようなヘルメット…… 陣笠を欲しくはござりませぬか? そんな物は無い? 無ければ作れば宜しい。拙僧は祁答院と入来院様、そして東郷様による新型ヘルメットの共同開発を提案いたします」

「陣笠を改むるじゃと? 今、使うておる陣笠の何に不服があろうと申すのじゃ?」


 唐突な話題の転換に重朝が必死に食い付いてくる。この程度じゃこいつを振り落とすことはできないのだろうか?

 小国とは言え流石は国人領主。相手に取って不足無しだ。大作は頭の中のギアを一段シフトアップする。


「殿のようなお立場の方には足軽雑兵など下々の暮らしぶりは良うお分かりにならぬのも無理からぬこと。されど行軍中の疲労軽減、食生活の改善は兵の士気に大きく関わりまする。彼の者共は炊事の折、陣笠を鍋の代わりに使うておることをご存じにありましょうや?」

「なんじゃと? 陣笠をそのようなことに使いおるとは真か? 俄かには信じがたき話じゃな」


 重朝が目を丸くして驚いている。数万石の小国とは言え、国人領主は特権階級なのだ。『偉い人にはそれが分からんのですよ』と大作は心の中で突っ込んだ。




 戦国時代の一般的な陣笠はベトコンやお遍路さんが被っているような平たい円錐形をしている。

 その材質は初期には皮だったり柿渋を塗った和紙だったりしたらしい。これが後には漆を塗った鉄製の物へと代わっていったそうな。

 量産性とか防御性能とかを考えた結果なんだろう。その重さは一キロ近くあったんだとか。

 雑兵物語によれば、これを鍋として使ったと言う話だ。とは言え実際に試してみた人の話によると漆が溶けてきて食えた物じゃなかったんだとか。

 そう言えば、旧軍の九○式鉄帽や米軍のM1ヘルメットも鍋として使われていたそうな。こういう生活の知恵は時代や国を超えて共通しているんだろうか。

 ちなみに九○式鉄帽はニッケルクロム鋼を焼き入れした物だ。それに対してM1ヘルメットは高マンガン鋼に水靱処理という熱処理を行っている。焼き入れのように加熱後に急冷却することで高い靭性を持たせるんだとか。衝突安全ボディーのように大きく変形することで衝突を受け流すのだ。

 シュタールヘルムも最初はモリブデン鋼だったがM40からマンガン・シリコン鋼に変更されたそうだ。


 ってことは何とかしてマンガンを入手せねばならんのか? マンガン鉱山その物は全国に散在している。だが、鹿児島県下では花岡町の花岡鉱山くらいしか無い。

 宮崎県にまで足を伸ばせば幾つもあるが伊東の勢力下で鉱山開発するのは難しいんだろうか。いっそ、北海道の上国鉱山とか大江鉱山なんかを開発した方が早いかも知れん。

 いやいや、マンガンの精錬って莫大な電力が要るんじゃね? こりゃあ発電所を先に作らなきゃ無理だな。大作は考えるのを止めた。




「生活の基本は衣食住と申しますな。されど、その中でも最も大事なる物は食にござります。裸でも野ざらしでも人は生きて行くことが叶いまする。されど飯を食らわねば三日と生きてはおられますまい」


 大作はそこで一旦言葉を区切って重朝の目を見つめる。お園が禿同といった顔で黙って頷いているのが横目に見て取れた。


「戦場において兵どもが最も楽しみにしておること。それは普段は目にすることの叶わぬ白米を腹一杯に食らうことにござりましょう」

「そうじゃろうのう。じゃから我ら入来院でも戦の折は日に五合の白米を振る舞うておるぞ。それでも不服と申すか?」


 腕組みした重朝が不貞腐れた顔で首をグルグル回す。そんな風に首を回すのは危険だってテレビで整体師が言ってたぞ。注意した方が良いんだろうか?

 いやいや、ラジオ体操第一にだって首を回す体操はあったような気がする。普通に首を回したくらいで死にはしないだろう。


「いくら白米を用意しても鍋が悪ければ美味い飯は炊けませぬ。陣笠には漆が塗られております故、鍋の代わりに用うると溶け出して酷い味になるそうですな。時に岩見守様。イスラエルのガリルARMと申す自働小銃には栓抜きが付いておるという話を聞いたことはござりませぬか?」

「がりる? いや、そのような話は聞いたこともないぞ」

「何でも、この小銃の開発初期段階において給弾口で瓶の王冠を外そうとして壊してしまう事例が多発したそうな。常ならば兵に鉄砲を栓抜き代わりにするべからずと命じるのが筋でありましょう。されどイスラエルの開発者の考えは違うておりました。バイポッドの付け根を栓抜きにしたのでござります」


 スマホに表示させた画像を見せながら大作はドヤ顔をする。実は大作はこのエピソードが大好きなのだ。

 しかし、重朝の心には響かなかったのだろうか。相変らず渋い顔をしながら首を傾げて顎鬚を扱いている。

 もっと分かりやすい例え話の方が良かったかも知れん。大作は素早く方針転換を図った。


「そう申さば、すき焼きも(すき)を鉄板の代わりにして魚や豆腐を焼いたことが始まりだそうですな。兵に限らず現場の連中はどこもみな同じ。道具の設計者が想像すらしていなかった使い方を見付けるのが常のこと。ならば発想の転換にござりまする。設計段階から鍋として使うことを前提としたヘルメットを開発致しましょう」

「儂には和尚の申されることが一つも分からんぞ。も少し噛み砕いて話して貰えぬか?」


 情けない顔で重朝が弱音を吐く。こいつ、こんなに気弱なキャラだっけ。少し虐め過ぎたか。大作はちょっとだけ反省する。


「高マンガン鋼のヘルメットは高い靭性を持たせるため、千度まで加熱した後に急冷しております。故に煮炊きに使うと性能が劣化するそうな。そのため、米軍では鍋に使うなと触れを出したとのこと」

「じゃから、それが何じゃというのじゃ! 儂が何も分からぬと思うて揶揄(からこ)うておるのではなかろうな?」

「いやいや、左様なことはござりませぬ。いいから黙って全部拙僧に投資して下さりませ!! そうだ! 次回ご訪問時までにサンプルをご用意させて頂きます。ヘルメット鍋を使うて馳走を振る舞わせて下さりませ」


 それだけ言うと大作は深々と頭を下げた。お園と未唯も隣でシンクロする気配がする。

 それにしても、どこでどう間違えたんだ? 石鹸でシャボン玉でも作って遊ぶつもりだったのに。何でこんなわけの分からん展開になってるんだろう。

 いやいや、上手く行けば渋谷三氏でヘルメットを数千個の大口商談だ。帰ったら青左衛門に頼んでみよう。大作は心の中のメモ帳…… じゃなかった、俯いたままで未唯にアイコンタクトを取る。未唯も俯いたままでアイコンタクトを返してきた。

 しかし、反対側でお園が怖い顔をしているとは知る由も無かった。






 とりあえずサンプルの完成待ちということでヘルメットの件はペンディングとなった。千手丸も露骨に安堵の表情を浮かべている。

 しかし、一同の間には何とも言えない微妙な空気が漂う。それを吹き飛ばそうとでも思ったのだろうか。重朝が妙なハイテンションで口を開いた。


「大佐殿、話を石鹸に戻して良いかのう? 濡らして擦れば泡が出るとか申しておったな。そう申さばここより二里ばかり西に行くと碇山城が建っておる。そこで泡が立つ石が採れると聞いたことがあるぞ」

「左様にござりますか。石鹸は油から作りまする故、一合で銭十文も掛かっておりまする。石で代用できればそれに越したことはござりませぬな」


 木灰や燃料代、人件費も考えると石鹸の製造単価は一合で銭二十文ってところだろうか。これは人足の日当に相当する。庶民には絶対に手が出ない高級品だ。

 しかし、特権階級の殿様には端金なんだろうか。重朝は特に驚いた顔はしていない。


「他にも吉田の東では鍋や鎌を磨く真っ白な磨き粉が採れるそうじゃぞ。石鹸の礼にくれてやろう。帰りに持ち帰るが良いぞ」

「ご好意は嬉しゅうございますが拙僧には頂けませぬ。岩見守様に物を恵んでもらう故がございませんので。拙僧は乞食ではありませぬ」

「何じゃと?」


 急に重朝の声音が鋭い物に変わる。その表情は鬼のようだ。アニメネタが通じないってつまんないな。大作は誰にも聞こえないほど小さくため息をついた。


「いやいや、戯れにござります。噂に聞こえし入来院様の磨き粉を頂けるとはこの上ない幸せ。有難きことにござりまする」


 大作は深々と頭を下げる。そんな物もらっても荷物になるだけなんだけど。まあ、邪魔なら途中で捨てれば良いか。大作はまだ貰ってもいない磨き粉を心の中のゴミ箱に放り込んだ。


「で、あるか。遠慮はいらんぞ。たんと持って行くが良い。それはそうと、石鹸とはいったいどういう絡繰りで泡になるのじゃろうな。和尚はご存じか?」


 (たらい)の水で濡らした石鹸を弄びながら重朝が不思議そうな顔をする。


「水は表面張力と申す力によって小さく丸まろうとしておるそうですな。界面活性剤には水の表面張力を強める力がござりますれば……」

「違うわ大佐。界面活性剤は水の表面張力を弱めるのよ」


 大作の耳元でお園が囁く。そうだっけ? そうだった! だから広がっちゃうんだっけ。まあ、どうでも良いか。大作は考えるのを止めた。


「石鹸の話はそろそろ終わりに致しましょう。それよりも本日の目玉はこちら。祁答院にて作りし鉄砲にござります。出来立てのほやほや。まだ少し暖こうござりますぞ。いやいや、これも戯れにござりまする」


 勿体ぶって油紙を開くと大作は恭しく鉄砲を差し出す。それを見た重朝の顔がぱっと綻んだ。


「なぜそれをもそっと早う言わんか!」


 え~~~! そう来たか。大作は予想外の展開に少しだけ驚く。だが、早口言葉は得意中の得意だ。滑舌に関してもわりと自信がある。大きく深呼吸すると……


「本日の目玉はこちら。祁答院にて作りし鉄砲にござります。出来立てのほやほや。まだ少し暖こうござりますぞ」


 限界ギリギリの超スピード早口で一息に捲し立てる。危うく舌を噛みそうになったが何とか詰まらずに言えた。大作は親指を立てて最高のドヤ顔を決める。

 しかし、みんなの視線が冷たい。何なの? この気まずい空気は。

 憐みの籠った目をしたお園が優しく口を開く。


「大佐、速くじゃなくて早くよ。石鹸より先に鉄砲をお見せすれば良かったんじゃ無いかしら」

「そ、そうなんだ。でも、俺はショートケーキの苺は最後まで残しておくタイプなんだ。残り物には福があるって言うだろ。これは心理学的にも証明されてるんだぞ。植木先生が言ってたな。割増原理って言って勝手に良かった探しをするから満足感が高まるとか何とか」

「ふぅ~ん」


 例によってお園の心には全く響かなかったらしい。

 だが、重朝の興味は完全に鉄砲に移ったようだ。千手丸から奪うように鉄砲を受け取ると嘗め回すように細部を観察している。

 筒先に目をくっ付けるように中を覗き込んでいるのがちょっと気になるが完全放置だ。銃口を覗いた殿様を叱りつけるってエピソードはすでに消化した。


「随分と短い鉄砲じゃのう。それにしても、もう出来たと申すか。一年掛かると申しておらなんだか?」

「アインシュタインは申されました。熱いストーブ…… 囲炉裏? その上に腰を下ろさば一刹那が一刻にも思われることにござりましょう。されど見目麗しい女性(にょしょう)同衾(どうきん)いたさば一刻が一刹那にしか思えぬやも知れませぬ。これを相対性と申します。高重力下や光速に近い速度で動くと時の歩みが遅くなるそうな」

「そのような物かのう。まあ良い。されば、早う撃って見せてはくれぬか?」


 どいつもこいつも馬鹿の一つ覚えかよ! こっちはもう鉄砲には飽き飽きしてるんだ! 大作は心の中で絶叫するが決して顔には出さない。


「岩見守様。恐れながら申し上げます。この鉄砲は完成した時点で既に時代遅れ。サンダース・ロー プリンセスみたいな物にござります。まあ、島津も鉄砲を持っておる故、こちらも付き合いで開発いたしました。されど周りと同じことをやっておるようでは敵に打ち勝つことはできませぬ。赤の女王仮説にございます」

「もっともな言いようじゃな。して、和尚には何か策があるのか?」

「すでに祁答院では大砲の開発プロジェクトが始まっております。叶いますれば入来院様にも合力を頂きたく、伏してお願い奉りまする」

「たいほう? また銭の掛かる話ではなかろうな。水軍だけで手一杯じゃぞ」


 重朝が両手を広げて情けない顔をする。まあ、気持ちは分からんでも無い。底無しの軍拡競争で経済破綻なんて誰だって真っ平御免の助だろう。


「そこでお願いがござります。入来院様に南蛮の船を呼ぶことは叶いませぬでしょうか。鉄砲や大砲を作るためには数多の鉄や鉛が入用となりまする。祁答院が製造を一手に引き受けまする。岩見守様は原料を必要な時に輸入して下されば良い。もちろん、私が祁答院の密命を受けていることもお忘れなく」

「お、おぅ。そうじゃな。海に臨んでおらぬ祁答院は我らに頼る他は無いか。よかろう。手を貸してやろう。されど、南蛮との伝手はあるのか?」

「拙僧にお任せ下さりませ。堺を通さば話を付けられることにござりましょう」


 堺と九州の西側では距離があり過ぎるから競合関係にはならない。こっちで南蛮と直接貿易したからといって堺の商売に与える損害は小さいだろう。今井宗久に金を握らせて仲介依頼だな。


「未唯、南蛮船を入来院様に呼ぶぞ。覚えといてくれ」

「はい、大佐。未唯、覚えた!」


 もう、それはええっちゅうねん! 大作は心の中で突っ込んだ。


「して、たいほうとやらは……」

「大砲の開発には長い年月を要します。恐らくは次の戦には間に合いませぬ。そこで中継ぎとしてバリスタを作られては如何にござりましょう」

「ばりすた? それならば銭は掛からぬと申すか?」


 お前は守銭奴かよ~! 大作は心の中で絶叫するが決して顔には出さない。

 そんなことより何とかして話を反らさねば。二日続けて大砲の話なんかしたら退屈で死んでしまう。

 大作は切れかけた集中力に鞭を打つ。何とかタカラ○ミーのせ○せいに下手糞な絵を描き上げて重朝に見せた。


(いしゆみ)の化け物にござりますな。ネスカフェとは関係ありませぬぞ。トーションバースプリングと申す捻じり棒バネの弾力を使って大きな矢を遠くまで正確に飛ばしまする。先日の投石器と違うて弾道の低伸性に優れております故、小さな的を狙い撃つことが叶いまする。水軍の戦いにおいて敵より遠くから攻めること。これは大きな利となり申す」

「もっともな物言いじゃな。大佐殿はこれを船に載せると申されるか。されど、いくら大きな矢を射掛けようと相手は船じゃぞ。容易くは怯むまいて」

「いやいや、拙僧には秘策がござります。良く燃える油を(やじり)に仕込んで船を燃やしてやりましょう。船火事は恐ろしゅうございますぞ。火災保険は1666年のロンドン大火を契機に登場したそうな。損失補填が出来ぬ船主は泣きっ面に蜂にござりましょう」

「それは恐ろしい話じゃな。船と申さば千手丸。先日より作らせておる風に向かって進む船はどうなっておるのじゃ?」

久見崎(ぐみざき)の船大工に任せておりまする。すでに一月経っておりますれば出来上がっておるやもしれませぬ」


 おいおい! なんの根拠も無しに楽観的すぎるんじゃね? ってか、進捗管理とかしていないのか? 大作は千手丸の希望的観測に心の中で激しく突っ込む。

 ネットで見かけた情報によれば江戸時代の船大工は十人掛かりで千石船を四十日で作ったとか作らなかったとか。ただし今回建造する船は従来の物と大きく異なる点が多数ある。

 どの程度のマンパワーを掛けたのか分からんけど一月で完成している可能性は限りなく低い。


「左様であるか。では、これより皆で見に行こうぞ」

「いやいや、拙僧どもは他にも用事がござりますれば。恐れながらご同行は遠慮いたしまする」


 確か久見崎って川内川の河口付近だったはず。って言うか、川の上流で大型船なんて作るわけが無いか。だとするとここから三十キロは離れてるんじゃね?

 そんなのに付き合わされるのは真っ平御免の助なのだ。大作は逃げの一手を決め込む。

 しかし、重朝はニヤリと笑うとピンポイントで急所を突いてきた。


「久見崎は海のすぐ側じゃ。今晩は美味い魚を食らうとしようぞ」


 お園に『じゅるる~』といった顔で見つめられた大作は素直にギブアップする。

 とは言え、その魚が(なまず)だったらぶったまげるぞ。大作は誰にも聞こえないほど小さくため息をついた。


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