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巻ノ百拾伍 Monster of Mottainai の巻

 楓と紅葉、そして名前も分からない三人のくノ一と大作の間に息詰まるような空気が漂っていた。

 一旦、仕切り直すべきか? だが、ここで退いたら二度と立ち直れんかも知れない。大作は迷った末に戦略的撤退を決断した。


「あと五人か。とんとんとんからりと五人組だな。残ったプロジェクトは…… 雷酸水銀はエタノールや硝酸を先に作らないと無理だな。無煙火薬もアセトンやグリセリンができてからだ。リン鉱石から黄リン焼夷弾を作るのも難しいか。望遠鏡、農機具、泡消火剤、紙の量産と活版印刷、グライダー的な物、パイレックスみたいな耐熱ガラス、ラインアレイスピーカーと聴音機、金管楽器も欲しいな。やりたい人?」


 誰も手を上げない。まさか残り物には福があるとか思ってるんじゃ無かろうな。

 まあ、消極的な奴らだから最後まで売れ残ってるんだろう。


「望遠鏡は早く欲しいわね。私にやらせてくれる?」


 お園が目を輝かせながら話に割り込む。

 お前がやってどうすんだよ。大作は心の中で突っ込む。だが、決して顔には出さない。


「お園は巫女頭領だろ。個々の案件には深入りせずに全体を統括してくれるか」

「そうなんだ。じゃあ、私は何もしないで良いの?」


 ちょっと不満そうにお園が口を尖らせる。何かやらせて機嫌を取った方が良いのかな?

 大作は適当な仕事を探して記憶を辿る。閃いた!


「何にもとは言って無いだろ。全体の統括だよ。そうだ。一つ頼んで良いかな。七桁常用対数表を作って欲しいんだ。スマホにPDFが入ってるから紙に書き出してくれ。印刷機ができたら大量発行しよう。天文学者の寿命を倍にした偉大な発明だ。航海術とかにも役に立つぞ。七桁の数字を十三万個ほど書き出す簡単なお仕事だ」

「え~~~!」

「冗談だよ。手伝いを雇おう。お園はスマホの管理を頼む。こればっかりは人に任せられんからな。そんでお前ら、やりたいことは決まったのか?」


 大作は五人のくノ一に向き直る。残る研究ラインは八本だ。ほのか、メイ、サツキにも割り当てれば丁度か。

 もう良いや適当で。大作は考えるのを止めた。


「残りはみんなで話し合って決めたら良いよ。後で結果だけ教えてくれるか。補足説明しておくと、望遠鏡は金属鏡の反射式。口径十センチでF10くらい。放物面なんて作れるわけ無いから球面鏡で十分だ。接眼レンズは蛍石を磨いて作る。光学通信システム構築のために必要だ。二年以内に完成させて欲しい」


 返事が無い。やっぱ、駄目っぽいなこりゃ。大作は早くも諦めの境地に達する。さっさと終わらせよう。


「農機具に関しては野鍛冶で作って貰っている回転式脱穀機のテストと導入支援。それと備中鍬(びっちゅうぐわ)を改良した『はねくり備中』の開発。草取り機や稲刈り機に紙マルチ田植機、エトセトラエトセトラだ。油を搾るための菜種とか木綿糸を作るための綿花とか、いろいろ作らにゃならん」


 もういい加減面倒になってきた大作は早口に捲し立てた。その豹変ぶりに全員が唖然としている。


「びっちゅうぐわ? 備中の鍬なのかしら」

「フォークみたいに先が分かれた鍬だよ。弥生時代からあるはずだぞ。いやいや、その名で呼ばれるようになったのは江戸時代だっけ。まあ良いや。とっとと進めよう。泡消火剤は植物性たん白質を加水分解した『たん白泡消火薬剤』を作って欲しい。我々がジエチルエーテルを使った焼夷兵器を作る以上、敵も同種の兵器を作ることを想定せねばならん。先回りして消火能力を高める必要がある」


 誰一人として相槌すら打とうともしてくれない。頑張れ、頑張れ、大作! 大作は挫けそうな心に自分で声援を送る。


「退屈なのは分かるけど大事な話なんだ。もうちょっとで済むから辛抱して聞いてくれるか。紙を大量生産しようと思ったら水酸化ナトリウムが要るな。そのためにはソルベー法で炭酸ナトリウムを作らにゃならん。これは三年じゃ無理か。青左衛門に手伝って貰って抄紙機(しょうしき)を先に作ろう。活版印刷も金属活字を作るのに手間が掛かりそうだな。木版印刷やガリ版の開発を先行させよう」

「そう、良かったわね」


 可哀想に思ったのだろうか。お園が申し訳程度に相槌を打ってくれた。


「次の戦で主力兵器となるジエチルエーテルを搭載したグライダーは重要だぞ。カタパルトから発射して黒色火薬の固体ロケットで飛距離を伸ばすんだ。大砲が使えないからこれに頼るしか無い」

「なんで大砲は使えないの?」


 ほのかが興味無さそうに口を挟む。大作はその視線に哀れみの感情を嗅ぎとる。


「コストパフォーマンスが悪すぎるんだ。黒色火薬のエネルギーは無煙火薬の半分くらいはある。だけど高速爆轟は起こせない。だから爆弾や砲弾に利用した場合の破壊力は五分の一くらいしか無い。大量生産の目処も立っていないのに、そんな効率の悪い使い方してたら勿体無いお化けがでそうだろ」

「もったいなおばけ? 何なのそれ。どんなお化けなのかしら」


 ほのかが目を輝かせて食い付いてくる。こいつのストライクゾーンはさっぱり分からん。


「ワンガリ・マータイさんは環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したんだ。欲しがりません勝つまでは。贅沢は敵だぞ」

「ふぅ~ん」

「それはそうと何か名前が無いと不便だな。死の翼アルバトロスなんてどうじゃろ?」

「あるばとろすって?」


 大作はスマホに写真を表示させる。全体的に白いが、頭は黄色くて羽や尾の先が黒っぽい大きな鳥だ。


「アホウドリのことだよ。よちよち歩きで人をこわがらずに近付いてくるから簡単に捕まえられる。おかげで環境省レッドリストの絶滅危惧II類(VU)だ」

「食べるために捕まえたの? それって美味しいのかしら」


 お園が急に目の色を変える。大作には『じゅるる~』という心の声が聞こえたような気がした。


「羽毛が目当てだったらしいぞ。羽毛布団とか暖かいもんな。Wikipediaによると六百三十万羽も殺されたそうだ。やっぱ、アホウドリはあんまりか。う~ん、そうだ。火の鳥(フェニックス)、これで行こう」


 大作はタカラ○ミーのせ○せいにゴッドフェニックスの絵を描いてみんなに見せる。くノ一たちが興味無さそうに一瞥してくれた。


「それから、パイレックスみたいな耐熱ガラスだ。ホウ素は国内で採れないから輸入だな。十四世紀には日本に伝来して硼砂と呼ばれていたらしい。今井様に頼んでみよう。ラインアレイスピーカーと聴音機は霧や煙などで視界が効かない時の遠距離通信に重要だ。大型船の汽笛は十キロ先まで聞こえるそうな。聴音機を使えばもっと遠くでも聞こえるはずだ。最後はサックスみたいな金管楽器だ。これは行進曲を吹くのに必要だぞ。処刑用BGMも欲しいしな。戦の折にワーグナーの『ワルキューレの騎行』とか流せば盛り上がるに違いない。メイ、楽器関係は絶対音感持ちのお前に頼むな」

「え? なんですって?」


 急に名前を呼ばれたメイが露骨に狼狽えた。聞いてなかったのかよ! 大作は心の中で絶叫する。


「金属製の管楽器を作って欲しいんだ。まずは板金屋でも探してくれ。みんなで演奏したら楽しそうだろ? なら、同志になれ。そうすれば、ほのかも喜ぶ」

「私めがどうしたの?」

「スネアドラムだよ。今井様に頼もうって言ってただろ」


 ほのかの顔がぱっと綻ぶ。とりあえず今日のところはこんなところで良いか。

 技術開発なんて地味な内政チートに興味を持つ女子なんて、そうそういないんだろう。

 大作は適当な話をして締めることにする。


「希望があれば早い者勝ちだぞ。パンドラの箱じゃあるまいし、残り物に福なんて無いんだ。幸福の神様には前髪しか生えていない。スキンヘッドの俺が言うんだから間違いないぞ」

「かんぶかいはもうお仕舞いなの?」

「人間の集中力には限界があるからな。長い会議は時間の無駄にしかならん。さて、頭を使い過ぎて疲れただろう。鉄砲でも撃ってリフレッシュしよう」


 何だかネタに困ったら鉄砲に逃げてばっかだな。とは言え、こいつらにも鉄砲を撃てるようになって貰わんと困るからしょうがない。

 大作は自嘲気味にテレ笑いした。




 みんなで外に出て作業場の端っこまで移動する。的になりそうな適当な木切れを見繕い、土手の斜面に設置した。


「サツキと桜は昨日に撃ったばかりだから分かるよな。まずは、お前らが楓と紅葉に撃ち方を教える。それから二人が残りのくノ一に教える。こうやって鉄砲の輪が広がって行くんだ。きっと楽しいぞ」

「分かったわ」

「お任せ下さりませ」


 二人が元気に返事をするが本当に分かってるんだろうか。

 まあ、危険性は理解してくれているはずだ。怪我人だけは絶対に出さないように。そこだけ注意して見張っていれば大丈夫だろう。


 大作はお園を連れて少し離れたところに移動すると腰を下ろした。お園が不思議そうに首を傾げる。右を上にしている。


「私は鉄砲を撃たなくて良いの? みんな撃つんでしょう」

「もしかして、お園も撃ってみたかったのかな。でも、巫女頭領が鉄砲を撃つ機会なんてそうは無いぞ。無煙火薬や金属薬莢ができてからで良いんじゃね?」

「大佐がそう思うんならそうなんでしょう。大佐の中ではね。それで、私たちは何をするの」


 鉄砲はどうでも良かったんだろうか。お園があっさり話題を切り替えた。


「さっきの幹部会で分かったけど、今のままじゃあいつらレベルが低すぎて全然使い物にならん。教育が必要だな。今晩から毎日、夕飯の後にみんなで勉強する時間を取ろう」

「船で教えて貰ったようなことを教えれば良いのね。きっとみんな喜ぶわ。さっきも大佐の話が良く分からなくて困っていたもの」


 お園も随分と乗り気のようだ。そもそもあいつらを呼んだのは楽をしたいからだっけ。何とかして使い物になるよう鍛えなけれ……

 その瞬間、静寂を破って物凄い轟音が鳴り響く。びっくりした二人は小さく飛び上った。作業場に目をやると老婆たちが驚いて腰を抜かしている。

 何て言い訳すりゃ良いんだろう。大作は揉み手をしながら飛んで行った。




 くノ一たちに頭を下げて山の方に移動して貰う。それはそうと、もし騒音性難聴にでもなったら大変だ。前から考えていた通り、藁を丸めて作った耳栓を渡しておいた。

 作業場まで戻ってくると時折、小さな破裂音が聞こえてきた。でも、気になるほどの騒音では無い。

 目が届かないのでちょっと心配だ。とは言え、ほのかとメイに見張りを頼んである。何かあったら二人の責任にしよう。大作は考えるのを止めた。


 そんなことをしていると川沿いの道を大勢の人が近付いてくるのが見えた。

 いったい何者だ? くノ一を呼びに行った方が良いんだろうか。何で護衛を一人くらい残さなかったんだろう。大作は焦る。

 とは言え、まだ距離がある。ヤバそうだったら逃げれば良いか。大作はバックパックから単眼鏡を取り出して観察した。


「人間が三ミルに見えるってことは五百メートルくらいかな。人間にクロスヘアを重ねて見るとスナイパーみたいな気分だぞ」

「私にも見せてくれるかしら」


 大作から単眼鏡を受け取るとお園が真剣な顔をしてを覗き込む。


「あれって今井様じゃないかしら。きっと人足を集めてきてくれたのよ」

「あのおっさん、思ったより役に立つな。だけど、もし金山を乗っ取る気だったら嫌だなあ」

「こっちには鉄砲二丁とくノ一が十三人もいるのよ。用心していれば不覚を取ることは無いわ」


 それもそうか。お園に言われて大作は少しだけ安心する。まあ、警戒だけは欠かさぬようにせねば。

 何も無いけど白湯くらい振る舞おう。そう思って川の水を濾過して竈で沸かしていると今井宗久たちがやってきた。


「お久しゅうございますな、大佐様。まずは十人ばかり、人足を集めて参りました」

「これはこれは、骨折りにござりました。有り難き幸せにござりまする。聞けば小屋まで立て直して頂いたそうな。お礼のしようもござりませぬ」

「いやいや、近々には算用致しまする故、良しなに願い奉りまする」


 そりゃそうだよな。いったいどれくらい請求されるんだろう。大作は気が重くなる。

 金山経営を圧迫するほどの巨額にはならんだろう。でも、ちょっとでも安く上げておきたい。


 例に寄ってどうでも良い知識でも切り売りするか。何か適当な物は…… 閃いた! 『南蛮吹き! キミにきめた!』と大作は心の中で絶叫する。

 アレが堺に伝わるのは天正十九年(1591)だっけ。こっちには金山もあることだ。

 こんな糞の役にも立たん無駄知識は早く在庫処分するに限る。大作は素早く考えを纏めた。


「時に今井様。銅には金や銀が混じっておることをご存知にござりましょうや? 拙僧は探検バク○ンが三菱マテリアルの直島製錬所に行った回を見ましたぞ。まあ、電解精錬はさすがにハードルが高いですかな」

「でんかいせいれんのは~どるにございますか?」


 唐突に始まった話に付いて行けず宗久が目を白黒させた。会話のペースを握ったと解釈した大作は気にせず話を進める。


「本日は日頃のお礼に南蛮吹きとか南蛮絞りとか呼ばれる技をお教えいたしましょう。やりかたは至って簡単。まずは銅と鉛を混ぜてドロドロに溶かします。少し冷ますと銅が固まって浮かびます。されど不思議なことに金銀は固まらず鉛に溶けたままにござります。後は簡単。灰吹法はご存じですな?」

「はいふきほう?」


 宗久が情けない顔をする。そこからかよ! 大作は頭を抱えたくなった。

 灰吹法が伝わったのは石見銀山が発見された天文二年(1533)ごろらしい。

 とは言え、このおっさんは武具にする鹿革の取り扱いが専門なんだっけ。ネットも無い時代に専門外の知識なんて知っている方がおかしい。


「灰吹法とは鉛に溶けた銀を取り出す技にございます。旧約聖書にも出てくる由緒正しい精錬法ですぞ。エレミヤ書六章二十九節とか三十節を読んで見られませ。ゼカリア書十三章九節とか」

「灰吹法なら儂も存じておりますぞ。生野銀山で目に致しました」


 宗久の脇に控えていた中年の男が口を挟む。こいつ、誰だっけ? 大作は記憶を辿るがさっぱり重い打線! まあ良いや。味方には違い無い。


「銅に含まれた金や銀が鉛に溶け込む。されど冷ますと銅だけが固まる。これがポイントにござります。この大佐、こと金に限り虚偽は一切申しませぬ。信じて下さりませ。南蛮吹きは、ありまぁ~す!」


 大作は目をギラギラさせながらスマホ画面を指し示す。何だか必死になればなるほど嘘っぽく聞こえるのは何でだろう。


「いまさら大佐様のお話を疑うなど滅相も御座いません。さすれば銅を買い集めて参れば宜しゅうございますか?」

「いやいや、それは止めた方が宜しかろう。実を申さば銀の値打ちはこの先、下がる一方にござります。南蛮人は今から五年前、南米ボリビアでポトシ銀山を見つけました。これより百五十年ほどの間に五百万貫目は採れるそうな。それに我らには金山がございます。銅から銀をチマチマ採っている暇はありませぬ。南蛮人に銅を売る折に『この銅には数多(あまた)の金銀が含まれておるぞ』と言って高値で売りつけてやれば宜しい。面倒なことは人に押し付けましょうぞ」


 いい加減に面倒臭くなってきた大作は吐き捨てるように言う。もうどうとでもなれ~ 大作は考えるのを止めた。

 いやいや、ここで諦めたら試合終了だ。何でも良いから宗久に恩を売らねば。閃いた!


「時に今井様。灰吹法や鉄砲玉で今後、鉛の需要は増すばかり。鉛の回収率アップに良い方法がござりますぞ。鉛を精錬する折には焼吹法とか申すやり方で方鉛鉱を焼いて硫黄分を飛ばしておりまするな。されど方鉛鉱を溶けた鉛に放り込んで、鉄を入れてやれば硫黄分を絡み取ることができるそうな。これを生吹法と申します。是非お試しあれ」

「は、はぁ……」


 生吹法が考案されたのは文政七年(1824)の細倉鉱山らしい。焼吹法だと五割くらいだった回収率が生吹法だと六割以上にもなったんだとか。こんな単純なことで回収率がニ割もアップするのだ。


 しかし、相変わらず宗久は呆けた顔をしている。どんな優れた技術も正しく理解されなければ宝の持ち腐れでしかない。

 考えてみれば初対面からしてアレだった。こいつに知識チートは相性が悪すぎるのかも知れん。大作は心の中のメモ帳に書き込んだ。

 これはもう、傷の浅いうちにギブアップした方が良いのかも知れん。


「ところで今井様。是が非でも手に入れて頂きたい物がござります。透き通った蛍石と硼砂を買い求めて下さりませ。金はいくらでもお支払い致します。それと、筑前国遠賀(おんが)郡には焚石とか燃石とか焼石などと呼ばれる燃える黒い石があるそうな。さほど値は張らぬでしょうから、まずは百貫目ほどお願い致します」

「心得ました。しかし燃える石とは珍しき物をお求めで。鍛冶にでもお使いにござりましょうや」


 こいつ結構鋭いぞ。中途半端に詮索されてライバルに情報が洩れるのは避けたいな。大作は警戒レベルを引き上げる。


「好奇心は猫も殺すと申しますぞ。今井様は物資を必要な時に動かして下されば良い。先々は山ほど入用になるやも知れませぬ故、向こうの商人と話を付けておいて下され。あとは…… 薩摩芋、じゃなかった。え~っと、何だっけ? そうそう、Patata dulce。ポルトガルやスペインの商人に声を掛けてみて下され。金ならいくらでもお支払致します。船一艘ほど手に入れて下されませ」

「前に言ってた甘いお芋ね! 早く食べたいわ」


 お園が目をキラキラさせながら横から口を挟む。どんだけ食い意地が張ってんだよ! 大作は心の中で突っ込むが決して顔には出さない。


「勝手に期待するのは良いけど、手に入らなかった時にがっかりしないでくれよ。史実では1594年にフィリピンから中国に伝わったって話だから、そっち経由は絶望的だ。インドネシアやパプアニューギニア経由に期待するしかないぞ」

「いんどねしあやぱぷあにゅ~ぎにあにござりまするな。心得ました。甘い芋とは心ときめきまする」


 スマホに表示された薩摩芋の画像を宗久が食い入るように見詰めている。

 こいつも食いしん坊キャラだったのかよ! 大作は心の中で顔を顰めた。


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