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巻ノ百八 葡萄前進? の巻

 大作たち一行が本丸から外に出ると空は薄曇りだった。すぐに雨が降る心配は無さそうだ。

 だが、ここで鉄砲を撃つには少し手狭かも知れない。全員でぞろぞろと二の丸に向かって移動する。


「越前守様。支度が整いましたらお呼び致します故、どこぞでお待ち下さいませ」

「いやいや、儂も支度とやらに付き合おうぞ。何を致すのじゃ?」


 範清が興味津々といった面持ちで詰め寄ってくる。


 このおっさん、暇なんだろうか? って言うか、鉄砲に興味あったんだ。

 だったらもう、撃たせるか? 大作は一瞬だけ迷う。

 だが、すぐに頭を振ってその考えを頭から追い払った。

 万が一にも怪我でもされたら大変だ。いや、怪我するのは勝手だが責任を追うのが嫌なのだ。


 そのためには虎丸を鉄砲インストラクターとして養成しなければ。そして、虎丸の責任において蒲生の人たちには勝手に鉄砲を撃ってもらおう。

 大作は頭をフル回転させて責任回避策を纏め上げる。


「それでは越前守様には事業場の最高責任者にあらせられる総括安全衛生管理者をお願い致します。安全管理者は虎丸殿で宜しゅうございますな。後で労働安全衛生法を良く読んで下さいませ。ところで皆さま方は3S運動をご存じですか?」

「さんえすうんどう?」


 ほぼ全員が首を傾げて口を揃える。またいつものが始まったのか、という顔のお園とは対照的だ。


「職場でもっとも大事なること。それは整理、整頓、清掃の三つにございます。これに清潔を加えて4S、躾を加えて5Sとも申します。日本電産では作法を加えて6Sとしておられます。蒲生様でも何か加えて7S運動にしては如何かな? 『さしすせそ』から始まる言葉をでしたら何でも結構ですぞ」

「さしすせそ、にございますか?」


 虎丸が怪訝な顔で鸚鵡返しする。こいつ話を理解できてるんだろうか? こんな子供が安全管理者なんて無理かも知れん。大作は急に不安になる。


「砂糖、塩、酢、醤油(せうゆ)、味噌。この五つは調味料の基礎にございます。この順で使えば良いと申しますぞ」

「せうゆ? 漿醤(しょうゆ)のことかしら? それより、味噌は『そ』から始まっていないわ。ずるくないかしら」


 お園が不満そうに口を尖らせる。こいつの食に対する拘りは半端無いな。大作は素直に感心する。


「まあ、こじつけだからな。浸透圧の関係で食材に出汁が染み込まなくなるから砂糖は最初に入れるなって聞いたことあるぞ。って言うか、そもそも和食で砂糖なんてあんまり使わないだろ」

「ふぅ~ん」


 そんな話をしているうちに二の丸に着いた。適当な射撃場を探して空堀に降りる。窪地なら何かあっても弾が危険なところに飛んで行くリスクが減らせる。

 ターゲットとの距離も五十メートルは取れそうだ。自衛隊でも二十五メートルで射撃訓練することもあるって聞いたことがある。問題無いだろう。


 やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、 ほめてやらねば、人は動かじ。

 本当なら手本を見せるところからスタートだ。でも、時間が勿体無い。いきなりやらせてみるか。大作は始める前からすでに退屈していた。


「さて、虎丸殿。まずは鉄砲を撃って見られませ。きっと楽しゅうございますぞ」

「某が撃つのでございますか?」


 虎丸が情けない顔をする。こいつ、鉄砲に興味はあるらしいけど積極性はイマイチみたいだな。

 いやいや、慎之介も初めは嫌がっていた。撃ってみれば楽しさも分かるだろう。大作は勝手に納得する。


「拙僧は、よちよち歩きの子供が鉄砲を撃っている動画を見たことがございますぞ。心配には及びませぬ。Let' try!」


 大作に背中を叩かれた虎丸は相変わらず情けない顔をしていた。




 大作は空堀の斜面に握り拳くらいの岩を置いて的にする。これだけ離れていれば破片が飛んでくる心配も無いだろう。


 とは言え、虎丸が的撃ちするのを横で見ていてもつまらない。

 ぶっちゃけ、鉄砲関連のイベントは飽き飽きだ。大作は何でも良いから面白いことがやりたくなる。


「虎丸殿がお一人で鉄砲を撃っても面白うござりませぬな。そうだ、閃いた! 鉄砲は六丁ござります故、お園たちも撃ってみたらどうだ? 射撃大会をやろう。天下一射撃大会だ」

「しゃげきたいかい?」

「腕比べみたいなもんだ。みんな鉄砲を撃つのが始めてなら条件はイーブンだろ。勝った奴には褒美を出すぞ。虎丸殿が勝たれたら鉄砲をもう一丁進呈いたしましょう」


 呆気に取られる全員を置き去りにして大作は強引に話を進める。


「鉄砲なんて簡単だぞ。まずはこの匙で火薬を計って筒先から入れるんだ。それから、この布切れを……」


 そう言いながら大作は丸い麻の布切れを口に入れて唾で湿らせた。YouTubeで髭のおじさんがやっていたのを見たことがある。


「まずぅ~~~ ぺっぺっぺ~」


 何とも形容し難い味だ。えぐ味って言うのか? 大作は思わず顔をしかめて唾を吐き出す。その様子を見たお園が眉を顰める。


 弾を込める前にそっと息を吹きかける。意味は分からんけどボーン・レガシーでアーロン・クロスがそんなことをやっていたような。いや、あれはマガジンを暖めてたのか?

 でも、クリント・イーストウッドが出てた映画で黒人のスナイパーがやってたような気もする。何てタイトルだっけ?


 それはそうと、ファミコンカセットの端子に息を吹き掛けるのは止めた方が良いんだっけ? 任天堂が公式で言ってたような言って無かったような。


「ちょっと湿らせた布を筒先に当てて弾を乗っける。槊杖(かるか)の先っぽの玉をハンマーみたいに使って叩き込め。それから棒で奥まで思いっ切り押し込む。そんで火蓋を開いて火皿に口薬を盛って火蓋を閉める。火挟に火縄を挟んで…… 火を点けるのを忘れてた」


 大作はバックパックからBIGライターを取り出して火縄に火を点ける。お園以外の全員から一斉に好奇の目が向けられた。大作は激しく後悔するが例に寄って手遅れだ。


「お園、零点規正するからスコアラーを頼む。後ろから望遠鏡で的を見て、弾がどこに当たったか教えてくれ」

「すこあら~? 分かったわ。的を見ていれば良いのね」


 お園は後ろに回るとしゃがみ込んで望遠鏡を覗く。真後ろだと万が一、筒の尻が抜けた時に危ない。少しだけ右に寄って貰う。


 大作は左手親指をペロッと舐めてから照星(フロントサイト)に擦り付ける。ヨーク軍曹って映画でゲイリー・クーパーがやっていたのだ。

 何の効果があるのかは忘れた。きっと見易くなるとか何かだろう。

 大作はスナイパーが大嫌いだ。とは言え、見てくれは大事なのだ。格好だけでもそれっぽくやらなければ。


 それはそうと、自衛隊員がフロントサイトを炙って煤を付けるのも見たことあるぞ。もしかしたら、そっちの方が格好良かったかも知れん。

 いやいや、撃つ度にフロントサイトを炙るのは面倒臭い。大作は考えるのを止めた。


 筵を敷いた上に腹這いになる。確実に当てようと思ったらやっぱ伏射(ねう)ちだ。

 そう言えば二脚(バイポッド)を付けようと思っていたのを忘れていた。帰ったら青左衛門に頼まなければ。

 何か代わりになる物は無いかな? もしもの時のために持ってきていた米の入った袋をライフルレストの代わりに置く。フォアグリップを乗せると丁度良い感じだ。


「息を大きく吸って、吐いて。適当なところで止める。引き金は優しく絞るように引く。チャールズ・ブロンソンが『荒野の七人』で言ってたぞ」

「ちゃ~るずぶろんそん?」

「う~ん、マ○ダムの人だよ。んじゃあ、撃つぞ。見ててくれ」


 轟音と同時に視界が白煙に包まれた。耳がキーンとしたので大作は思わず顔を顰める。耳栓するのを忘れていた。


「煙で何にも見えなかったわ。もしかしたら二寸くらい下に当たったんじゃないかしら」

「そ、そうか。二メートルくらい右後ろに立ってみてくれ」


 三匁五分の弾は直径十三ミリもあるし速度も音速くらいだ。真後ろからなら十分に見えるはずなんだけど。

 問題はこの煙だな。やはり無煙火薬を早期に開発せねば。大作は心の中のメモ帳に書き込んだ。


 数メートル先に落ちている麻布を拾ってくる。少し焦げ目が付いているが再利用できそうだ。

 でも、火薬で煤けたうえに地べたに落ちて砂まみれになっている。このボロ切れをもう一回舐める気はしない。仕方無いのでペットボトルの水を垂らして湿らせる。


 気を取り直して第二射の準備だ。とは言え、大作はもう完全に飽き飽きしてやる気が出ない。ちょっとでも気分を盛り上げる方法は無いのか? 閃いた!


「目標に高エネルギー反応! 何ですって! 第二射、急げ! パッチ交換! 再装填開始!」


 大作は突如として大声を上げる。お園を振り返ってニヤっと笑うと、お園も一瞬で意図を理解したらしい。にっこり微笑んで相槌を打った。


「陽電子、加速再開! まずいわ! 大佐!」

「盾が持たない! まだなの? あと十秒!」


 二人は阿吽の呼吸で寸劇を続ける。残りの面々は不思議そうな顔でそれを眺めていた。




 大作は数発の試射で理解した。ちゃんとした標的がなければ着弾を確認するのは不可能に近い。

 紙に同心円を描いた的を用意するしか無いのだろうか。五十メートル用のF的ってどれくらいの大きさなんだ。さっぱり分からん。

 いやいや、あれは伏せた人間を正面から見たところを模した標的じゃ無かったっけ? だったら三十センチ×五十センチの紙をそのまま使っても大丈夫だろう。

 四百八十枚で銭二百文くらいってことは五枚で銭二文ほどだ。そこまでケチケチしなくても良いだろう。


「越前守様、的にする紙を何枚か頂きたいのですが。宜しゅうございますか?」

「紙を的にすると申すか? 虎丸、取って参れ」

「恐れ入ります、虎丸殿。真ん中に印を入れたいので筆と墨もお願い致します」 

「畏まりました」


 一礼すると虎丸が一目散に駆けて行った。

 こんなことで本丸まで往復させることになるとは。何でちゃんと考えておかなかったんだろう。大作はほんのちょっとだけ後悔した。




 待つこと暫し。すぐに小脇に紙や筆記具を抱えた虎丸が息を切らせて戻ってくる。

 本丸じゃなくて二の丸から持ってきたらしい。


 大作は筵の上に紙を置いてF的っぽい絵を描いた。さすがにこんな物に著作権の問題は無いだろう。

 全員に興味津々の視線を向けられた大作は柄にもなく緊張する。


「これはいったい何を描いたの?」

「うつ伏せになった人を正面から見たところだな」

「なんで寝そべっているのかしら。どこか具合でも悪いの?」


 お園が不思議そうな顔をしながら呟く。よく見ると全員が怪訝な顔をしている。


「そりゃあ、突っ立ってるより伏せた方が面積…… 見た目の大きさが小さいだろ? 的が小さい方が弾に当たり難い。銃撃戦で頭を低くするのは基本中の基本なんだ」

()りとても、戦場(いくさば)で兵が寝そべっておっては戦にならぬぞ」


 範清が苦笑いしながら口を挟む。大作は小馬鹿にされてるような気がしてイラっとした。


「先ほど拙僧がうつ伏せで鉄砲を撃ったのをご覧になりませんでしたか? ドイツの警官も拳銃を撃つときは伏せ撃ちだって聞いたことがございますぞ。騙されたと思ってお試し下され」

「敵も味方も寝そべって遠くから鉄砲を撃ち合うじゃと? そは真か。俄には信じがたい話じゃな」


 こんな話をいきなり信じろと言う方が無理だったのだろうか。大作は何だかどうでも良くなってくる。


「歩兵戦術において最も重要なる物。それは射撃(ファイア)(アンド)運動(ムーブメント)にござります。そして戦闘中の移動は匍匐(ほふく)が原則です。一番ポピュラーな第四匍匐をお目に掛けましょう」


 大作はそう言うと両手で鉄砲を掲げながら赤ちゃんがハイハイするように適当な匍匐前進をする。


「どうや! 俺の華麗な匍匐前進は?」


 最高のドヤ顔をしながら振り返るとお園やくノ一、範清や虎丸が冷たい目で見下ろしていた。大作は喩えようもなく惨めな気持ちで一杯になる。

 ぐぬぬ。何とかしてこの屈辱を晴らせないだろうか。そうだ、閃いた!


「お前らもやってみろ。射撃大会は止めて匍匐前進大会にしよう」

「え~~~! そんなことしたら着物が汚れるわよ」

「文句を言わずにやれよ! 勝った奴には豪華賞品だぞ。On your mark, get set, go!」


 渋々といった顔でくノ一たちが腹這いになる。だが、嫌々やっている割には凄い速さだ。あっと言う間に大作を追い越して行った。

 あれ、お園はどうしたんだろう? 振り返るとお園が冷たい目で睨んでいる。


「私は巫女頭領よ。そんなことするつもりは無いわ」


 まあ、気持ちは分からんでも無い。真面目にやってもくノ一に勝てっこなさそうだし。とは言え、言い出しっぺが途中で止めるわけにも行かない。

 大作は匍匐前進でくノ一の後を追いかけた。






「それで、ほふくって何なの?」


 砂まみれの着物を(はた)きながら戻ってきた大作に半笑いでお園が尋ねる。

 ちなみに優勝はぶっちぎりでサツキだった。速さの秘密はあの巨乳なんだろうか? 普通に考えると邪魔にしかならないはずなんだが。

 それはともかく、何か豪華賞品を用意しなければ。大作は心の中のメモ帳に書き込んだ。


「こんな字だな。匍は這う、匐は腹這う。どっちも似たような意味だろ。こういう二音節の名詞を連綿語(れんめんご)って言うんだ」

「何だか葡萄(ぶどう)みたいね」


 タカラ○ミーのせ○せいに書かれた文字を見ながらお園が首を傾げる。


「あれは当て字だけどな。ギリシャ語のbotrus(ボトルス)を中国人が音訳したとか何とか。それはそうと、葡萄を知ってるんだ」

「私は甲斐の生まれなのよ。行基菩薩さまが勝沼においでになった折に薬師如来さまが夢枕にお立ちになったそうね」


 大作は記憶の糸をたぐる。葡萄って鎌倉初期に中国から入ってきたんだっけ? 輸送手段が無いので地元でしか食べられていなかったとか何とか。

 生鮮食品を輸送しようと思ったら『エデンの東』みたいに鉄道が必須だ。どうでも良いけど監督のエリア・カザンって赤狩り(レッドパージ)の時に仲間を売った酷い奴だよな。いや、本当にどうでも良いけど。


 だが待って欲しい。生食でなきゃダメですか? 加工食品じゃダメなんでしょうか? 干し葡萄とかジャムとかあるだろう。

 それに、葡萄から取れる酒石酸で酒石酸カリウムナトリウムを作れる。こいつは圧電素子として使えるからクリスタルイヤホンやクリスタルマイクが作れるぞ。

 ガラスを銀メッキする時の還元剤にも使える。反射望遠鏡を作るには必須のキーアイテムだ。

 たしか、水捌けと日当たりさえ良ければあまり土壌は選ばないはず。でも、病気や害虫に弱いんだっけ。

 そう言えば、バラは病気に弱いから葡萄畑の端っこに植えておけば良いってクイズ番組で言ってたっけ。バラといえば……


「ところで大佐殿、鉄砲はどうなったのじゃ?」


 範清の声に大作は我に帰る。もう時間も押してきた。そろそろ切り上げなければ。


「鉄砲? あんなの飾りです。偉い人にはそれが分からんのですよ」

「お、おぅ……」


 大作は半笑いを浮かべながら一刀両断に切り捨てる。唖然とする範清は放置だ。


「虎丸殿、本日お教えしたこと。ゆめゆめお忘れなきように。まずは、二十七秒の限秒射で立姿から二脚を使って伏撃ち五発をF的に当てることを目指して下さいませ」

「精進いたします!」


 大作の適当なアドバイスに虎丸が元気良く返事をする。でも、自動小銃でも無いのにどうやって二十七秒で五発撃つつもりなんだろう。

 大作は突っ込むか迷ったが止めておいた。


「越前守様。先ほど拙僧は鉄砲は飾りと申しましたな。されど、戦においては飾りも大事なる物にございます。祁答院の鍛冶屋が作りし鉄砲。今なら期間限定セール中にて一丁、銭四貫九百九十九文にてお売り致します。一回のご注文が百丁を超えた場合は銭三貫九百九十九文にディスカウント致しますぞ。送料は勿論、当方が負担致します」


 価格の下二桁が99円だと88円に比べて8%売上が高くなる。大作はそんな話をネットで見かけたことを思い出す。

 もしかして、この知識だけでもビジネスでも大成功できるんじゃないだろうか。


 それはそうと、儲けはこれくらいで良いんだろうか? さっぱり分からん。

 まあ、加治木城や岩剣城を巡る戦いでは蒲生は重要な同盟国だ。商売抜きでこいつらの軍備増強には協力せねば。


 そうそう、大事なことを忘れていた。後片付けをしていた大作は範清に向き直ると揉み手をしながら口を開く。


「ところで、祁答院の鉄砲にはご購入後一年間の保証が付いておりますぞ。また、製造終了後七年間は有償にて修理を承ります。新製品が発売された折りには高価下取りも行っております。鉄砲をご用命の際には是非とも祁答院にお願い致します。お見積もり無料ですので気軽にお声がけ下され」


 これまでのいい加減さを取り返すかのように大作は熱心に鉄砲を売り込む。

 大作が荷物を纏め始めているのに気付いた範清が驚いた顔をした。


「もう帰られるのか? 今宵も馳走を振る舞おうと思っておったのじゃが」

「それは次の機会にお願い致します。しからば、これにて。See you again!」


 大作は手をひらひらさせながらにこやかに微笑む。

 たぶんこのおっさんとは何度も再会することになるだろう。

 とは言え、See you later.は馴れ馴れしすぎるだろう。

 まあ、美味いタダ飯を食わせてくれる有り難いお方だ。再会したいという気持ちを込めてSee you again.で良いだろう。




 竜ヶ城の城門を出るのを待っていたようにお園が口を開く。


「せっかく馳走を振る舞うって申されてたのに。何で帰っちゃうの?」

「どんなご馳走も毎日だと飽きるだろ。それに、図々しい奴だと思われるのは損だぞ」


 恨めしそうな顔をするお園の手を引きながら大作は蒲生を後にした。


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