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巻ノ百六 飛べ!フェニックス の巻

 蒲生城本丸の座敷に通された大作たちの前に、いや、後ろに現れたのは蒲生(かもう)の十八代当主越前守(えちぜんのかみ)範清(のりきよ)だった。

 と言うことは茂清はすでに亡くなっているんだろうか。

 いやいや、もしかするとナウ○カみたいに病床の父に代わって国を治めているのかもしれない。

 でも、越前守って名乗ったぞ。死んではいないけど当主の座を譲られたって可能性もあるんだろうか。さっぱり分からん。


 大作は少しでも情報を得ようと範清を観察する。

 先ほど着ていた素襖(すおう)から早着替えしてきたらしい。

 何だか良く分からない葉っぱの上に十六菊が乗っかった家紋がところ狭しと描かれている。こういう着物を大紋って言うんだっけ。

 麻の生地は地味な茶色に染められている。だが、白抜きで描かれた家紋がけばけばしい。

 何だか自己顕示欲の強そうな感じだ。でも、若くして当主の座を継いだとしたらこれくらい自己アピールしていかないと家臣が着いて来ないのかも知れん。


 それはそうと茂清がすでに死んでいるとして死因は何だったんだろう。四十六歳で老衰は無いだろうから病気か事故だろうか。

 でも、父上は何で死にましたかなんて聞きにくいな。

 混乱する大作を尻目に範清は脇を素通りして畳の上に腰を下ろす。


「大佐殿と申されたかな? 許されよ。戯れが過ぎたようじゃ」


 いまだ呆然とする大作の目を真正面から見据えて越前守は再びにっこり笑った。

 お園に脇腹を突っつかれて大作は我に返る。そう言えば、驚きのあまり挨拶も忘れていた。


「越前守様のご尊顔を拝し奉り恐悦至極に存じまする。知らぬこととは申せ、先ほどは大変なご無礼を働き、お詫びのしようもござりませぬ。お許し下さりませ」

「そう(むつか)れるな。この話は仕舞いじゃ。それで、今日(けふ)の用向きは何じゃ。旨い夕餉を食いに参ったわけでもあるまいて」


 そう言うと越前守は再び悪戯っぽい笑顔を浮かべた。

 このおっさん、どこまでこのネタで引っ張る気だ。下手したら死ぬまでからかわれそうだな。大作は頭を抱えたくなる。


「もうご勘弁下さりませ。先ほども申し上げた通り此度、祁答院にて鉄砲を作りました。恐れながら、その一丁を献上仕りまする。つまらぬ物ですがお納め下さいませ」

「ほほう。それは気前の良いことじゃな。見返りに何を欲しておる?」


 越前守は笑顔を絶やさない。だが、目付きがほんの少し鋭くなったのを大作は見逃さなかった。

 そりゃあタダより高い物は無いって言うもんな。とは言え、大作は特に何も欲していないのだ。


 最終回だと思って山ヶ野を出たのは良いけど、帰るに帰れないなんて言えない。

 ましてや、時間潰しに新キャラ開拓していただなんて絶対に知られてはならん。

 何でも良いから面白いネタは無いのか? 大作は頭をフル回転させるが咄嗟のことで何も出て来ない。

 大作の慌て振りを不審に思ったのだろうか。範清の目付きが鋭さを増す。


「どうなされた? 何を慌てておるのじゃ?」


 マジでヤバい。とりあえず何でも良いから言っちゃえ。


「越前守様は蒲生に空軍を作るおつもりはございませぬか?」

「くうぐん?」


 若い殿様が目を点にして鸚鵡返しする。がっくり肩を落とすお園の小さなため息が聞こえた。




 世界で最初に軍事目的で空を利用したのはフランス軍だと言われている。

 モンゴルフィエ兄弟の熱気球から十一年後の1794年のことだ。

 フルーリュスの戦いにおいてナポレオンは偵察目的で直径十メートルほどの水素気球を利用した。

 風船爆弾とほぼ同じ大きさの気球は二人の兵士を乗せてベルギーの空に浮かんだのだ。


 水素気球は熱気球と違って浮かべっぱなしにできる。二ヶ月はガスの補充なしで浮かんでいたそうだ。

 とは言え、十八世紀に大量の水素を発生させるには尋常ならざる手間が掛かったらしい。

 まずは一万二千個の煉瓦(レンガ)を組み上げて水素発生設備の構築を行う。数週間掛かるとのことだ。

 そして二トンの鉄と硫酸、九トンの水を水蒸気にする燃料も必要になる。ガスの充填には丸二日を要した。


 とてもじゃないが使い物にならん。ナポレオンも持て余したのだろう。1799年1月に気球部隊は解散され、気球は民間に払い下げられた。

 だが待って欲しい。水素を使う理由は何があるんでしょうか? 熱気球じゃダメなんでしょうか?




「空軍とは空の軍にございます。聞くところよれば入来院様は水軍をお作りになるそうな。蒲生様も何か新しいことを初めてみては如何にございますか? It's never too late to learn.」


 大作はタカラ○ミーのせ○せいに空軍と書いて範清の方に向けた。


(から)の軍とな。まるで禅問答じゃな。空城(くうじょう)(けい)の如き物か?」

「いやいや、空にございます。もしもし、そこのお殿様。地面を歩く暮らしに疲れておられませぬか。たまには拙僧らと一緒に空から蒲生を眺めてみるのと言うはどうじゃろう。楽しゅうございますぞ~」

「和尚は天狗の術でも使えると申すのか?」


 範清の顔から笑みが消え、目つきが鋭くなる。

 ちょっとふざけ過ぎたか。大作は念のため、くノ一にアイコンタクトを取る。サツキと桜が黙って頷く。楓だか紅葉だかは首を傾げていた。

 って言うか、合言葉のバ○スを伝えるのを忘れていたぞ。まあ、あいつらもプロのくノ一だ。高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応してくれるだろう。


「巨大な風船? 三国時代に諸葛亮が孔明灯という物を作ったそうな。大きな紙袋の下で焚火を起こし、暖めた空気を入れてやれば浮かび上がるのでございます。百聞は一見に如かず。実証試験機を作ってご覧にいれましょう。なるべく薄手の紙と糊、竹籤(たけひご)、それと油を少々ご用意下さいませ」

「聞いておったな、虎丸。急ぎ持って参れ」

「御意」


 範清の脇に控えていた小姓みたいな少年が足早に部屋を出て行った。

 それを見送りながら大作は少し羨ましく思う。俺にもああいう使いっ走りがいれば良いのに。くノ一じゃダメだ。やっぱ、藤吉郎を連れてくれば良かったか。




 大作はせ○せいに絵を描きながらスマホの電卓で計算する。

 この時代も和紙の標準サイズは二尺×三尺なんだろうか。三匁の紙だと重さは十一グラムくらい。四枚貼り合わせて天井を塞ぐと…… 五十三グラムくらいか?

 一帖の紙は二、三十文くらいするはず。人足の日当くらいだ。これを二枚使うことになる。

 遊びで使うには贅沢だがシャボン玉遊びに百文使ったのに比べればマシだろう。


「今度はいったい何を作るの?」


 お園が首を傾げながらせ○せいを覗き込む。大作は縦長で上が広がった四角い袋の絵を描いた。


「紙を貼り合わせて大きな袋を作るんだ。シャルルの法則は教えたよな? 理想気体の体積は絶対温度に比例するとか何とか。熱い空気は冷たい空気より軽いから浮かんで飛んで行くんだ」

「本当はキャヴェンディッシュが先に発見してたけど死ぬまで発表しなかったのよね。他にもクーロンの法則やオームの法則も発見していたのよ」


 船旅で物理の勉強したときに教えたんだっけ。無駄蘊蓄を横取りされた気がした大作はちょっと悲しくなるが顔には出さない。

 代わりに何かもっともらしいことを言って威厳を保っておかなければ。


「常温の空気は一立方メートル当たり1.2キロくらいの重さだ。一石当たり六十匁くらいだな。紙は種類にもよるけど摂氏二百度くらいなら燃えない。摂氏百度くらいに加熱すれば1キロを切るくらいまで軽くなるからその差が浮力だ」

「くうきとやらは軽いのでございますな。そのような物で人が空に浮かぶなど、俄かには信じられませぬ」


 それまで黙って話を聞いていた桜が口を挟む。その表情はとっても疑わしそうだ。


「そりゃあ『空気のように軽い』なんて言葉があるくらいだ。でも、本当に空気より軽い物があったらみんな飛んでっちまうけどな。そんな軽い物で人を浮かせようと思ったら大きな気球が必要になる。普通の熱気球は二千立方メートルくらいの体積があって浮力は五百キロほどだな。とは言え、そんな贅沢は言ってられん。零戦みたいに限界ギリギリまで小型軽量化しなきゃならんな」


 とりあえず例によってフェルミ推定だ。

 三匁の紙を五枚重ねに蒟蒻糊で縦横に張り合わせるとして一平方メートル当たり二百グラムくらいだろうか。

 直径十メートルの球の表面積は三百十四平方メートルだから重量は六十キロほど。

 体積は五百二十四立方メートルだから浮力は百三十キロくらい。気球の重さを引くと七十キロほど残る。昔の人は小柄だし、体重の軽い人を探せば何とでもなるだろう。

 大作は旧ソ連の戦車兵に身長制限があったって話を思い出す。蒲生空軍の飛行士に体重制限があっても良いじゃないか。


「一気圧で摂氏二十五度の空気の熱容量は一立方メートル当り約三百十カロリーって書いてあるな。一グラムのガソリンの燃焼熱は約十キロカロリーか。ってことは一グラムのガソリンで一立方メートルの空気を三十度ほど加熱できる。五百立方メートルの空気を九十度加熱しようと思ったら千五百グラムのガソリンに相当する熱量を短時間に得る必要がある。のんびりやってたら表面からどんどん冷えてしまうからな。まあ、これは本番で人を乗せる時の話だ。今日は焚火でも何でも良い」


 そんな話をしている間にも必要な物が次々と集まってくる。

 先ほど虎丸と呼ばれた小姓が水引を掛けた一束の紙を差し出した。


「お待たせいたしました。遠慮なくお使い下さいませ」


 紙の大きさは二三判より小さかった。竪紙(たてがみ)って言う奴だろうか。三十センチ×五十センチくらいの大きさだ。ってことは四百八十枚ってことか。

 なるべく薄い物とのリクエスト通り、半紙みたいに薄い紙だ。まあ、手に入るなら古新聞でも何でも良かったんだけど。


「これは杉原紙にございますな。二十枚ばかり使わせて頂きます。まあ、人を浮かばせるような気球を作ろうと思ったら、この百倍は入用になりますが」


 目を丸くして驚く少年を見て大作はほくそ笑む。そりゃそうか。一束が銭二百文としても百倍だと銭二十貫文にもなる。

 木材パルプを使った低コストな製紙を先行させた方が良いかも知れん。


「まずは縦横に二枚ずつ繋げて一面にする。これを四方にして天井を塞ぐ。下側の縁に竹籤を貼り付ける。中央に熱源を置く。切り屑の紙を油に浸してやれば燃えるだろう。そんじゃあ、手分けしてさっさと作っちゃおう」

「手分けって言われても何をすれば良いのかちっとも分からないわ」

「俺が一つ作るから同じ物を三人が作れば四つになるだろ」


 手分けするほどの作業でも無いのだが大作は全員参加に拘る。この機会を利用して共同作業によるコミュニケーションやチームワークの重要性を理解して欲しかったからだ。

 とは言え、驚くほど簡単な作業だ。あっと言う間に終わってしまった。もうちょっと手間暇を掛けないと達成感が薄いな。大作は頭を捻る。

 そうだ、閃いた!


「何か絵を描こう。模様が無いとつまらんだろ。墨と筆をお借りできますかな?」

「はい、ただいま」


 すぐに虎丸が硯と筆を持ってきてくれた。

 大作は丁寧に礼を言って筆を受け取る。そして、羽の生えたバベルの塔みたいな例の紋章を描いた。


「何なの、これは?」

「君の一族はそんなことも忘れてしまったのかね? みんなも遠慮するな。好きな絵を描いて良いぞ。三分間待ってやる」

「さんぷんかん?」

「良いからさっさと描けよ!」


 そう言われても、みんな何を描いて良いのか分からず迷っているようだ。しょうがない。大作はアドバイスしてやることにする。


「サツキと桜はそれぞれの花を描いたらどうだ。楓と紅葉は葉っぱで良いだろ。お園は、お園は……」

「何を描いたら良いの?」

「お前のシンボルマークって何だろな? そうだ! お園ちゃん、きみは泣いている顔より笑った顔のほうがかわいいぞ。顔付満月でも描いといたらどうだ」


 大作はせ○せいに写研の記号BA-90を微妙にアレンジして似てるような似てないような絵を描いて見せる。

 そもそもこの記号は占星術の記号だったらしい。それに文字フォントには一般的に著作権は発生しない。

 だが、万が一にも写研に訴えられたりしたら厄介だ。鼻の向きや目の形も変えてしまう。


「これって人の顔よね。葦手絵(あしでえ)みたいだわ」

「ん~!? なんのことかな フフフ……」


 そのまま真似するのが嫌だったのだろうか。お園がアレンジを加えたので顔付満月とは似ても似つかぬ物ができあがった。


「何だか、へのへのもへじみたいだぞ」

「誰なのそれ?」

「誰って言われてもな。特定のモデルはいないんじゃね? へのへのもへじの歌って何曲もあるけど、どれも著作権の関係で歌えないか」


 大作はへのへのもへじっが江戸時代中期に生まれたって話を思い出す。だったら知らなくても無理は無いか。


「何やら楽し気じゃな。儂にも何か描かせてはくれまいか?」

「うわらば!」


 突如として背中から声を掛けられて大作はその場で飛び上がる。振り返ると範清が例の悪戯っぽい笑顔を浮かべていた。

 大作から筆を渡された範清はしばらく迷った後に風船の天辺に蒲生の家紋を描く。

 そんなところに描いたら飛ばした時に下から見えないじゃん。大作は心の中で突っ込むが口には出さなかった。




 本丸の脇にある狭い空き地で焚き火を起こす。大作は『たきび』を歌おうかと思ったが作詞の巽聖歌が1973年没なので涙をのんで諦めた。

 遠くに飛んで行かないよう紐で繋いで端っこをお園に持たせる。焚火の上に風船をかざす。熱風を孕んだ風船が手の中で徐々に軽くなってきた。


 そろろそ良いだろう。大作は風船下部の竹籤に油を染ませた紙屑を巻き付けて火を付ける。

 できれば針金があれば良かったのだが。まあ、燃焼するのは紙の表面から揮発した油だ。数分間くらいなら竹籤でも持つだろう。

 こういう時は根拠なき楽観主義だ。ところで、こいつの名前を決めていなかったな。


「Three, Two, One. Lift off of the hot air balloon Phoenix! 飛べ! フェニックス」


 大作が手を放すと風船はふわりと浮かび上がった。


「浮かんだわ!」

「真じゃ、飛びおったぞ!」

「上がれ、上がれ!」


 ギャラリーから次々に歓声が上がる。女性陣はもちろん、範清や虎丸までもが手を叩いて喜んでいるようだ。

 大作は内心では浮力が足りているのかドキドキだった。無事に上昇して行く風船を見上げながらほっと胸を撫で下ろす。

 あとは油が燃え尽きるまで適当に時間を潰せば美味い夕飯が食べられるはずだ。


 ところで気球か風船の歌って無いんだろうか。中学の合唱コンクールで歌った『気球にのってどこまでも』はどうだろう?

 作詞の東龍男(あづまたつお)って人はWikipediaに項目が無い。どうやら死後五十年は経って無いっぽい。

 風船の歌も一杯あるけど著作権切れの曲はちょっと思い付かない。でも、無いとなると猛烈に何か歌いたいぞ。

 しょうが無い。アルプス一万尺にオリジナルの歌詞を付けて歌おう。


「風船ふわふわ 蒲生の空を 雲の彼方に 飛んで行く ヘイ

 ランラララ ラララ ランラララ ラララ ランララララララ ランランランランラ~ン」

「オリジナルの歌詞を作ったのね! 大佐」


 お園が大きな目をキラキラ輝かせながら振り返る。大作は自信に満ち溢れたドヤ顔で返す。

 だが、その瞬間に突風が吹きつけて風船が大きく揺れた。


「やばっ! お園、高度が落ちてる。マックパワー!」

「まっくぱわ~?!」


 大作の無茶振りにお園が素っ頓狂な声を上げる。

 マックパワーというのはかつてアスキーから発売されていたパソコン雑誌…… とは何の関係も無い。エンジン出力を最大にしろと言うことだ。

 だが、油を染ませた紙を燃やしているだけの風船にスロットルなんて付いていない。大作の指示を実現する手段は皆無なのだ。


 必死の声援も虚しく、完全にアンコントロールとなった風船はバランスを崩して横倒しになる。

 そして、風船の下部に引火して火の玉となって墜落した。よりにもよって本丸の壁に!

 薄くて大きな紙がめらめらと紅蓮の炎を上げて激しく燃える。その様子はまるでレイクハースト海軍飛行場で爆発炎上したヒンデンブルク号だ。


 そう言えば、1975年公開のヒンデンブルクって映画があったっけ。こんな時だと言うのに大作は妄想世界に現実逃避する。

 監督はロバート・ワイズ。主演のジョージ・C・スコットが演じるフランツ・リッター大佐が格好良かったなあ。彼はパットン大戦車軍団でアカデミー主演男優賞を受賞したのに辞退したんだっけ。博士の異常な愛情のタージドソン将軍役では……


「なにをボヤボヤしとる。火を消せ!」


 範清の大声で大作の意識が現実世界に引き戻される。って言うか、これってモウ○将軍のセリフじゃん!

 そうか、このおっさんもラピュタ仲間なんだ。ちょっと待て。ふざけてる場合じゃ無いぞ。これって本気でヤバくね?

 現住建造物等放火罪は死刑又は無期若しくは五年以上の懲役じゃないか。法定刑が殺人と並ぶ重大犯罪だぞ。

 いやいやいや、故意に火を付けようとしているんじゃない。これは失火だ。他人の非現住建造物を失火させた場合は『五十万円以下の罰金』になる。

 ただし、これは刑事罰の話だ。民法上の賠償責任も当然発生するから何千万円掛かるか分からんぞ。どうすれバイン……


「水じゃ、水を汲んで参れ! 急ぐのじゃ!」


 パニックでフリーズしかけた大作の思考がリセットされる。

 大作は大慌てでバックパックからペットボトルを取り出した。そして震える手でキャップを開けて水を口に含むと霧吹きのように吹きかける。

 一度では消えなかったが二度三度と繰り返すうちにみるみる火勢が弱まった。危機は去ったようだ。


 その場にへなへなと座り込んだ大作は全員の鋭い視線を感じて消えてしまいたくなった。


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