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最初の試練②


放課後になり、場所は変わって僕の部屋。


僕は勉強机に座って、静奈ちゃんは僕のベッドに座って自分の勉強をしている。


「空君できた?」


「うーん、まだもう少し…」


僕が今やっているのは数学の因数分解だ。


中学の頃とは全然違う。どうやったらこんな形にできるんだ。


四苦八苦していると静奈ちゃんが僕の隣まで来た。


「因数分解はね、うまくペアを見つけるの。


この問題ならこれとこれ。よーく見ると似ているでしょ?」


確かに似ているような…


でもここからどうしたらいいんだ?


「このあとはね、こーなってあーなってこうなるってわけ。」


静奈ちゃんはてきとうなことを言って僕をからかってきた。


「いや、それじゃわからないよ。」


「ごめんなさい。」


またクスクス笑う。


静奈ちゃんの笑い方はいつもかわいい。


なんていうか、漫画ででくるヒロインみたいな。


そのあと英語や理科の科目を教えてもらい、気がついたら夜の8時だった。


「そらー。もう20時よー。そろそろ静奈ちゃん帰してあげなさーい。」



僕は「わかってるよー!」と返事をした。


「もうこんな時間だったのね。気づかなかった。」


静奈ちゃんは荷物を片付け始めた。


この機会だ。僕ははずっと気になってたことを聞いてみることにした。


「ねえ静奈ちゃん。」


「なーに?」


「あの、ずっと気になってたんだけど、どうしてそんなに僕にかまってくれるの?」


静奈ちゃんは僕の言葉に困惑した様子だった。

「なんでって言われても…。空君はあたしに話しかけられるのイヤなの?」


「イヤってわけじゃないよ!むしろありがたいし、外で僕に優しくしてくれるの静奈ちゃんだけだから嬉しいし…。


でも、僕がイジメられるのを自分のせいにすることはないんじゃないかな…って、思って…」


静奈はため息をつき、僕の目を見つめてきた。


その目は僕の動悸を乱すのに十二分な魅力だった。


「実はあたしも気になることがあったの。」


「気になること…?僕に?」


なんだろ…


僕なんか長所すらないならなんにも気になることなんてないと思うんだけどな…。


「なんで、空君は…」


空君は…?僕がなんなんだ?


「空君はなんで、あたしのこと静奈“ちゃん”って呼ぶの?」


……え?


「そんなこと?」


拍子抜けしちゃった。


なんでって言われても幼馴染だからじゃないのかな。


それか僕に名前で呼ばれるの嫌だったのかな…



「ごめん。下の名前で呼ばれるの嫌だった?」


「違う違う。そうじゃなくて、あたし達もう高校生だよ?高校生にもなってちゃん付けはなんか幼い感じがするっていうか、なんていうか…」


静奈ちゃんは顔を赤らめ、モジモジし始めた。


「じゃあなんて呼べばいい?静奈さん?清田さん?」


静奈ちゃんはボソっとなにか言ったが、声が小さすぎて聞き取れなかった。


「ごめん。もう一回言って。」







「静奈がいい」



え…


呼び捨てでいいんですか?


「せ、静奈ちゃんがいいんなら僕は別に…」


僕の顔は今茹でダコよりも赤くなっているだろう。自分でも顔が熱いのがよくわかる。


おまけに恥ずかしすぎて前を見れない。


「じ、じゃあ!明日からはあたしのこと、“静奈”って呼んでね。」


静奈ちゃんは名前の部分を強調して言った。



「う、うん。呼ばせていただきます。」



静奈。静奈。静奈。


よ、呼べるかな…


心の中で唱えるだけで心臓がばくばくする。


「あ!じゃあ、あたしもう帰るね!今日はお疲れ様!じゃあ!」



そう言って静奈ちゃんは僕の家をあとにした。







ほんとに大丈夫かな、名前。



それより、僕の質問はぐらかせてない?


気付くのが遅かった。

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