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落ちこぼれ
それはまさに僕のためにある言葉だ。
僕、大地空は何をやっても失敗するダメな男の子だ。
テストはいつも最下位。
走る速さも最下位。
泳げなくて虫が怖くて物覚えも悪い。
去年は中学生だったから、義務教育だったからテストで最下位になっても遅刻をしても学校に通い続けることができた。
でも今年からは違う。高校生だ。
テストで赤点をとり続ければ留年だってある。
寝坊をしすぎると素行の点数がわるくなる。
本当に高校を卒業できるのか心配になってきた。
でもそんな僕の気持ちとは裏腹に、
中学校でもなんとかなったんだ。高校もなんとかなるだろ。
と思っている自分もいたりする。
「おーい大地ー。」
そんなことを考えていると後ろから誰かが声をかけてきた。
でもこの声は僕にとって悪魔の声と同じくらい聞きたくない声だ。
「おまえ、今日は寝坊しなかったんだな。」
声をかけてきた人物は菅田剛。
大きな体格に似合って性格も凶暴。喧嘩っ早い上に喧嘩も強い。
なんで神様はこんな奴に力を与えたんだ。
そういつも思うよ。
「今日はたまたま朝起きたんだ。」
僕が俯きながら答えても、興味なさそうに
ふーん。
としか言わない。それどころか
「じゃあこれ頼むな。」
そう言って差し出してきたのは部活動のカバン。
菅田は野球部に所属していて、四番にも選ばれるほどの実力だ。
だが僕を見かけるといつも自分のカバンをもたせたり、用事を押し付けたり、ひどいときは宿題までやらされたこともある。
小学生じゃないんだから自分のことは自分でやれ。
そう言えたらなあ。
なんていつも思うけど、結局は殴られるのが怖いから言うことをきいてしまう。小学生のころからこの関係は変わらない。
歩きだしてからもお互い何も話さない。
そうして学校に着く手前でカバンをひったくり一人そそくさと校舎に入っていく。
菅田がいなくなったのを確認してため息をつくと、今度は別の人物から声をかけられた。
「今日も菅田君の荷物もってあげたのね。」
振り返ると黒くて長い髪をポニーテールにしてまとめている女の子が爽やかな笑顔で立っていた。
彼女は清田静奈。
こんな僕に唯一優しくしてくれる他人だ。
彼女とは幼稚園から幼馴染で、親同士も仲がいいため度々お互いの家に遊びに行くほどだ。
幼稚園の頃からイジメられっ子だった僕をいつも助けてくれたんだ。
今もそうだけど。
「今日は早いのね。明日は雨かしら?」
彼女はクスクス笑いながら言う。
「そんなに遅刻しないよ。」
僕が朝早くきたら雨が降るほど、僕は遅刻していない。
中学校の頃はこんなこと言われても自分で納得してしまうほどだったが、今は違う。ちゃんと週3回は朝からきているんだ。
「見つけるのが遅くてごめんね。
これからはもうちょっと早く家を出ることにするわ。」
「いいよ。そんな…」
彼女はこのとうりすごく心優しい。おまけに清楚で美人
他の男子達がほっとくはずがない。
それでも静奈ちゃんの浮ついた話は聞いたことがない。
浮ついた話どころか僕以外の仲のいい男友達すら見たことがない。
不思議でしょうがない。
「さあ行こ。あと10分で予鈴が鳴っちゃう。」
彼女は空いている方の手で僕の手を掴み歩きだした。
ここまで読んでネコ型ロボットが出てくる話に似ているなんて思った君。
言っておくが僕はメガネをしているがあのメガネの少年ほどだめではないぞ。