日没の時刻
ふと思いついたもの。作者は寂しい人間です。
光は空気の散乱で
ただ、長い周期の波だけが
山の稜線を駆け抜ける
雲は茜色に色づき
空は夏の暑さにも冬の寒さにも気にかけず
芽吹き前の終わりを彩る
川やうみは黒く焦げ付き
水は深くその闇に押し込めようと
水面は堰を越えて溢れ出す
内よりあふれたその闇は
街を沈めて光を吸い込み
水底は大きな力で留められる
そうして光は消えうせて
舞台は幕を閉じるとともに
人は静かに目を閉じる
閉じた瞼の裏側は
まばゆい蒼に満ち溢れ
枝先からは光の雨が降り注ぐ
閉じた心の奥底は
銀にきらめく砂粒の中
一人の案山子は風とともに踊りだす
こんなわずかなひと時は
その日の最後を切り抜いて
光は最期に沈みゆく
読んでいただきありがとうございます。
毎日、日が入る度に寂しさを感じます。それがどうも『人の死』という最期の後の寂しさに似ているように思います。明日にもいるのではないか?いや、目の前でいなくなったのだ、と。明日はあるのに無くなってしまったかのような感覚が、きれいな夕焼けに感じられるのです。