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その頃南野朱里は職員室にいる成瀬隆司へ声をかけた。
「成瀬先生。占い同好会の顧問の件。了承します」
「本当か。それはよかった。早速会長の木村君に紹介するよ」
成瀬は嬉しそうに校内放送で会長を呼び出す。
「三年一組の木村クリス君。職員室に来てください」
その校内放送から数分後、パンチパーマが特徴的な男子高校生が職員室にやってきた。
「成瀬先生。何ですか。やっと水晶に神が舞い降りてきそうだったのに」
「紹介する。新しく占い同好会の顧問になる南野朱里先生だ」
「この先生が。運気が良さそうだから顧問にしてやってもいい。だけど南野先生は生徒たちに人気ですよね。そんな人を顧問にしたら、占いに興味がない素人が部員になる。それは占いを冒涜することになる。顧問にするなとは言わないけど、新入部員は選別するよ」
木村クリスの態度に成瀬は激怒する。
「君はまだそんなことを言うのか。これはチャンスだ。彼女の人気を利用すれば、同好会から部に昇格することができる。内の学校は部員数が十人以上集めれば部として昇格できるシステムなんだ」
「部員の過半数以上が占いに興味がない素人の占い部なんて必要ない。先生は来年のために新入部員を確保したいだけなんでしょう。来年からは僕のようなスポンサーがいなくなるからね。占い部に昇格することで学校というスポンサーを付けようとする」
「私は顧問として占い同好会のことを思って彼女へ顧問にならないかと依頼した。それに部に昇格すればスポンサーが二つになる。そうすればいろいろなことができると思わないか」
「とにかく新入部員は選別する。先生は黙って僕のやり方を見ていればいい。全ては占い通りに上手くいく」
木村クリスが怒りながら職員室を退室すると成瀬が南野に謝った。
「すまなかったな。見苦しいところを見せて。木村君は水晶占いで販売戦略を生み出した大企業の御曹司。占い同好会を設立した張本人だ。彼が活動資金を調達しなかったら、占い同好会は同好会として成立しないと言っても過言ではない。あと一人で部へ昇格するというところであんなことがあって、退部者が続出。占い部誕生が遠のいてしまった」
「あんなことというのは」
「忘れてくれ。私の口から言えないことだ」
占い同好会は何かしらの秘密を抱えているのではないかと南野朱里は感じた。
南野朱里が占い同好会の顧問になったという噂は瞬く間に学校中の南野朱里へ恋する男子高校生たちに届く。
一時限目の学校案内が終了した休憩時間男子高校生たちは中山の机の回りへ集める。
「聞いたか。あかりさんが占い同好会の顧問になったらしいぜ。どうする」
「決まっているだろう。占い同好会に入部する。そうすればあかりさんと一緒にいる時間が増えるだろう」
中山の意見に反対する者はいなかった。南野朱里ファンクラブのメンバーたちは全員占い同好会へ入部届を提出する。