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占い同好会殺人事件  作者: 山本正純
第三章 大分県警捜査一課の調書
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 完全に追い詰められた土田はポケットから女子高生の写真を取り出した。

「美鈴。終わったよ。あの人の犯罪計画は完璧だったのに」

「どうして。木村部長と火野先輩を殺したの」

 堂本からの問い。それをきっかけに土田は供述を始める。

「木村部長と火野先輩だけではない。成瀬先生も許せなかった」

「動機は形岡美鈴さんの自殺」

 倉崎の呟きを聞き土田は首を縦に振る。

「そうですよ。木村部長と火野先輩は美鈴の占いの才能を憎んで嫌がらせをしていたのさ。その嫌がらせがエスカレートして美鈴は自殺した。その原因を作ったあの二人が許せなかった。彼女の自殺の原因は占い同好会内部の嫌がらせだったのに、木村部長は父親の圧力でその事実を握りつぶした。さらに当時同好会内部で嫌がらせが行われていたことを知っている退部した部員たちを口封じで殺害。僕はあの娘たちのために罪人を処刑しただけです。あの二人は占い部昇格に反対していた。占い部昇格は彼女の夢でした。その夢を妨害して彼女を自殺まで追い詰めたあの二人が許せなかったのですよ」


 ある冬の日。田ノ浦海岸の砂浜を形岡美鈴と土田明介は歩いていた。

「土田君。今年の四月に妹が天王洲高校に入学するの。離婚したから苗字が違うけどね。妹の家は高校の学費を払うだけで精一杯みたい。だから占い部に昇格させて学校の予算が貰いたいんだよね。そうすれば妹が家の家計を気にせず部活として占いが楽しめるでしょう」

「美鈴は本当に妹思いですね」

「うん。だから占い部昇格に反対する木村部長と火野先輩を説得しようと考えているんだ」

「応援しますよ」

「ありがとう。土田君」

 形岡美鈴は笑顔になった。その翌日から木村と火野による嫌がらせが始まるとは知らずに。



「土田君。なぜ私を殺そうと思った。嫌がらせのことに気が付かなかった私が許せなかったのか。だったら謝る」

 成瀬が頭を下げると、土田は首を横に振る。

「最初は成瀬先生を殺したいとは思わなかった。でも僕は聞いてしまったのですよ。木村部長とあなたが職員室で口論するところを」

 

 あの時成瀬は木村との口論の末あの言葉を口にした。

「私は顧問として占い同好会のことを思って彼女へ顧問にならないかと依頼した。それに部に昇格すればスポンサーが二つになる。そうすればいろいろなことができると思わないか」


 土田は頬を緩ませてから供述を続ける。

「スポンサーが二つに増えるという言葉が許せなかったんです。出資しているのは木村部長だけではないのに」

「部員から徴収した部費をスポンサーとは呼ばないだろう。そんなことで私を殺そうと思ったのか」

「それならどうして木村部長はスポンサーとして大金を出資しているのですか。成瀬先生。あなたは部員から徴収した部費を横領していたのではありませんか。それが事実だとしたら美鈴の妹さんがかわいそう。だから殺そうと思ったんです。疑わしきは罰せよ」

 供述が終わり有安は挙手する。

「もうすぐ大分県警が浦内島に到着する。その前に聞かせてくれ。なぜ形岡さんの妹である氷川希さんをスケープゴートにするような発言をしたのか」

「南野先生が悪いんです。先生が予備の通信機器を持っていたから大分県警が予想より早く到着することになりました。捕まりたくない一心で彼女に罪を擦り付けるような発言をしたわけです。ごめんなさい」

 間もなくして浦内島に大分県警の刑事たちが到着し土田は自首した。

 こうして浦内島を舞台にした連続殺人は幕を閉じた。


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