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占い同好会殺人事件  作者: 山本正純
第三章 大分県警捜査一課の調書
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 その推理を聞き、堂本が指摘する。

「それは不可能よ。あの時私たちは自由な席順で席に座った。あのメッセージに仕掛けがあったとしてもどこに火野先輩が座るのかが分からないからトリックなんて実行できないのでは」

「堂本先輩。それが可能なんだ。そのヒントは金森先輩が教えてくれた」

 有安は金森の顔を見ながら推理を続ける。

「金森先輩は氷川さんと口論したよな。その時金森先輩は氷川さんの占いがマジシャンズセレクトではないかと指摘した。亡霊風水は一見選択肢が有るように見せて、実際は条件に該当する一つの選択肢に誘導した。食堂に置かれた十枚のメッセージ。全てに毒物を塗れば全員の指に毒物を付着させることができる。つまり毒物は缶ジュースの混入されたわけではなく、火野先輩の指に付着していたんだ。火野先輩は缶ジュースを飲むとき、飲み口を親指で押さえ人差し指でプルタブを起こす。その動作で飲み口に毒物が付着し、缶の中にあるジュースで毒物を流せば、アリバイがあっても犯行は可能」


「有安君。食事をすれば全員が亡くなるのではないか」

「成瀬先生。そこにも心理トリックが隠されている。第一の殺人事件の現場を調理場にすれば、現場を保存するために、調理場の出入りを自粛する。そうすることで食事の時間を遅らせ、この場にいる八人全員が一人一回以上トイレに行くよう仕向けた。ある程度の時間があれば、誰でもトイレに行きたくなる。そうして手を洗わせれば、指に付着した毒物が洗い流される」

 土田は沈黙するしかなかった。有安の推理はまだ続く。

「そして火野先輩が殺害された現場に残された亡霊風水からのメッセージ。あれだけなぜか封筒に入れられていた。おそらくあのメッセージは犯行声明ではなく、火野先輩を苦しめるためのもの。土田先輩。あなたは火野先輩の部屋のドア隙間から封筒に入れたメッセージを入れておき、メッセージを読んだ火野先輩を情緒不安定に陥れようとした。あなたは心理トリックを巧みに使い俺たちを誘導することでアリバイを手に入れ、不可能犯罪を実行した」

 

 土田は有安の推理に追い詰められながら、切り札を掲示する。

「有安君。忘れていますね。木村部長が殺害された第一の事件。あの現場は密室だった。そして僕たちには全員アリバイがあり、犯行は不可能」

「第一の殺人。そのトリックも解明済みだ。密室にしたのは木村部長個人。木村部長自らが内側から鍵をかけ、密室という状況を利用した恐ろしい殺害トリックを実行した。そのトリックの痕跡は現場に残っていた。万年筆と螺旋模様が書かれたメモ用紙の遺留品。木村部長は何かを書こうと思って試し書きをしたのだろう。その万年筆に毒ガス発生装置を仕掛けて殺害。その下準備としてあなたは木村部長の筆記用具に細工をしたのではないか。この館に到着したときあなたは木村部長の荷物を部屋まで運んだ。その時に一定時間使用すれば壊れるよう細工したんだろう。そして調理場に用意した万年筆を使わせた。言訳はできないだろう。このトリックはあなたにしかできないから」


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