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大分県大分市にある大分県立天王州高校は平凡な高校である。別に進学校でもなければ、部活動を精力的にやっている学校でもない。
四月九日。この日有安虎太郎と倉崎優香はこの高校に入学する。
有安虎太郎が黒色の学ランを身に着け、自宅を出ると、玄関の傍に紺色のセーラー服を着た倉崎優香が立っていた。
「優香。待っていたのか」
「うん。同じ高校だから一緒に行っても悪くないかと思って。一緒にクラス発表を確認したいから」
「初日から一緒に通学か。今日は入学式だから親の車で行けばいいだろう」
「お父さんとお母さんは仕事で忙しくて入学式に出席できないみたいだから」
「それなら仕方ない」
こうして二人は一緒に大分県立天王州高校に向かう。二人が通う高校は歩いて十五分の距離がある。その距離を二人は会話しながら歩いた。
そして十五分後、二人は大分県立天王州高校の校舎に到着する。そこにある掲示板の前には多くの学生たちが集まっている。
二人は人ごみを掻き分け掲示板の前に到着する。その掲示板には三枚の紙が貼られている。それぞれの紙には一年生のクラス名簿が表示されている。
有安虎太郎がその名簿を凝視していると、倉崎優香が名簿を指さした。
「あったよ。一年三組に私と虎太郎の名前が」
その声を聞き虎太郎は確認する。そこには確かに有安虎太郎という名前が記されていた。
そして有安虎太郎は一年三組の名簿から見覚えがある名前を発見する。
「田辺秀一もいるのか。知っているだろう。中学で一緒のクラスだった」
「ムードメーカーの田辺くんもいるんだ。それは楽しいクラスになるね」
倉崎優香が微笑む。その後で二人は一年三組のクラスに移動する。
教室のドアを開けると、数人の生徒たちがクラスに集まっていた。その多くは男子生徒。
一か所に集まった男子生徒たちの中心にいたのは田辺秀一だった。
二人は一か所に集まった集団に合流して、
田辺秀一の話に耳を貸す。
「聞いてくれ。このクラスの担任がかなりかわいいらしい。貧乳なのが少し残念だけどな」
その話を聞き多くの男子生徒たちが声を出す。
「マジかよ」
「名前だ。名前を教えろ。それと顔写真を見せてくれ」
「とりあえずメアドをゲットしようぜ」
大騒ぎを始めようとする男子生徒たちに田辺秀一は咳払いする。
「落ち着け。顔写真は入手できなかった。年齢は二十二歳。パトリシア大学に留学経験がある新人英語教師」
「顔写真がないのに、なぜ貧乳だと分かった」
「今日の午前六時から校門前で張り込みしたら接触できた。俺の兄貴が去年この学校を卒業したから、教師陣全員の顔写真を見せてもらったんだ。その教師陣の顔を全員記憶しておけば、噂のかわいらしい新人教師の顔が分かるということ。かわいらしい新人教師が赴任してくるというのは去年卒業した兄貴からの情報ね。張り込みを続けて三十分。フルフェイスのヘルメットを被った黒色のスーツの女が大型バイクに跨って俺に話かけてきた」