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午前十時五分。席順が決まり、占い同好会の実戦形式の練習が始まる。
有安虎太郎は九番の席に座る。その前にある四番の席には金森月夜が座る。金森はノートを開き、ハート形のアクセサリーが取り付けられたボールペンを右手で握る。
「有安君。よろしくお願いします」
有安と金森が握手を交わすと、金森は早速占いを始める。
「有安君は昨日どんな夢を見ましたか」
「料理中にお皿を割る。簡単に言えばそんな夢でした」
金森は有安の言葉を聞きながらキーワードをノートに書き込む。
「もう少し詳しく聞きます。お皿は故意に割りましたか」
「いいえ。突然割れました」
「次に料理は食べきれないほどできましたか」
「一人前でした」
「それでは料理は何を作っていたのでしょうか」
「ハンバーグです」
「ハンバーグは黒焦げになりましたか」
「いいえ。おいしく焼けました」
「分かりました。計画通りに物事が上手くいっているが、何の前触れもなく物事が急変する。だから冷静にこれから起こることに対処する必要がある。これが有安君の占いの結果です」
金森は占いの結果を伝えると、その結果をノートに記録する。有安が周囲を見渡すと、木村クリス以外の二年生と三年生は金森と同じボールペンを持ってノートに占いの結果を書き込んでいた。
「お揃いだな。木村部長以外の四人の先輩は全員同じボールペンを持っているだろう」
「あれは占い同好会メンバーの証として作ったオリジナルデザインのボールペンです。あれを作ろうと言い出したのは、ある人で成瀬先生と木村部長も持っています。まあ木村部長は、そのボールペンを使わないみたいですけど」
午前十一時二十分。木村クリスは遊戯室から出ていき、調理場に籠る。そこで彼は昼食に使う食材を冷蔵庫から取り出した。
それ以降木村クリスは九人と会うことがなかった。
午前十一時二十五分。五回目の占いロールプレイが始まった。だがそこに木村クリスの姿がない。
そのことに火野が激怒する。
「木村。練習に遅刻するとは何様のつもりだ」
「火野先輩。落ち着いてください。きっとトイレに籠っているんですよ」
土田が宥めるように言うと火野は首を横に振る。
「それはない。さっきの休憩の時にトイレに行ったけど木村はいなかった。洋式トイレのドアが全て開いていたから間違いない」
火野の言葉を聞き土田は何も言えなくなった。それを見計らった成瀬は手を挙げる。
「木村君は遅れてくるはずだ。彼の占いに対する情熱は誰にも負けない。だから練習をサボるはずがない。有安君は八番の席に座って待機してください」
有安虎太郎は成瀬の指示に従い八番の席に座り、遊戯室内で他の占い師による占いを見学する。




