9話 ママのいない日
桜の季節が2回すぎたころ、パパさんの写真の横に、ママの写真が置かれたんだ。
その少し前くらいから、夜になるとパパさんがボクのお部屋に来てくれてたよ。
「モカのママはがんばってるよ。すごくがんばってるんだぞ」って、ボクをおひざに乗せて話してくれた。
パパさんがボクの頭をなでながら話してると、ポタッて…小雨が頭に落ちたんだ。
最初はほんとに雨だと思ったけど、パパさんの涙だった。
ボクはよくわからないのに、でもなんとなく全部わかっちゃって…。
そのころのことは、あんまりよく覚えてないんだ。
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ある夜のことなんだ。
ボクはパパさんたちのお部屋で、パパさんのおひざの上でぽかぽかしてたの。
そしたらパパさんがね、ママさんとお話ししてたんだ。
なんだか難しいお仕事のお話しみたいで、これからもっと大変になるかもしれないって。
夜にお仕事に行ったり、朝に行ったりすることもあるんだって。
パパさんもママさんもたいへんそうで、ボクはパパさんのおひざの上でじっとしてた。
ボク、いい子にしてパパさんをじゃましないようにしてたんだ。
だって、パパさんがんばってるから。ボクもがんばらなきゃって思ったの。
でも…
ある日からボク、ご飯が食べれなくなっちゃったんだ。
食べなきゃって思うのに、お口に入れると気持ち悪くなっちゃうの。
ごめんね、パパさん、ママさん。
ご飯がイヤなんじゃないんだよ。
2人はボクの大事なかぞく。
愛されてるの、ちゃんと知ってるんだよ。
なのに…どうしてだろうね、ボクの体、へんな感じなんだ。
そんな時だったよ。
ガラスのところでお外を見てたら、パパさんととっくんがお話ししてたの。
今日は2人ともお休みみたいで、ゆっくりお話ししてたよ。
お話しが終わって2人がお家に戻ってしばらくしたら、とっくんがみっちゃんとままうさんを連れてボクのお家にきたんだ。
みっちゃんがボクのリードを見せながら
「モカちゃん、お散歩いこー!」って。
久しぶりのお散歩だった。
みっちゃんたちといっしょに川のほとりをゆっくり歩いたよ。
みっちゃんはかわいい葉っぱを見つけるたびに「どうぞ」ってボクにくれるんだ。
ままうさんはリードを持ってくれて、あの日ママと歩いたのと同じくらいの、やさしい速さで歩いてくれた。
にこにこしながら、ずっとボクに合わせてくれたよ。
とっくんはみっちゃんを抱っこしたり、ボクのこともひょいって抱っこしてくれたりして、なんだかゆうえんちみたいだった。
ボク、すっごく楽しかった。
ちょびっとだけ、ママと歩いた日みたいで…ぽかぽかしたんだ。
お家に帰ったら、みっちゃんたちは「バイバーイ」って帰っていったよ。
ボクはね、その日のごはんをいっぱい食べられたの。
そしたらパパさんもママさんも、ほっとしたお顔してた。
よかった…って。ボクもなんだか胸がぽかぽかしたよ。
たくさん遊んだからね、眠たくなっちゃって、その日はぐっすり寝たんだ。




