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犬の話  作者: SHIRATORI TOSHIHIDE


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8話 ボクのがまん


 ある朝ね、いつもみたいにママじゃなくて、パパさんがお散歩の迎えにきたの。

「モカ、行くぞ」って。

パパさんもやさしくて、久しぶりに遠くまで歩けてボクはうれしかったけど…

ママ、どうしちゃったんだろう、ってずっと思ってた。


帰ったらママがもうお出かけの準備をしてたんだ。

いつもより大きい荷物をいっぱい持っていて、ボクが帰ってくるのを待ってたみたいだった。


「モカ、ママはちょっとの間、先生のところに行ってくるね。

桜の季節には帰ってきて、お散歩に行こうね」


ママはそう言って、パパさんの車に乗りこんだんだ。

ボクはよくわからなくて、ただ見てることしかできなかったよ。

あ、ピンクのお花は"桜"って言うんだね。


 寒い季節が過ぎて、大好きな桜の季節が過ぎても、

あっつい季節も、オレンジの季節も、

また寒い雪の季節がきても……

ママは帰ってこなかったんだ。


ボクはお留守番が多くなっちゃったけど、

パパさんもママさんも、いそがしいのに

ボクのお散歩の時間をできるだけ作ってくれてたよ。


ボク、いっぱいがまんしてた。

さみしくて、胸がぎゅうってなるけど、がまんしてた。


だってパパさんもママさんも、

お仕事でつかれてるのに

ボクのご飯を用意してくれて、

朝も夜もお散歩につれてってくれて、

お休みの日には一緒におでかけもしてくれるんだよ。


そんなふたりに、さみしいお顔なんて見せられないよね。

ボク、がんばらなきゃって思ってたんだ。


そんな時にみっちゃんたちはね、ボクのさみしい毎日をいっぱい楽しくしてくれたんだ。


ボクがガラスのところでお外を見てると、みっちゃんが見つけてくれて、いつもガラスタッチしてくれたよ。

朝のお散歩にボクが出かけるとき、とっくんもお仕事に行くみたいで、お外で会うと必ずなでなでしてくれたんだ。やさしいんだよ、とっくん。


ままうさんはママさんとよくお話ししてて、みっちゃんといっしょにボクのお家に遊びにきてくれたりもしたの。

みっちゃんの砂場でいっしょに遊んだり、おやつを分けてもらったり、なんだか「家族みたいだなぁ」って思うくらい、にぎやかで楽しかった。


ママがいないさみしい時間も、みっちゃんたちのおかげで、ボクはたくさん笑えたんだ。


それで…それで…


…で、やっぱりママは帰ってこなかった。

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