3話 ガラスのところで
ちょっと前のことなんだ。
ボクはいつもの、お外が見えるガラスのところでお家の前を見てたの。
そしたら、道路をはさんだお向かいさんに車が止まって、おじさんたちが何かお話ししてたんだ。
ボクがママのお家に来てから、お向かいさんにはずーっと誰も住んでなかったのに。
その日から、ときどき車が止まるようになったんだ。
何日かしたら、大きなトラックも来て、いよいよ工事が始まったの。
工事が始まる前の日には、男の人と女の人がママのところへ来たよ。
玄関でママと何かお話ししてたけど、ボクは眠くてぜんぜん聞いてなかった。
なんだか、ポカポカして気持ちよかったんだもん。
工事のお兄さんたちが、一生けんめいカンカンやってるのを見るのが楽しくて、ボクはよくガラスのところに行きたいってママにお願いしてたんだ。
あの日ママのところに来た、あの男の人と女の人も、ときどき工事を見に来てたよ。
きっと、この人たちがここに住むんだろうなって、ボクはなんとなく思ってた。
それから、ちっちゃい女の子も一緒に来ることがあったの。
ボクみたいに、女の人に抱っこされながら工事を見てたよ。
そしたらね、その抱っこされてた女の子と目が合ったんだ。
女の子はボクのほうを指さして、女の人に何か言ってたみたい。
女の人もこっちを見て、2人でニコニコ楽しそうに笑ってたよ。
それからはね、女の子が来るたびにボクを見つけて、女の人の肩ごしに手をふってくれるようになったんだ。
ボクもなんだかうれしくて、仲よくなれそうな気がして、ついガラスをカリカリしちゃった。
でもね、少ししたらボクの苦手な寒い季節が来ちゃったの。
お外を見たいんだけど、寒いのはイヤだから、ボクはお部屋にいる時間が多くなったんだ。
工事の音もだんだん少なくなってきて、女の子たちにもあんまり会わなくなっちゃった。
それから、大好きなピンクのお花の季節がきたころ、またママとたくさんお散歩に行けるようになったんだ。
毎日いっしょに、公園まできれいなピンクを見に行ったよ。
お向かいさんの工事も終わったみたいで、「そろそろあの子が来るのかな?」って思うと、ちょっとワクワクしてた。
そんなある日、ボクがガラスのところでお外を見ていたら、女の子と女の人が手をつないで歩いてきたんだ。
そしてガラスの前で女の子がしゃがんで、
「こんにちは! みっちゃんでーす!」
って言ったの。
ボクはびっくりしたけど、久しぶりに会えてうれしくて、思わずカリカリしちゃった。




