13話 ありがとう
最近はね、お散歩に行くのも少なくなったんだ。
ううん、みんなが忙しいんじゃないよ。
ボクのほうがすぐ疲れちゃって、歩けなくて、抱っこしてもらうことが多くなっただけ。
だから今は、お家の中でみんなとゆっくりすごすのがいちばんの楽しみなんだ。
……でもね、ボク、よくわからないけど、なんとなく全部わかっちゃった。
ママのところに、もうすぐ行くんだなって。
大好きなママに会える。
またいっしょになれる。
ずっと、ずーっと。
みっちゃんたちや、パパさんやママさんと離れるのはとってもつらいよ。
でも、きっとみんな、ボクがママのところに行けるのは“幸せ”って思ってくれるはず。
だってボク、ママのこと、ほんとにだいすきだから。
ーーボクのお話しを聞いてくれてありがとう。
ちょっと眠くなっちゃったからボクは寝るね。
でもね、もしボクが寝てるあいだに、ママが「おいで」って呼んだら、ボクはそっちに行くんだと思う。
ママのおひざはあったかくて、ふわふわで、世界でいちばん安心できるから。
みっちゃん、ままうさん、とっくん。
パパさんとママさん。
ボクのことをぎゅーっと愛してくれてありがとうね。
ボク、みんなのことが大好きだよ。ほんとだよ。
もし朝になって、ボクがまだスヤスヤしてても、心配しなくていいからね。
ボクはちゃんとママに会えてるよ。
ぜったいに、ぜったいに、しあわせだから。
おやすみ。
またね。
みんなに愛されるモカのお話。
語り部のモカは、ただの犬かもしれません。
けれど、誰よりも家族のことを見て、感じて、覚えて、生きようとしていました。
大切な人を待つ時間も、大好きな人に出会う瞬間も、その全部をまっすぐに受け止める姿は、きっとどこかで人よりも人らしかったのかもしれません。
離れてしまうことや、別れがあることを描きながらも、
「それでも残るあたたかさ」
「誰かが誰かを思う気持ち」
それがちゃんと伝われば、それだけで十分だと思っています。
モカの世界はとても短くて、とてもやわらかい時間でした。
その時間に少しだけ付き合ってくださったあなたに、心からありがとうを。
そしてもし、あなたのそばにも、名前を呼ぶとしっぽをふってくれる存在がいるなら、どうか今日は少しだけ長めに、なでてあげてくださいね。




