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『天地開闢』  作者: 鶸鳥
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『天地開闢』


『天地開闢』

  「神様も褒めてほしいんじゃないかな」

       ーー〈新月〉


危険度:低

出現頻度:激低


 材質不明の、金属製の像。高さ9.5メートル、重さ54キログラム。

 この怪異は、ある日突然「夭折した天才芸術家の作品」として現れ、その世界の著名な美術館に必ず七日間限定で展示される。尚、作者の名前は毎回変化するが、「『天地開闢』以外の有名な作品を作っていないこと」、「書籍やインターネット等で調べても情報が一切出てこないこと」が共通している。実際には存在しない架空の芸術家ではないかと推測されているが、その世界の住人がこのことについて疑問を抱くことはない。

 この作品を見た〈生命の樹〉メンバーのコメントを以下に記す。

「あれだな。薄っぺらい地面を沢山の動物が支えてる図。あれに似てる」

「太陽の塔EXみたいな感じ」

「何かこんなおとぎ話無かったっけ? なんとかの音楽隊みたいな……」

「べろべろに酔っ払って、高く水を噴き上げている噴水を見たらこう見えるのかもしれない」

 展示期間の内六日間は何事もないが、七日目に必ず展示がとりやめになる。

 中止の理由は様々だが一番多いのが盗難。直近十件の内七件が盗難であるとされている。

 しかし警察機関の捜査もむなしく犯人は絶対に捕まらない。そのままだんだんと人々の記憶から忘れ去られ、その世界は正常な状態に戻る。

 実際には盗まれたのではなく、「七日目に必ず消失する」怪異なのではないかと推測されている。



「こんなでかいの、どーやって盗むんですかね」

「過去の出現時の監視カメラの映像によると、日付が変わった途端突然消失したとか」

「盗まれるわけじゃないってことですか!?」

「しー、声が大きい」

「あっすいません……」

「ちなみに〈運命の輪〉はこれ見て『自己顕示欲』って言ったとか」

「どういうことですかそれ」

「俺もわからん……。ああ、六花はそれ聞いて『神は六日かけて世界を創り、七日目に休んだ、か』ってコメントしてた」

「どういうことですかそれ??」

「って訊いたら、『神様も褒めてほしいんじゃないかな』だって」

「やっぱりわかんないんですけど」

「うん……。ちなみに、カイはこれ何に見える?」

「……えーっと、形容しがたいんですけど。ものすごくべろべろに酔っ払った状態で、ものすごく高く水を噴き上げる噴水を見たらこう見えるかもしれないなって思いました」

「成程ね。記録しておく」

「えっ今のクソ適当な感想報告書に載せるんですか」

「大丈夫大丈夫俺の感想も適当だから。他の芸術作品使って例えちゃったし」

「だからって俺の感想が許されるわけでは」

「ーーああ、いたいた二人とも。あっちの猫の絵がかわいかったよ」

「うーんエクストラマイペース」

「……六花、好きな芸術家は?」

「エッシャーとホガース」

「……この作品見てどう思う?」

「ジャンルの違う芸術作品を比較するのがナンセンスなのは百も承知だけれど、僕は『滝』の方が好ましいと思うし、それにーー」

「それに?」

「それに、『こんな凄いの創ったよ! 見て見て!』って思うのは勝手だけど、それをいちいち世界中の人巻き込んでやるその自己顕示欲が気に食わない。自慢したいほど凄いのかどうかーーわかんないし。小説家になろうでやってくれよ」


この作品に具体的なモデルはありません、念のため。

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