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ウザいけどカワイイ後輩と四六時中ダベる日々。  作者: かるたっくす
2年・春――後輩、ときどき押しかけ新妻的な日々
9/57

9.祖母からの迷惑電話



「というわけで、先輩のお隣さんになったわけです。めでたしめでたし」


 証明終了(Q.E.D.)――。

 そう言わんばかりに話を切り上げ、再び白飯を頬張り始める志賀。

 ……って、ちょっと待て。


「なにが『というわけ』なんだ。まだなんの説明もしてないだろ」

「いえいえ。場面も切り替わったわけですし、いい感じの回想シーンでも入ったと思ってもらえれば」

「お前にはなにが見えているんだ……」


 結局のところ、真面目に話す気はゼロだったらしい。


「ぱくぱく……あ、最後のから揚げ、カレー味ですよカレー! お総菜ってこんなのも売ってるんですねぇ、結構美味しかったですっ」

「……志賀、なにか俺に言うべきことがあるんじゃないか?」

「はい? あ、ごちそうさまでした」

「違う。というかなに普通に完食してんだ。飯まで綺麗にかっさらいやがって」

「大丈夫ですっ。先輩の分もちゃーんと残してますから」


 炊飯器を開いて中を見せてくる志賀。

 ジャーには一口分の白飯がこぢんまりと残されていた。


「OK、お前の中で、俺の胃袋がスズメ並みに思われていることは理解した」

「スズメってお米食べますっけ?」

「知らん。この際だから飯の件はいったん置いておく。話が一向に進められないからな」

「そんなにあたしがお隣さんになった理由が知りたいんですか? 別になんでもいいじゃないですか。たまたま一人暮らしを始めて、それでたまたま先輩と同じアパート、隣の部屋になったってことで」


 そんな偶然があるものか。絶対になにか思惑があるはず……。

 などと勘繰っていると、スマホがバイブレーション。

 見ると、父方の祖母からの電話だった。珍しいな、あのばあさんが電話なんて。


『もしもし、空太くうたかい? 一人暮らしは上手くいっとるかね』

「ああ……昨日までは多少なりとも自信があったんだけどな。たった今、とんでもない障害と対峙しているところだ」

『相変わらず小難しい言葉ばっか使うねあんたは。誰に似たんだか』

「安否確認だけなら後日にしてくれないか。今はとにかく取り込み中で――」

『そうそう、言い忘れとったんやけどね。志賀さん家のお孫さんがまた、あんたと同じ学校に通うってたい』

「は? 志賀……?」


 一瞬なんのことか分からなかった。

 が、その独特過ぎる苗字を聞いた瞬間、ある人物の姿が頭をよぎった。

 ……そういえば昔、ばあさんの家の近所にイギリス人のおばあさんが住んでたな。

 確かその人の苗字が、志賀だった気が……。


『男ん子の方はあんたと同い年で、バスケばやっとらしたど? そっちは学校の寮って話ばってん、一つ下の女ん子の方は一人暮らししたかって家ば出て。心配しとらしたけど、じゃあ空太と同じアパートやったらどうかって私が言っておいてね。それで進学の許可ば出さしたとよ』

「待ってくれ。なんで俺と同じアパートならOKってことになるんだ」

『あんた、志賀さん家のお孫さんと仲よかとやろ? それなら安心って、志賀さんも納得さしてね』

「いや、仲いいというか、俺が知ってるのは兄貴の方で――」

『なんかあったら空太ば頼れって言ってあるけん。ちゃんと面倒見てやってね。そいじゃね』


 ぶつり、と通話を切られる。

 相変わらず、よぼよぼな喋りのくせしてなんたる強引さか。


「先輩? 今の、誰からの電話だったんですか?」

「……ただの迷惑電話だ。主にお前絡みだけどな」


 嫌味たっぷりに言うと、志賀は「はい?」と首を傾げていた。

 俺は再び溜め息をついた。肺の中が空っぽになるくらいの長さのやつを。



日間に続き、週間ランキングへのランクインもありがとうございます~

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