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ウザいけどカワイイ後輩と四六時中ダベる日々。  作者: かるたっくす
2年・春――後輩、ときどき押しかけ新妻的な日々
8/57

8.被害総額410円(概算)



「お邪魔しまーす……って、なんだか殺風景な部屋ですね。ある意味想像通りですけど」


 俺がドアを開けるなり、俺より先にずかずかと中に入っていく志賀。

 どうでもいいが、この部屋に親と男友達以外を入れたのは初めてのことだ。

 まあ、入れたというよりは侵入されたという方が適切だが。


「テレビもゲームもないんですね。先輩ってあれですか。ミリタリストってやつですか」

「誰か軍国主義者か。それを言うならミニマリストだ」

「さすが先輩。博識ですね」

「おだてるのはいいから出てってくれないか。これから晩飯なんだ」

「あ、奇遇ですね。あたしもこれからなんです」


 にこにこ笑うだけで出ていく気配がまったく感じられない。

 ひとまず買ってきた総菜などが入ったビニール袋を居間のテーブルに置き、台所で着替えを済ませることにした。志賀から見えないよう配慮しつつ。


「これ、先輩の晩ご飯ですか?」

「一応な」

「へえ……え、から揚げとバナナ? なんですかこの食い合わせ。肉食ゴリラ?」

「物騒な種族を作るな。から揚げが今晩のおかずで、バナナは明日の朝食用に買っただけだ。今から食べるわけじゃない」

「はあ、なるほほ。はむはむ」


 はむはむ? なんだそのオノマトペ。

 着替えを済ませて居間に戻ると、志賀がバナナを頬張っていた。


「おい、なにしてる」

「え? 見ての通り、バナナ食べてます」

「それは分かる。訊きたいのは、なんで断りもなく勝手に食べてるのかってことだ」

「お腹空いてたんですよぉ。階段の途中で力尽きて倒れるくらいに」


 一本丸々食べ終わると、志賀は指先をぺろぺろと舐め、


「うんっ、先輩のバナナ、おいしかったです。さすがは完全栄養食」

「不法侵入に盗み食いか。厚かましさもここまで来ると犯罪だぞ」

「まあまあ固いことは言わず。あたしと先輩の仲じゃないですか」

「今日会ったばかりだろ……」

「このから揚げもおいしそうですね。半額シールなのがなんとなく先輩らしいですけど。ご飯はないんですか? あ、向こうに炊飯器ありますね。ということは、茶碗やお皿はあの辺りに――」


 あれよあれよという間に志賀が晩飯に必要なものを見つけ出し、気づけば食卓が出来上がっていた。

 同じアパートで間取りも一緒だから、どこになにが収納できるか大体予測がつくのだろ――なんて感心している場合じゃなく。


「ぱくぱく……先輩のご飯、ちょっと硬過ぎですね。あたし的にはお水をもう少し足した方がちょうどいいかもです」

「悪かったな、歯ごたえがあり過ぎる白飯で」

「あ、この唐揚げ、全部味付けが違うんですねぇ。最初のは醤油で、二個目は塩、今のはちょっとピリ辛な感じです。これはご飯進みますねぇ」


 いつの間にか総菜のから揚げにまで手を出されている。本物の肉食ゴリラがここにいた。


「ご飯進んでいるところ悪いんだが、ちょっと箸を止めてくれないか。というか止めろ」

「はい?」

「言いたいことは山ほどあるが、それ以上に訊きたいことも山積みなんだ。なにから訊ねたものか」

「スリーサイズ以外ならなんでもいいですよ?」

「興味ないね。というか、女の子がそんなことを平然と口にするな。はしたない」

「ふふっ、ジョークですよジョーク。先輩ってほんとに真面目なんですね」


 そういう志賀は真面目に不真面目しているんだったか。

 確かに、いちいち真に受ける方がどうかしているのかもしれない。志賀の言っていることはきっとほとんどジョークの類いだ。そういう心持ちでいた方が気楽か。


「まあ、先輩が本気なら、スリーサイズでもなんでも答える覚悟ではいますけど」

「未来永劫、不要な覚悟だから安心しろ。そんなことより、なんで隣の部屋に住んでる? お前は志賀の妹のはずだろ。家はどうしたんだ」

「それはですねぇ……うーん、話せば長くなるというか」

「なるほど。聞こうじゃないか」

「聞くも涙、語るも涙というか」

「ハンカチ片手に耳を傾けようじゃないか。絶対使わないだろうが」

「ドラマ一話分……ううん、それだけ映画一本は作れるくらいの、複雑な伏線が張り巡らされた重厚なストーリーが」

「お前の人生はクリストファー・ノー〇ンか。御託はいいから早く話してくれ。じゃないと本当に叩き出すぞ」


 さすがに俺の本気が伝わったのか、志賀も「分かりました」と神妙に頷いた。

 そして、彼女が隣の部屋に住むことになった経緯を語り始めた……。



まだまだ8話目ですが、ブックマークありがとうございます~

毎日更新できるかは分かりませんが、とりあえず一年は連載続けたいですね

もしよければ評価やご感想もお待ちしております

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