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ウザいけどカワイイ後輩と四六時中ダベる日々。  作者: かるたっくす
2年・春――後輩、ときどき押しかけ新妻的な日々
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7.優しさ検定



 現在時刻、午後八時。市立図書館で借りる本を吟味していたらすっかり遅くなってしまった。

 帰りに近所のスーパーに立ち寄り、半額シールが貼られた総菜を選んで購入。今日の晩飯はこれでいいだろう。

 ついでに特売のバナナも買ってしまった。これは翌日の朝食候補か。


「……ん? なんだあれ」


 アパートに帰り着き、赤錆びた階段に差しかかった時。

 踊り場の手前辺りに、誰かがうつ伏せで倒れていることに気づく。

 七山高校の制服を着た女子生徒で、およそ日本人離れ見事な金髪――うちの学校でこんな身体的特徴を持つ女子は一人しかいない。


「おい志賀……こんなところでなに倒れてるんだ」


 華奢な肩を揺らしながら一応声をかけてみるが、起きる気配がない。

 なるほど、状況は理解した。


「返事がない。ただのしかばねのようだ」


 大股で志賀の体を避け、先へ進もうとする。

 階段から踊り場へ足を踏み入れた瞬間、左の足首をガッと掴まれた。


「……ちょっと、誰が屍ですか」


 見ると、志賀がむすっとした顔で俺を見上げていた。

 どことなくだが、疲弊した様子にも感じられる。


「ひどいですよ。道端に女の子が倒れているのに、死んでる扱いした挙句にまたいでいくなんて」

「ここは道端じゃなく階段だ」

「揚げ足取りしないでください。もしあたしが本当に具合悪くて倒れてたらどうするんですか。それで死んじゃったりしたらどーするんですか」

「生まれて初めて、神の存在を信じるかもしれない」

「なんかスピリチュアル感謝してるし! もぉ、先輩ってほんとに薄情な人ですよね。ちょっと面白いのが悔しいですけど」


 俺の足首から手を放し、立ち上がろうとする志賀。

 しかし足をふらつかせてバランスを崩しかけたため、とっさに両肩を掴んで支えてやった。


「おい、危ないぞ。大丈夫か」

「あ、えっと……ありがとうございます。ちょっと眩暈がして」


 これまでとは違う素直そうな笑みに、俺は少しだけ驚いた。

 かと思いきや、志賀が踊り場に立つ俺の方に体を預けてきて、


「まあ、今回はこれで合格ということにしといてあげます」


 などと囁く時の顔には、今まで通りのからかうような目つきがあった。


「なにがどう合格なのかさっぱり分からないんだが」

「あたしへの優しさ検定です」

「これほど嬉しいという感情が湧かない合格もないな……」

「あ、調子に乗っちゃダメですよ? 先輩が合格したのはまだ五級レベル、しかも一度落第からの補欠合格みたいなものですから」


 なおのこと嬉しくなかったので、溜め息をつきつつ華奢な両肩から手を放す。

 志賀はなぜか不満げな顔になり、


「え、もう抱くの終了ですか? 抱き締めたりとかないんですか?」

「寝ぼけたこと言ってないで早く帰れ。ていうかなんで俺が住んでるアパートを知ってる? 兄貴にでも訊いたのか」

「まさか。訊く必要なんてないですし、そもそも帰ってきたからこそ、ここにいるわけですけど」


 帰ってきたから、こそ……?

 首を傾げる俺の横を通り過ぎ、志賀は階段を上がって部屋のある方へ進んでいく。

 そして足を止めたドアは――俺が住む部屋の、お隣。


「ここがこの春からの、あたしのお家ですからっ」


 ぼろいアパートの電灯が照らす志賀の快活な笑顔が、それはもう憎たらしいまでに輝いて見えた。



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