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ウザいけどカワイイ後輩と四六時中ダベる日々。  作者: かるたっくす
2年・春――後輩、ときどき押しかけ新妻的な日々
2/57

2.入部希望!

※10/1 誤字脱字の修正を行いました。

ご報告いただき感謝です!



「ほらほら、あたしですよあたし! こんなに愛くるしい後輩の顔と名前を忘れるなんて、先輩に限ってそんなこと絶対ありえませんよね? よね?」

「なんだ、新手のあたしあたし詐欺か。この顔に見覚えあったら通報というやつか」

「詐欺でも指名手配でもないですから! 愛羽あいはですよ愛羽! 志賀しが恋斗れんとの妹のっ」


 そこまで自己紹介されてようやく合点がいく。

 志賀恋斗とは中学時代からの友達の一人で、高校も一緒になった同級生だ。

 現在も同じクラスでよく話はするが、そういえば妹がいたんだったか。完全に忘れていた。

 確かに同じ中学ではあったが、学年も違うし、それほど接点はなかったような……。


「ぐすっ、酷いですよ先輩……こんなに可愛いくて素直で純朴そうな後輩のこと、忘れてるなんて」

「その噓泣きのどこが素直で純朴そうなのか」

「あっ、可愛いは否定しないんですね。嬉しい、でも控えめに言ってやっぱりショックです」

「へえ。控えずに言うと?」

「デュアルショックです」

「なんか頑丈で大丈夫そうだな」

「大丈夫じゃないですよぉ……ていうかマジな話、あたしって結構目立つ方だと思うんですけど」


 まあ、ここまで鮮やかな金髪の女子は珍しいからな。

 だから俺も、容姿には見覚えがあった。

 だけど名前までは出てこなかったというか、そもそも名前を聞いたことはあっただろうか。


「それで、志賀の妹がこんな場所までなにしに来たんだ? 冷やかしならお隣の超次元探究同好会の方に行ってくれ。うちはノーセンキューだ」

「冷やかしじゃないですよぉ。ていうかなんですかその同好会。なにするところなんですか」


 俺が知るわけないだろ。それこそ冷やかしにでも行って聞いてくるといい。


「そんなことより、あたしのことは志賀の妹じゃなくてちゃんと名前で呼んでくださいよ。ほら、さんはいっ」

「ああ、すまん。志賀」

「苗字じゃなくて、下の名前でってことです。ほぉら、愛羽ちゃんって」

「それで、なんの用なんなんだ志賀」

「うわっ、頑な!」


 中々にけったいな反応だった。大して仲よくもない後輩をいきなりちゃん付けで呼べるものか。

 いや、仮に今より仲よかったとしても俺は呼ばなそうだけど。


「あたし、この志賀って苗字がそんなに好きじゃないんですよ。なんかお堅いっていうか、文豪っぽいというか」

「別にいいじゃないか。『網走まで』とかおすすめだぞ」

「作品のチョイスにそこはかとなく悪意を感じるんですけど……まだあたしのこと指名手配犯とか思ってます?」

「で、その一見して文豪的苗字がお嫌いなお年頃の女子高生が、このデブ研(・・・)になんの用なんだ?」

「えっ、デブ研?」


 なんだ。知らないで来たのか。

 わざわざ部室にまで訪ねてきたのだから、てっきり分かっているものと思ったんだが。


「はっ、もしかしてここ……太めの人を研究する的な部活なんですか!?」

「なんだその意味不明な研究内容は」

「そっか……先輩ってデブ専だったんですね。あと五十キロ肥やしてから出直してきやがれってな性癖だったんですね」

「失礼過ぎる勘違いをしている上に身勝手なドン引きもよしてくれ。デブ研ってのは略称だ。デジタル文芸研究部のな」

「あ、なるほど~……え、なんですかそれ」


 ドン引きは消えたが疑問は解消されなかったらしい。


「文芸部、とかじゃないんですか?」

「元はそうだったんけどな。部員不足でデジタル研究会と合併して、そういう名前になったんだ」


 七山高校のクラブ活動規定では、文化部活動は三人以上の部員と相応の活動実績によって承認される。

 つまり部員が二人以下になると、部活として認められなくなるわけだ。


「去年、文芸部とデジタル研究部が一人ずつになったんだ。そこで先輩たちが合併したところに新入生だった俺が入部して、なんとか部として存続できたんだ」

「でも先輩、ぼっちじゃないですか。あ、イマジナリーフレンドですか?」

「誰が幻想か。二人の先輩のうち、一人は卒業したんだ。で、もう一人の先輩は三年で、今年から予備校に通うらしいから今日は来てないだけだ」

「なるほどなるほど……あれ? てことはここ、今は部員二人だけ?」


 気づいてしまったか。

 志賀の言う通り、現状の部員は先輩と俺の二人だけ。

 しかも先輩は実質的にゴースト化……このままだとデブ研は廃部する。


「なんとか部員を集めたいとは思ってるんだがな。そもそもが人気薄だった部の寄せ集めだし、かと言って変な輩には入ってほしくないしな」

「先輩、先輩。ほれほれ」


 華奢な割につんと張った立派な胸を反らしながらなにやら自己アピールしてくる志賀。

 なんなんだ一体。サンドバックとして殴り飛ばしてもよいということなのか。


「そーゆーことなら、うってつけの新入生がいるじゃないですかっ」

「……いずこに?」

「目の前ですよ目の前! 当然のように視線スルーしないでくださいよぉ」

「変な輩には入ってほしくないって言ったばかりなんだが?」

「どこが変ですか! ちゃんと身元も割れてる潔白な後輩ちゃんじゃないですかっ」

「珍しい自己主張だな……」

「とにもかくにもあたし、入部希望です! どうですか、先輩?」


 ぴょんぴょんと跳ねるような足取りで近寄ってくる。

 その仕草こそ小さなウサギのようで可愛らしいが、その後の上目遣いは一周回ってあざといウザみを感じざるをえない。

 どうですかと言われてもな……と思っていた時、ドアの方からコンコンと、ノックする音が聞こえた。



お読みいただきありがとうございます~

現時点で大体20~30話分くらいの構想はあるので、ゆるっとですが続けていきたいなぁと

ブックマークなど、ぜひよろしくお願いします

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