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お手製の靴

 ふぅー、それを心配するくらい、私も〈はがと〉も元気になったってことなのね。

 〈段階〉が上がったし、毛皮と燻製も用意出来たので、いよいよ〈巫女の家〉を目指そう。


 このまま二人で暮らしていると、近いうちに私と〈はがと〉は男女の関係になってしまうわ。

 私には手を引っ張ってもらった恩があるし、何と言っても二人切りだから、〈はがと〉に迫られたらこばむことはかなり難しいと思う。

 〈はがと〉の太い腕に抱かれながら、まんざらでもない感じで微笑んでいる私を想像出来るもの。


 だからそうなる前に、一日でも早く二人切りの状態を解消しなくてはならないんだ。

 こんなところで動物的な幸福を目指す、原始人みたいにはなりたくないんだ。

 それでなくても今の私は、【咬鼠】の毛皮を被っている原始人の女みたいなんだもん。

 せめて下着をはきたいよ。


 お手製の靴を履いた〈はがと〉が、〈肥溜め〉を上がっていったけど、無事帰ってくることを私は願うしかない。

 男物の下着でも許してあげるから、早く帰ってきてね。

 男物では不満だけど、お尻が丸見えになるよりは、ずいぶんとマシなんだからね。


 ◇◇◇◇◇◇ 〈はがと〉の視点 ◇◇◇◇◇◇


 何度匂いを嗅いでも、〈肥溜め〉は猛烈に臭くて、吐いてしまいそうだ。


 何とか這い出して空を見上げれば、二つの月が弱弱しい光を僕へ投げかけてくれる。

 今夜は半月と三日月の組み合わせか。

 冷気が夜の底を這って、足元から僕を凍えさせようとするが、〈アワ〉が作ってくれた毛皮の靴の温もりがじんわりとだが頼もしい。

 僕にはこの世界の季節が良く分かっていないが、冬だったら毛皮が売れるかもと、しょうもないことを思ってしまう。


 はっ、その前にまず辺りを警戒するんだ。

 その場でぐるりと見回しても、有難いことに人がいる気配はないみたい。

 ここはどうやら、廃棄された昔の〈塔鉱山〉らしいな。


 〈力鉱石〉の産出が悪くなったため、捨てられたのだろう。

 〈力鉱石〉の出が悪いと鞭で叩かれる奴隷の悲鳴が、今でも聞こえるようでやり場の無い怒りが湧いてきてしまう。

 持っている剣で、今直ぐに奴隷頭〈ダキ〉と駆逐人の〈ヤザ〉をぶった切ってやりたいな。


 だけどここは冷静になろう、むき身の剣を持ちながら、外を歩くわけにはいかない。

 僕達は訳ありだし、キョロキョロとしているだけで奴隷にされるような場所なんだ、目立つことは極力避ける必要がある。

 剣は見つからない場所へ隠しておこう。


 ロープも一緒に隠そうと思ったけど、ちょっとズボンが大きいので、ベルト代わりに腰に巻くことにした。

 ただロープが長過ぎて、腹巻のようになってしまったが、せっかく長いこのロープを短くしようとは思わない。

 このロープは色々と役に立ってくれた、幸運のロープなんだよ。

 愛情を込めて〈万能ロープ君〉と呼びことにしよう。


 〈塔〉から三十分ほど歩くと、貧民街と工場が見えてきた。

 〈アワ〉の説明によると、この工場では〈力鉱石〉を精製し〈力石〉と言う物を作っているらしい。

 〈力石〉ってなんだと聞こうと思ったが、かなり常識的なことみたいなので、やっぱり聞かないことにした。

 これを聞いてしまうと、記憶喪失を〈アワ〉に疑われる気がしたから止めたんだ。

 名前からでも想像がついたしな。

 たぶん、力が込められた石ってことなんだろう。


 まあそれは、今はどうでも良い事だ。

 重要なのは、〈力石工場〉で働いている貧しい人々の、服と靴を手に入れることなんだ。

 工場労働者の作業服を売っている店で買うか、燻製肉か毛皮との物々交換しかないと思う。

 今はまだ真夜中なので、店があるか通りを歩いてみよう。


 〈塔鉱山〉地帯と〈貧民街〉地帯との境には、大きな道が通っているけど、〈貧民街〉地帯の中は、ウネウネと曲がりくねった細い路地になっている。

 〈力石工場〉の周りには比較的大きな道がついているのは、〈力鉱石〉を搬入して〈力石〉を搬出するためなんだろう。


  ボロボロの家ばかりで、これは少しくらい歩いただけでは、とても店を見つけられそうにないな。

 店があるのかも怪しい感じだぞ。


 はぁ、何も見つけられないまま帰ったら、〈アワ〉はすごく落胆らくたんするだろうな。

 ボロボロの迷路の様な路地をかなり歩いたけど、店らしきものは全く見つけられなかった。

 〈アワ〉が言ってたように、毛皮の靴は革のヒモを通した穴が破けて、もう直ぐダメになりそうだ。


 「困ったな」と僕は弱音を吐いて、当てもなくまた路地を歩き出したが、どうもこの先は行き止まりらしい。

 「ふぅー」と溜息を吐いて戻ろうと思った時、人の声が聞こえてくる。


 どうも路地の奥で、人が言い争いをしている感じだ。

 少し近づいて聞き耳を立てると、中年のおっさんが少年をおどしているのが聞こえてくる。



 「こんなとこで、手間をとらすなよ。もう返済期限が過ぎたから、約束どおりお前と母親を奴隷に売るぞ。早くボロ家に行って、お前の母ちゃんにも伝えなくっちゃならないんだよ」


 「あー、借りたお金は返したじゃないか。そっちこそ、約束を守れよ」

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