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〈術素玉〉

 〈アワ〉も、嬉しそうな顔でモグモグと食べている。

 ははっ、お肉は一杯あるから遠慮せずに食えよ。

 もう三切ほど大きめの肉の塊を食べて、泉の水を飲んだら、やっと僕のお腹も満足したようだ。


 「〈アワ〉、【咬鼠】って美味しいんだな」


 「ふふっ、高級なお肉なんですよ。町で売ればかなりのお値段になります」


 〈アワ〉も美味しいお肉で満腹になったのだろう、今まで見たことがないような良い笑顔になっているぞ。


 「へぇー、そうなんだ。それじゃ今日はすごいご馳走だったんだね」


 「ふふっ、お肉が食べられるので、しばらくは幸せですね。それと、この〈術素玉じゅつそだま〉は、【咬鼠】を倒した〈はがと〉が食べるべきです」


 えぇー、なんだか得体の知れない丸い内臓じゃないか。

 駆逐人の〈ヤザ〉ってヤツが、食べていたのと同じものだ。


 「うぅ、それを食べるの。ちょっと遠慮したいな」


 「うーん、〈術素玉〉はすごくコクがあって美味しいらしいですよ。それにこれを食べ続けると、〈段階〉が上がっていくのです」


 「〈段階〉が上がるって、どう言うことなの」


 「それは。身体能力が上がって、〈祈術きじゅつ〉や〈攻術こうじゅつ〉が使えるようになるってことですね」


 うーん、〈段階〉って、奴隷頭達で話していた等級レベルと同じことなんだろうか。

 〈祈術〉や〈攻術〉って言うのは、ゲームのスキルみたいなものかな。

 この世界は〈巨塔〉とか、この部屋といい、大きな謎があるんだな。


 「〈アワ〉、その〈術素玉〉を沢山食べれば、超人に成れるってことなの」


 「んー、簡単に言えば間違っていません。【咬鼠】の〈術素玉〉では、〈3段階〉までしかいけないと習いましたが、もっと強い〈塔獣〉の〈術素玉〉ならば、超人に成れるでしょう」


 「へぇー、すごいんだな」


 「あっ、でも。それは、選ばれた人だけです。【咬鼠】が一番弱い〈塔獣〉なのですから、〈段階〉を上げるために多くの人が亡くなるのですよ」


 くっ、さっき奇跡的に倒せた【咬鼠】が、一番弱いのか。

 あれ以上強さは、どう考えても無理だな。


 だけど、僕を肥溜めへ突き落として、いたぶってくれたヤツらに仕返しをしてやりたい。

 悲惨な方法で殺されそうになったんだ、とても許されていい事じゃない。


 「〈アワ〉、教えてくれてありがとう。その〈術素玉〉をいただくよ」


 〈術素玉〉は〈アワ〉が言ったように、コクがあってネットリとしていて、美味しいものだった。

 超人に成れると聞いたせいか、食べたら途端に力がみなぎってきた気がする。

 ははっ、話を聞き内臓を食べただけで、その気になるなんて、僕はかなり単純な男みたいだ。


 解体作業で疲れ果てて、お腹も膨れたので、僕は速攻で眠りについた。

 僕が超人となり、バッタバッタと悪人をらしめる夢を見ることが、かなわなかったのがとても残念だ。


 ◇◇◇◇◇◇ 〈アワ〉の視点 ◇◇◇◇◇◇


 あぁ、助かったのね。

 よく【咬鼠】を倒せたわ。


 それに、大量の食べ物を確保することが出来たのは、すごいことよ。

 これで後何日も、生き延びることが出来るわ。

 神様に感謝しなくっちゃ。


 でも解体が面倒なんだな。

 解体用の小刀こがたながないから、上手く出来るか分からないわ。

 〈はがと〉に聞いたら、経験もないしやる気も無いみたいだ。

 自分もお腹が空いてるくせに、嫌そうな顔をしないいでよ。


 でも〈はがと〉は、【咬鼠】の頭を切り落としたんだ、私は解体で出来る女だってことを見せてやるわ。

 解体を一言で言うと、最悪だった。


 皮は固いし、匂いはキツイし、血はべちゃべちゃとつくし、吐く一歩手前でほんと疲れたよ。

 おまけに〈はがと〉が闇雲やみくもに、剣で【咬鼠】の腹を突いたから、内臓が破れてもっと悲惨なことにもなってしまった。


 でも私は出来る女だから、〈はがと〉を責めるようなことはしない。

 解体の素人なんだからしょうがないと、自分自身へ言い聞かせることが出来るんだ。


 だけど、もう無理。

 今日は【咬鼠】に襲われて、その後大変な解体作業をしているんだから、いくら空腹だからって言っても、体力の限界を超えている。

 それは〈はがと〉とも同様らしくて、私達は崩れるように眠った。


 胃が痛いようなひどい空腹感で、私は目が覚めてしまった。

 これほど苦しい空腹は、今で経験したことがない。

 昨日限界まで作業をして、目の前にお肉があるから、身体が強く求めているんだと思う。


 でも焦ってはいけない。

 解体作業をなめらかに進めるため、まず剣を研ぐ必要がある。

 切れない刃物では作業がはかどらないし、逆に手を切ってしまう事故に繋がってしまう。

 

〈はがと〉へまず先に剣を研ぐと言ったけど、全く反対しないで黙々と作業をこなしてくれている。

 ふぅん、面倒がなくて良いけど、これが奴隷根性って言うことか、理由も問わないで指示に従うんだ。


 長い時間をかけて剣を研いだ甲斐かいがあって、ようやく皮を剥がすことが出来た。

 ふぅー、これで解体作業の半分以上は出来たはずだわ。

 やっとお肉が食べられる段階まで、きたってことなんだ。


 少しホッとしたら、私は眩暈めまいを感じて、もう座り込むことしか出来なくなった。

 もうフラフラだよ。

 身体中と服の全てが汚くて、不快感が頂点になっているわ。

 あぁ、泉へ行きたいな。

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