05.ロングフォードの医者
続きです。
ロングフォードは国中が混乱していた。
街中に血の臭いが充満して、ふらふらと死人が歩いている。
所々から悲鳴が響いている。
ルーセントはそっと窓の外を伺って、目を細めた。
すっかり城へ避難するタイミングを失った。
ベッドに寝ているアイシアスは、今も力なく目を瞑っている。
奴らが現れたあの日、ルーセントは異常を感じてすぐに屋根裏へ移動した。
アイシアスを抱きかかえたままでは、戦うことが難しいからだ。
しかし…
昼夜関係なく歩き回る死人達に、逃げる隙がなかった。
強行突破かな…?
久しぶりの無茶な予感に、自然と笑顔が浮かんだ。
死人の中にエシャロンとルネサスの姿は見えなかったが、仲の良かった同期の姿は確認している。
あの2人がうまく逃げたのなら良いのだが…
そっとため息をつく。
城に行かない理由は他にもあった。
「父様…」
アイシアスの弱々しい声が聞こえて振り向くと、ベッドに座って不安そうな視線を向けていた。
「私を置いて、お城に行ってください」
小さいが、はっきりと言うアイシアスに、ルーセントは困った顔で頭を撫でた。
「城に行っても、もう機能していないさ」
「もうすぐ、兄様が帰ってくるわ」
弱々しく頭を振って、アイシアスが涙を浮かべる。
「兄様…飲み込まれてしまう」
手で顔を覆って泣き出すアイシアスの背中を、ルーセントは優しく撫でた。
飲み込まれてしまう…か。
目を瞑って考え込むルーセントの手を、アイシアスが握った。
「お願い、父様。兄様と迎えに来て…」
ルーセントは、何も言わずに背中を撫で続ける。
1人では、アイシアスを連れて逃げる事は出来ない。
だから外を伺っていたが、丸一日経っても頼れる人間は見つからなかった。
どちらにしろ、このままでは2人で力尽きてしまう。
ルーセントは決心して、アイシアスの手を握り返した。
「必ず、戻る」
静かに立ち上がると、遠くで竜の咆哮が聞こえた気がした。
窓の外にはなにも見えない。
「ルネサス様…」
アイシアスが祈るように両手を握りしめた。
ルーセントは外を睨みつけると、大剣を背に屋根裏を下りた。
城に向かう途中、やはり人間には会えなかった。
建物の陰から様子を伺う。
死人達は、ウロウロと道を歩くだけで、建物の中には入ろうとしない。
何かを待っているのか?
建物の中には、まだ人間が残っている気配がする。
これなら、アイシアスが襲われる事はないだろう。
ホッと息を吐くと、ルーセントは城へ向かって走り出した。
向かう死人を一気に切り倒していく。
背後で立ち上がる死人達の気配を感じたが、建物に隠れるように城へ向かって走り続けた。
今度は、はっきりと竜の咆哮が聞こえた。
この国に近づいて来ているようだ。
城の前には、死人が何体もウロウロと歩いている。
城を守っていた、ルーセントの顔見知りばかりだった。
「すまない」
剣を一閃すると、開いたままの門の中に飛び込む。
「ちっ…」
城の中は、城を守る剣士や魔術師達の、変わり果てたものであふれている。
見知った顔が多く、眉をしかめた。
ルーセントの周囲から風が巻き起こる。
「みんな、すまない…」
唇を噛んで、周囲に風の刃を解き放った。
鋭い刃を受けて、死人達の手足が飛んでいく。
ジタバタと床に転がる死人達の横を走ると、竜の咆哮がすぐ真上で聞こえた。
悲しい声に嫌な予感がする。
中庭に向かうと、青く小柄な竜の翼が見えた。
その手には赤く汚れた…
「エシャロン!!」
ルーセントが叫んで近寄ると、竜が叫んだ。
「医者は、どこだ!?」
ルネサスは城の惨状を知らない。
城の医者は、まだ部屋に籠っているだろうか。
「小さくなれるか?こっちだ」
ルーセントが奥を指差すと、ルネサスは人間の姿に戻った。
自分より大きなエシャロンを腕に軽々と抱えている姿を見て、ルーセントは先に歩き出す。
死人達を切り倒しながら、医者の部屋に向かった。
「なんだ、これは…」
ルネサスが死人で溢れる城に驚いている横で、ルーセントは自嘲気味に笑った。
「この国は終わりだ」
城の剣士としては、生きている国民を少しでも連れて逃げなければいけない。
そんな事、できるわけないじゃないか。
子供たちを守るだけで、手一杯なのに。
ルネサスの腕の中で、血が流れ続けているエシャロンを見た。
「生贄…か」
諦めたように呟きながら、死人を切り捨てる。
その態度に違和感を覚えながら、ルネサスは後をついていった。
中庭から離れた場所に医者の部屋はある。
「生きているか、わからないぞ」
言葉と同時に扉を開けると、頭の上から椅子が襲ってきた。
「先生、無事でしたか」
ルーセントは軽々と避けて、先生と呼んだ女性へ笑顔を向けた。
長く柔らかい黄色の髪を後ろにまとめ、白く清潔感があるローブを着ている。
意志の強そうな目が、ルーセントを捉える。
「ルーセント…エシャロン!!」
表情を緩めたのもつかの間、少し引きながら入ってきたルネサスを見て、慌てて駆け寄った。
「良くないわ。早くベッドに!」
ルーセントが扉を閉める。
ルネサスは言われたままベッドへエシャロンを寝かせ、不安そうに隣に立つ女性を見上げた。
「私はイーリアス。…これは、酷いわね」
エシャロンの胸元を開けると、血にまみれた胸に刺さる棘の周りからじわじわと血が流れ続けている。
ルネサスは目を逸らして横から離れた。
「助かるか?」
ルーセントは扉にもたれながら、2人の様子を見ていた。
「私を誰だと思ってるの?助けるわよ」
その言葉に、ルネサスがホッと笑って座り込んだ。
初めて見る竜の子の笑顔と態度に、ルーセントは組んでいた腕を外してポカンとする。
「さあ2人とも、ボンヤリしてないで手伝って!」
イーリアスが奥から道具を出しながら、大きな声を出す。
「貴方は足を押さえていて、ルーセントは手と頭をお願い」
ルネサスは意味が分からず、言われたままエシャロンの足を押さえた。
ルーセントが困った顔で、エシャロンの頭側に移動する。
「麻酔はないのか」
「この部屋は手術室じゃないからね」
ルーセントがエシャロンの腕を抑えるのを確認した後、エシャロンの口にタオルを押し込む。
小さなナイフを持ったイーリアスが手を上げる。
「暴れるわよ」
そう言って、エシャロンの赤い胸にナイフを当てた。
「貴方には、守護の精霊を付けられません」
15歳の誕生日、街の魔術師から言われた。
エシャロンは意味が分からず、隣にいる両親の顔を見る。
母は青い顔で、口を押さえて息を飲んだ。父のルーセントは、魔術師と奥に行って話し込んでいる。
時折、ルーセントの大きな声が漏れてきた。
「ああ、エシャロン…」
母がエシャロンを強く抱きしめる。
エシャロンはどうして良いか分からず、母の背中を抱きしめた。
いつも笑顔の母が、震えている。
ルーセントが戻ってくると、俯く母を慰めるように肩を抱いた。
「俺達は、城へアイシアスを迎えに行く。お前は今日、警備団へ挨拶へ行く日だったな?」
エシャロンは頷き、建物の外で2人を見送った。
初めての警備団に向かいながら、精霊のことをボンヤリと考えていたのを覚えている。
守護の精霊が付かない理由は、今でもわからない…
そしてその日、母は帰ってこなかった。
城からの帰り、事故に巻き込まれて亡くなった。
その時は、ルーセントの説明に何も言わなかったが、明らかに不自然だった。
一緒にいたはずのルーセントとアイシアスは無傷だった。
アイシアスは、その時の記憶がない。
なのに、エシャロンが見たことのない水晶玉を、母の形見だと言う。
そして、ルーセントはその日から…違和感があった。
昔の記憶がないように見えた。
家族で過ごした、幸せな日々の記憶がなくなっている…
厳しいが、アイシアスと自分を一番に考えてくれるルーセントは、今まで通りの父だと思う。
母が亡くなったせいで一時的に混乱しているのかと思い、エシャロンは何も言わなかった。
そのうち警備団で寝泊まりするようになって、父との距離が離れていっていた。
今思えば、不自然な父から単に逃げていただけかもしれない。
「う…っ」
目を開けると、眩くて再び目を瞑った。
「エシャロン!」
ルネサスの声が聞こえて、もう一度そっと目を開ける。
ルーセントとアイシアスの顔も見えた。
「僕は…いっ!?」
腕を上げようとして、胸の痛みに顔をしかめた。
長い夢を見ていた気がする。寝ていたのに、疲れた感覚…
身体が重い。
「兄様、良かった…」
目が赤いアイシアスに笑顔を向けると、ルーセントとイーリアスが何かを話しているのが見えた。
辺りを伺うと、何となく見たことがある部屋だった。
アイシアスとルネサスが、2人でエシャロンの手を握っているのに気づく。
「心配してくれたのか…」
呟いて笑うエシャロンに、ルネサスは顔を赤くして手を離した。
「お前は2日間、眠っていたんだ」
不機嫌な顔で文句を言いながら、ベッドの横から離れていくルネサスに苦笑いする。
「ルネサス様は、 ずっと兄様の側から離れなかったのよ」
嬉しそうに笑うアイシアスの表情も、疲れが見えていた。
エシャロンは泣きそうになりながら、もう一度ルネサスの方を見ると、ルネサスもチラチラとエシャロンを伺っていた。
「エシャロン、目が覚めたばかりで悪いが、時間がない」
ルーセントがベッドの横に座る。
「大事な話を…しておく」
いつもと違うルーセントの目に、エシャロンは緊張して頷いた。アイシアスとルネサスも注目する。
「お前に精霊の守護がない理由を、教えていなかったな」
エシャロンは息を飲んで頷く。
「お前は赤ん坊の頃、呪いをかけられていた」
イーリアスが目を逸らし、エシャロンとアイシアスは驚いた顔でルーセントを見る。
ルネサスは目を細めて睨んだ。
「私達も15歳になるまで気がつかなかった。お前は…魔物を呼ぶ餌にする為に仕込まれたらしい」
「は…?」
何で、僕が…エシャロンは声にならない声で呟く。
ルーセントは頭を振った。
「偶然だ。偶然、そいつが計画を実行しようとした時に、お前を城に連れて来てしまった」
「呪いをかけた奴を知っているのか」
ルネサスの怒りを含んだ声に、エシャロンは息を殺してルーセントを見上げた。
ルーセントは確かめるようにエシャロンを見る。
「魔術師長の…サイトジーンだ」
予想外の名前に、エシャロンは頭の中が混乱した。
魔術師長は、本来なら産まれた赤ん坊を祝福する役目だ。
城の魔術師が、なぜ魔物を呼び込む必要がある?
「全部、そいつのせいか」
ルネサスが忌々しそうに吐き捨てた。
ボンヤリと考えがまとまらないエシャロンを見て、ルーセントが頭を優しく撫でる。
ルーセントもイーリアスも厳しい表情をしている。
アイシアスは口に手を当てて何も言葉が出ず、エシャロンの手をぎゅっと握った。
「あいつは、この国を憎んでいる。完全に滅ぼそうとしているんだ」
「ロングフォードの国民、全員を殺すつもりよ」
ルーセントの言葉に、イーリアスが付け加えた。
ロングフォード国の人間は、黄色の髪が特徴だ。
自分も含めて、アイシアスもイーリアスも対象で…
ラックも。
「全員が死ななければ、死人達は止まらない」
「何だよ、それ…」
ラックの虚ろな目が浮かび、エシャロンは涙が溢れた。
意味がわからない。
自分たちはサイトジーンの恨みなど知らない。
「僕たちには、関係ないだろ…」
小さく嗚咽が漏れるエシャロンを、ルーセントは目を瞑って撫で続ける。
ルネサスが怒りを露わに立ち上がった。
「どこへ行くの?」
「そいつを殺して、国を出る」
自分の剣を確かめてドアへ歩き出すルネサスを、イーリアスが止めた。
「サイトジーンは、もう死んでいるわ」
睨みつけるルネサスを、正面から見据える。
「この混乱が始まる前日、自分の血を使って魔法陣を発動させたのが見つかったの。あの子達の両親の骨も一緒にね」
両親?エシャロンもアイシアスも、キョトンと周りを見渡した。
「誰の両親だって…?」
ルネサスが警戒するように見上げると、イーリアスは困ったようにルーセントを見た。
「エシャロンと、アイシアスのだ」
伺うように見つめるルーセントを見ようと、混乱するエシャロンは目を何度も擦った。
目の前にいるのは、父のルーセントだ。
母は事故で亡くなった。家族で墓参りだってした。
骨が見つかった?
2人の言っている意味がわからない。
アイシアスはルーセントを見ながら、エシャロンの手を強く握った。
「今まで、騙していて悪かったな」
ルーセントが立ち上がると、風が吹いた。
瞬間、今までルーセントが立っていた場所に、水色の髪をした男が立っていた。
ルネサスと同じ水色の髪に、艶やかな赤い目が印象的だ。
肩までかかる髪を後ろに流して、困ったようにエシャロンとアイシアスを見た。
エシャロンは、その姿に目を見開く。
「ラッシュネスト…」
目の前の男を知っていた。イーリアスと一緒に城の医務室で働いている男。
警備団に入る前は、よく家に遊びに来ていたじゃないか。
なぜ、今まで忘れていたのだろう。
特徴的な見た目は、ルネサスによく似ている…
ラッシュネストはエシャロンに優しく笑いかけた。
「お前が警備団に入った日か…ルーセントはお前の母と2人で城を訪れた」
ルーセントとは違う優しげな声に、エシャロンは再び涙が溢れてきた。思わず、アイシアスの手を握る。
「エシャロンに精霊が付かない理由を、サイトジーンに相談しに行くと言っていた」
言葉を途切れさせ、アイシアスを撫でた。
「私はずっと、あの魔術師から嫌な魔力を感じていた。ルーセントを止めたんだ。だが…」
イーリアスが俯く。ルネサスは無表情に、その場にいる人間たちを、自分と同じ髪色の男を見ていた。
「2人は約束の時間になっても戻ってこなかった。アイシアスは8歳だったからな。下手な説明より、2人が戻るまで私がルーセントのふりをしようと思ったんだ」
ラッシュネストが目を瞑った。
「ルーセントは強い。私は、2人が必ず帰ってくると信じていた。あの日…無理にでもついて行くべきだったのに」
イーリアスが、ラッシュネストの背中を優しく叩く。エシャロンもアイシアスも、ぼんやりと2人を見ていた。
俯いてしまったラッシュネストの横にイーリアスが立ち、話しを続ける。
「サイトジーンが見つかった時、魔法陣の中には寄り添うように2人分の骨が置かれていたの。その服は2年前に別れた時のまま…手にしていた指輪は、あの2人のものだったわ」
淡々と話すイーリアスの言葉が、入ってこなかった。
まるで遠くの、誰かの会話が聞こえているように。
父と母の、2人の笑顔を思い出す。
厳しい父は、母をとても大切にしていた。優しい母も、いつも父には特別な笑顔を向けていたと思う。
警備団に入る前は、アイシアスも元気だった。
遊ぶ自分達を見て、温かい笑顔を向ける2人を思い出した。
目の前が滲んで見えなくなる。
目を瞑ると、楽しかった思い出ばかり浮かんでくる。
「父様…母様…」
アイシアスがエシャロンの手を握りしめて泣きじゃくる。
エシャロンはアイシアスの手を優しく握り返しながら、唇を噛んで泣くまいと我慢する。
涙だけが、頬を伝って落ちた。
「こんなときにすまない。時間がないんだ」
ラッシュネストの手がエシャロンの胸の上に置かれ、ほんのりと光る。
徐々に胸の痛みが引いて行く感覚に、エシャロンは驚いてラッシュネストを見上げた。
「これで動けるか?」
エシャロンは起き上がると、胸にある傷口を見た。大きな痕は残っているが、痛みはない。
ルネサスがラッシュネストに近づき、睨むように見上げた。
「できるなら、早くやれ」
「痛あっ!」
無表情に脛を蹴り、ルネサスはエシャロンの隣に行って胸の傷跡を確かめ、アイシアスの涙を拭いている。
苦笑いするイーリアスの横で、ラッシュネストは蹴られた足をさすりながら、ポカンとルネサスを見ていた。
「変わったな…」
睨むルネサスと目を合わせないよう、エシャロンの手を取って立ち上がらせる。
「例の湖で血を流したのだろう?もうすぐ、奴が国を飲み込みに来るはずた」
「ヤツ…?」
湖には禍々しい光が沈んでいた。
ルネサスが目を瞑って、エシャロンを助け出した時のことを思い出す。
波打つ湖には、意思があるようにも思えた。
奴か。
「サイトジーンが17年かけて作り上げた魔物だ。エシャロンの血に導かれて、ここに来るだろう」
「僕の血…」
エシャロンは呟き、泣き顔のアイシアスを見た。
「僕が出て行ったら…みんな助かるかな?」
震える声で呟くエシャロンに、ラッシュネストは首を振った。
「もう遅い。この国に、お前の血が落ちている」
エシャロンは、俯いて声を絞る。
「僕だけ、ここに残るよ。みんなが国の外に逃げれば、助かるんじゃ…?」
ラッシュネストはエシャロンの肩を叩いた。
「無事な国民は、まだ街にもいる。変な事を考えるな!」
俯いたまま黙り込むエシャロンは、肩が震えていた。
「倒せば、良いのか?」
ルネサスが怒りを込めて声を絞り出すと、ラッシュネストは困ったように笑って腕を組んだ。
「そうかもしれないし、間違いかもしれない」
曖昧な答えに拳を握るルネサスの肩を、イーリアスが優しく抑える。
「始動の魔法陣を、まだ解析できていないのよ。魔物を返す術がわかっていない…」
涙が枯れたアイシアスが、一歩前に出た。
「私を、その魔法陣まで連れて行ってください」
エシャロンは驚き、アイシアスの細い肩を抱く。ルネサスも無表情に顔を向けた。
「何か…できるかもしれない」
はっきりと言うアイシアスに、ラッシュネストは迷ったように目を瞑って腕を組んだ。
イーリアスも困った顔でアイシアスを見る。
「私とアイシアスだけで行こう。大人数で出ても守りきれない」
エシャロンは決心したように顔を上げた。
「守ってもらわなくていい。僕も行きたい」
嫌な予感がする。
その視線を、ラッシュネストはまっすぐ受け止める。
「エシャロンは俺が守る。俺も行く」
ルネサスがエシャロンの横に並んで、ラッシュネストを睨みつける。
守るって…エシャロンは苦笑いしながらルネサスを見た。
「ルネサスは、変わったな…」
しみじみと漏らすラッシュネストの言葉に、ルネサスは首を傾げた。エシャロンも不思議そうに見ている。
2人は知り合いだったのか?
「さっきから何だ?俺を知っているのか?」
ルネサスの言葉に、ラッシュネストが明らかに動揺した。
「少しも記憶がないのか…?」
頷くルネサスから目を逸らす。
「わかった。終わったら話そう」
ため息をつくラッシュネストの肩を、イーリアスが叩いた。
「私は残るわ。まだ調べることが残っているの」
頷くラッシュネストを、真っ直ぐに見上げる。
「必ず、戻ってきて」
「もちろん」
小さいが、はっきりした声に、ラッシュネストは笑って頷いた。
エシャロンは自分の槍を部屋の隅に見つけて、手に取る。
アイシアスは、水晶を手に持った。
ルネサスとラッシュネストは、自分の剣を確かめる。
「行くぞ」
ラッシュネストの声に、全員が緊張してドアを見た。
まだ続きます。