表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
168/168

最後の勝利者

 レーカは蒼い光に包まれる。纏う圧は以前にも増しており、ルリリは一歩下がった。その瞬間、レーカは距離を詰める。ルリリの眼前に現れたと思いきや、背後に回り背を打つ。


「か、はッ!!」


 吸気が押され、唾と一緒に吐き出される。前面へ倒れるが、辛うじて手をつくことができた。ルリリは噎せるような咳を繰り返す。

 胸の奥から何かが飛び出すような感覚は、どこかへ消える様子もない。うつ伏せ状態から身を翻し、レーカから距離を置いた。


「さあ、続けるわよ」

「っ……!?」


 ルリリは目を細める。レーカは再び距離を詰め、胴を狙う。対してルリリは剣を斜め前方へ構え、手刀を受け流した。そして露わになった隙を突く。ルリリは上方から斬撃を叩き落とす。


「く……!!」


 辛うじて受け止めることに成功するも、両手は塞がっている。レーカは腰を低く落とし、剣筋を左に逸らす。そのまま地を滑り、右方からルリリへ一撃を叩く。


「させないよ」


 レーカの軌道上には既にルリリの脚先が置かれている。やがて脚先に激突し、レーカが蹴られる形となった。


「痛ぅ」

「さて、続けるよ」


 レーカは目を細める。距離を置き、姿勢を正すと彼女はニヤリと笑ってみせた。


「……ルリリも、やるね」

「だって、負けられないなら」


 ルリリは軽くレーカの表情を窺って、人差し指を立てる。心做しか口元も緩いカーブを描いていた。


「それはなんの意図?」

「さぁね、見てればわかるよ」


 ドクドクと脈を打つ胸に手を当て、ギュっと拳をつくる。ルリリは剣先が体幹に隠れるように、後方へ腕を引く。所謂、居合切りの型だ。


「それがルリリの必殺技なのね」

「次で決める」


 レーカは左右の手刀を中央で重ね合わせ、その手を外側へ開く。両手の間に生成された太刀を握ると、ルリリへ肉薄する。ルリリまでの距離は概ね間合い五つほど。その距離を二秒で詰め、太刀を横に薙いだ。

 ガツン、と響き渡る金属音に目を見張るレーカ。


「ほらね、見てればわかるでしょ?」


 ニッと笑い声。

 太刀が(くう)を斬ったのも束の間、くるくると宙を舞った。その瞬間に剣先を切り返し、レーカの喉元へ突きつける。


「……私の負けね」


 ルリリによって、レーカの太刀は弾かれていたのだ。


「勝負ありっっ!! 勝者、ルリリ選手〜ッ!」


 ルリリを称える歓声がステージを包む。上下する肩を整え、胸を撫で下ろす。歓喜に震える涙のせいなのか、いつにも増して日差しは強くルリリの目は眩む。

 息が整うとようやくルリリは言葉にした。


「よかった……!」


 ***


 大会で優勝した後。ルリリ達はブルメの森へ帰っていた。


「ルリリ、良くやった」


 そこでルリリのターコイズの髪はもみくちゃになっていた。主に、キマリという母親の手によって。キマリの口調も心做しか浮ついている。そのためかルリリの口元ははにかんでいた。


「うん。私、頑張ったよ。お母さん……」

「流石、私の(むすめ)


 そう褒めながら、キマリは誇らしげにルリリの頬を両手で摘んでいる。歓喜と若干混じる恥ずかしさにルリリは紅潮していく。そんな中で傍目のレーカと目が合った。

 申し訳なさそうに笑みを浮かべるレーカへ、こっそりと手を振る。


「む。ルリリ、他の女の事を考えた? お母さん、嫉妬……!」


 キマリに強く抱き締められながらレーカへ助けを求めるルリリ。


「もう、お母さん。やめてってば〜!!」


 ルリリの羞恥の叫びが森に木霊(こだま)していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
まあキマリさんの言いたい事も分かる( ´∀` ) とにかくようやく決着! お疲れ様ですご両人( ´∀` )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ