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微睡み

『運というものは、ある一定周期で『幸運な状態』と『不幸な状態』が訪れるのだ。それが大量の人間を殺めた極悪人だろうと、民衆へ耳を傾け人々を救った英雄だろうと――――両親がどこかへ行ってしまった君だろうと、だ。』

 

 白髪頭の男はしわがれ声で言った。

 名前は……上手く思い出せない。


『なに、心配なんてしなくともよい。教団(うち)には坊主くらいの子供が沢山いる。皆、同じ様に両親に見放された者たちだ。学校にはワシが連絡しよう」


 父も母もいなくなった冷たい我が家、その玄関で男は続けた。

 彼の後方には、黒いスーツに身を包んだ数人の男が、それぞれサングラス越しに俺を睨んでいる。


『――まあ待て。子供は貴重だが国の宝だ。ワシはこの子の意思を尊重したい』


 初老の男は、今にもこちらに乗り込もうとする者たちに喝を入れる。

 その目は誰よりも優しく、また人を刺し殺してしまうほど冷たく恐ろしい――。


『別に取って食おうという訳ではない。すべては坊主に任せるとも』


 頬から床へ涙を落とす俺の頭を優しく一撫でし、


『ワシたちと共に来るか?』


 身を屈めて顔を覗き込む男。

 当時の俺は、その不気味な男たちに恐怖を覚え、震えながら小さく首を横へ振った。

 『ふむ、そうか』と、男が落胆の声を漏らす。


『では、邪魔したのぉ。坊主』


 男は最後にフッと微笑み、扉の向こうへ消えていった――――。

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