さよなら異世界。
帰って来たチームメイトたちも監督たちも顔面蒼白になる。彼らは俺とケントを「役立たずめ」と詰ったがどうしようもない。
彼女たちが持っている大きな収納魔法、そしてその中に保管された物資。それを失うわけにはいかない。戦う際に人質にされてしまっても困る。
とりあえず酒を抜いてから話し合うことになる。ケントが腹案を述べた。
「まだ活路はある。健が物資の管理のために亜美の持つ収納魔法への合鍵を持っていたのではないか?」
なるほど。
「さよう。そこで私と健が収納魔法を通って二人のもとへ行き救出。それから我々も収納魔法を通して撤収すれば良い。」
作戦は終盤まで上手くいった。亜美たちの救出までは。そう、作戦の終わりに俺たちが帰還しようとした時、俺の合鍵が無効になっていたのだ。帰るための扉が開かないのだ。つまり味方にはめられたのだ。
⋯⋯胆沢よ、そこまで俺を嫌うのか。
俺とケントは敵に抵抗するも多勢に無勢、やがて捕らえられる。四天王は拘束された俺たちを引き摺り出し、城を攻める仲間たちに向かって意気揚々と言い放った。
「貴様らの仲間の命が惜しくば降参せよ。」
しかし胆沢の返答は冷淡だった。
「そいつらは煮るなり焼くなり好きにしろ。もう用済みでね」
そして、苛烈なチート魔法の起動が始まる。俺とケントごと敵を殲滅する気なのだろう。
俺はケントに謝罪した。
「申し訳ない。胆沢のやつがここまで腐っているとは思わなかった。来世で償わせて欲しい。」
ケントはおだやな笑みを浮かべた。そして言った。
「うん。先に行って待っている。とりあえず転生の間に行ったら私の残した提案を受け入れてほしい。そして記憶が覚醒したらトレーニングだけは欠かさないでほしい。」
俺はケントと夢を実現させるプランをずっと話合っていたのだ。もちろんその時は冗談交じりでケントと俺がこの世界で天寿を全うしたらのプランだったから8割は冗談まじりだった。
やがて高度殲滅魔法の起動術式が臨界に達したのだろう。
「悪を滅殺せよ!」
胆沢が高らかに宣告する。
「馬鹿め!お前が一番の悪党だ!」
俺の心の声を四天王の魔人がそのまま声に出して叫んでくれた。ありがとう、名前が長くて思い出せないけど四天王の魔人さん。来世どこかで会ったら一緒に酒でも酌み交わそうや。
身を焼き焦がすような高熱と共に周囲が真っ白に反転する。
俺は再び死んでしまったのだろう。目を開けると再び白い部屋にいた。
空中に横たえられた俺の身体を女神が上から見下ろしていた。
おれは薄らと目を開きながら問う。
「全ての責任はあんたにあるのだが。何か言い開きは?」
俺が目を覚ましたのは俺が再び死んでから20数年が経っていた⋯⋯らしい。
「辺獄における試験は終了しました。あなたは良くやってくれたのです。」
お前は録音音声ではなかろうな。
「試験の結果と転生先をお知らせします。」
いや、俺はその前に聞きたいことがある。魔王討伐はどうなったのか?亜美は今どうしているのか?