表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/185

相手投手は「ダーツ」の達人。(都市対抗野球2回戦)

亜美は進路について俺に尋ねられると少し考えてから言った。

「とりあえず大学行くよ。体育の先生になるのもいいかなぁって。だからもしプロリーグができても大学卒業してからかなぁ。」

亜美なら女子プロリーグができれば確実にリーグを背負って立つ選手になるだろうし、女子の硬式野球部でも確実に指導者になれるだろう。


 ちなみに青学の今年の3年生の中でドラフトにかかりそうな人はいない。ただレギュラー陣は大学の推薦がとれそうな人が多い。やはり山鹿世代の人気実力が圧倒的で毎日のように彼ら目当てのスカウトが学校を訪れているくらいだ。


とりあえず俺は明日の試合に集中しよう。


 第2戦の相手はRJ東日本東北。仙台に本拠地を置く東北の雄。エース雪津匡史(せっつただし)氏を擁している。正確無比なコントロールを誇る技巧派投手らしい。


「なんでもダーツですげえ真ん中に当てるらしいぞ。ダーツで制球(コントロール)を磨いたそうだ。都市対抗ん時は新宿か六本木のダーツのあるバーに出没してるってさ。」

エースの増田さんの解説に俺は首をかしげる。


「ダーツで制球(コントロール)なんて身に付くんですかねぇ。」

そう言ってから俺も自分でピアノで指の力を鍛えていたことに気づく。指の繊細な動きというのを取得するのは人それぞれのやり方なんだろう。俺なんか魔法だもんね。他人(ひと)のこと言えないや。


 俺はこの試合も3番指名打者。初回裏、最初の打席。二死打者無し。「思考加速」だけかけて様子見。すいません。魔法の名前の表記が毎回ブレブレなんですけどかけてる魔法は一緒です。すごいや、本当に寸分たがわぬ制球(コントロール)。俺もダーツやろうかなぁ。おっと「見逃し」の三振。俺の場合は「ガン見し」すぎて三振だ。


 ところが2回表、増田さんが2失点。しかしその裏、5番阪村さんがソロ本塁打で1点を返す。


 ただ両エースともそこから立ち直ってスコアは双方0行進。2対1とリードされたまま6回の第3打席に。初回と同じく2死無走者。2打席で分析は完了。下手すると最終打席かもしれず魔法を重ね掛け。


逆球がない分、予想はしやすい。阪村さんだって打ったんだから魔法使えば俺にもいける。


 1B2Sからの4球目。予想通りのぶれない球筋。ストライクゾーンのインローのコーナーにまるでダーツの的の星(ドまんなか)があるかのように放たれる。


 コントロールが良すぎたのかバットの真っ芯に捉えられた打球(ボール)投手(ピッチャー)方向に鋭く、低く、恐ろしい速度で飛んでいく。


 投手が反応したがそのすぐ横を通り抜け、中堅手(センター)も思わぬ伸びにバックを開始。フェンス方向に走り出すがそのすぐ上を通り過ぎ、放物線と呼ぶにはあまりにも低い弾道でフェンスぎりぎにスタンドに入り、空席にあたると大きな音をたてて前の椅子の背もたれに当たって落ちる。


 同点の単独本塁打(ソロアーチ)。まるで吸い込まれると言った打球だ。これに奮起したのか7回、阪村さんの2塁打を皮切りに2点をあげ逆転に成功。


 すでに9回にリリーフを言い渡されていた俺は、最後の打席は立っているだけ。

8回に中継ぎしてくれた岡村(おかむら)さんの後を受けてマウンドに。


 左右で4球ずつ練習投球すると大歓声が起こる。


 2番の代打で出た右打者を遊ゴロ、3番の右打者を145km/hの4SGで空振り三振に取ると4番は左打者。俺がグラブを左手につける。


 初球インサイドに150km/hの表示が出ると味方応援席から拍手が。初めて試合で使ったカーブで追い込むとアウトローいっぱいに4SB。で空振り三振。球速が151km/h。おお、自己ベスト更新。160km/hまであと9km/h。


 やっぱり投手は気持ちいいな。魔法の使用量の関係で長くはコントロールはもたないから現時点では先発完投は無理だけどね。


 今日のヒーローインタビューは本塁打の阪村さんと決勝の適時打(タイムリーヒット)を放った小清水さんだったので、セレモニーにも出ず、さっさとロッカールームに引っ込もうとしていると声をかけられる。補強選手なんて初めてで、どうにもこの学生の野球とは違ったノリについていけなかったからだ。

 

「あれ小原さん?」

「沢村君、つかまえられてよかった。会社と監督さんからあなたへの取材許可が下りたの。ここの主催の新聞社さんと系列のテレビ局さんと合同でね。」

ずらずらと後ろから出てくる大人たち。まあカメラマンやら音声さんやら照明さんとかスタッフをいれるとわりと威圧感がある。


「明日、練習が終わったら話を聞かせてね。」

「はあ。」

とりあえずここでは都市対抗に出た感想などを聞かれ無難に答えた。こんなところで変に「イキったり」すると大けがしそうだからな。


……で、翌日。

ご覧いただきありがとうございます。「都市対抗野球」という舞台がめずらしすぎる、と思っていただいた読者様はぜひ、ブクマと評価の方をよろしくお願いいたします。またよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ