表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/185

魔法まみれの決勝戦。

 決勝戦は相手が京都の高校ということもあり、甲子園球場は超満員であった。顕大平安は昭和13年に夏の甲子園初優勝とまさに古豪中の古豪、名門中の名門だ。凄いのはコンスタントに出場し続けているところにあるのだ。春夏合わせ60回以上とかまさにレジェンド。


 ただ、今年のチームは強いという前評判をさほど聞かなかったが勝ちあがってきた。ただ彼らの試合前練習を見ていてなにか違和感があった。異世界での既視感、みたいな。


 こちらの先発は中里さん。相手はエース壬生恭介(みぶきょうすけ)。2年生だ。平安は野手兼任を含む投手が五人いて、継投してくるという珍しいチーム。力ある選手が集まるプロ球団みたいな投手の使い方をするのだ。そういやうちも投手5人だったわ。


 リーグ戦ならいざ知らず、短期決戦でトーナメントなら試合が作れる投手一人に投げさせた方が間違いなく有利なのだ。しかし、平安は得点力こそ平均的だが、この大会では予選から通してまだ一点も取られていないのだ。


 一番、二番の強打者伊波さんと能登間さんが連続三振。能登間さんに至っては納得できないのかベンチに首を傾げてから引っ込んだ。


 打席に入るとその違和感の原因が理解できた。魔法だ。それも状態異常魔法(デバフ)である。耳にキーンとくる違和感。バッターボックスにはられた土魔法系のものだ。重力異常で三半規管を狂わせるやつ。


何より衝撃的だったのがその術式がかつて俺がいたことのある異世界の魔法と一致していたことである。


 どういうことだ?ただそこを考える前にやることがある。

魔法解除(ディスペル)。」

 一気に耳鳴りが止む。えらいものを使ってるな。作人館高校の熊野さんを思い出す。あれは結界魔法なので今回の方が低級魔法ではある。ただ低級魔法ということは消費魔力が低い分、回数を使えるという厄介さがある。


 野球では火系水系は使えないだろう。俺は壬生の投球を完全に捉える。文句無しの一発⋯⋯のはずだったが風で戻されフェンス際で失速、センターフライで1回終了。しまった、風系魔法による障壁か。チェンジと同時にその魔法の障壁は消失。そりゃ自分たちの攻撃まで防いでどうすんの、ってなるわな。


 故意に使っているのか、知らずに使っているのか?術者を見極めようと鑑定魔法を使う。術者はすぐに特定できた。主将の四番三塁手、金堂勇哉(こんどうゆうや)さん。結構派手に使っているから魔法消費量がすごいだろう。そう思ってステータス鑑定すると全然魔法消費していない、どういうことだ?


 しかも打者に支援魔法(バフ)を使っている形跡はない。打撃は実力なのね。ようは理解してないで行使している可能性すらある。


 中里さんだって世代ナンバー1クラスの投手。平安打線を丁寧なピッチングで付け入る隙を与えない。きっとこれまでの集大成として投げているはずだ。


 3回までの序盤は観客なら「見応えのある投手戦」というところだろう。4回からは二番手の先斗一幸(さきとかずゆき)さんに交代。ちなみに京都には同じ字で先斗町(ぽんとちょう)という地名がある。中の人が高校の修学旅行で行ったわ。


 先斗さんはいわゆる技巧派で壬生の速球で眼が慣れたところでコレはキツい。


 俺は風系魔法の障壁まで解除したものの、土系魔法の障壁が二重に貼ってあり、それに打球が引っかかって失速、再び凡打にさせられる。

 俺の方は鑑定やら解除魔法でだいぶ魔力量を消費している。ちょっとなんとかしないとまずいかも。俺は全ての魔法を一度に解除するスキルがない。前も言ったが、全体魔法の上位互換がレギュラーメンバーにいたから。所詮俺の魔法は「ざこスキル」なのだ。


 両チームの均衡が5回に崩れる。四番の金堂さんがソロ本塁打。完全に支援魔法(バフ)である命中率アップを使っていた。自分にしか使えないのか、あるいは自分のためにしか使わないのか。あれ、昨日亜美から渡された魔法具が反応している。


 俺がアンダーシャツとユニフォームの間に下がる魔道具ハジャオールを確認する。なんのことはない。敵チームに魔力を送っていたのは胆沢の中の「魔王のカケラ」。


 魔王のカケラの発動を止めるには今日一日分の俺の魔力では少し足りない。この世界で同系統の魔力を使えるのは⋯⋯亜美か。でも亜美に頼むにしてもベンチに携帯は持ち込み禁止だし。どうやって連絡する?


 俺は県予選の時、亜美の声が聞こえたことを思い出す。あれは通信魔法だったのでは。異世界では離れた仲間同士で使える光魔法を応用した通信魔法を使っていた。よく携帯電話ならぬ「携帯電波」とか言って笑ってたっけ。


 ええい、いちかばちかだ。球場内にいれば余裕で届くはず。俺は亜美の名を呼んだ。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ