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鬱憤のたまる決勝戦。

 良く晴れた朝だった。桜も満開である。4月から晴れて、いやなんとか無事に二年生となった。決勝戦は4/3。学生は春休みだが、世間様は火曜日なのでウイークデー。ホテルの部屋の窓から見下ろした街の風景は活気に溢れていた。


 試合は午後12時30分試合開始(プレイボール)。アメリカのアカデミーも春学期が始まっているため、亜美にあったらまた渡米。忙しいや。


 「飛ばないボール?結構なことだ。うちは転がして走る。」

強打を誇る青学との決勝戦について相手監督が語っていた。……うーん。真面目に今日の試合(ゲーム)について考えているのに。


「うっはー。これはいいオパーイですね。」

「いやいや、ひんぬーこそ正義。」


 駅売りスポーツ紙のアダルトページで盛り上がりやがって。これだから童貞どもは。そうだ。今の俺も童貞だった。


「早く準備しておけよ。今日はチェックアウトだからな。忘れ物などないように。」

監督に急かされる。


 身支度を整え、荷物をまとめてチェックアウト。従業員総出で見送ってくれた。どうもお世話になりました。もっともおびただしい荷物の搬出作業が試合後に待ち受けているのだが。

 

 10時過ぎに球場入り。試合に備える。今日は中里さんが先発。特に相手チームの一番二番は足が速いので要注意なのだ。中里さんは下手投げ(アンダースロー)という走者有利なフォームなので相性はあまり良くない。


 試合開始のサイレンが鳴る。今日も後攻めである。

一番、真田一久。そう一番の要注意人物。ただ吹部のお囃子がアニメの「一休さん」の主題歌を使っていたのに笑いを吹きそうになる。中の人の前世が昭和なので元ネタが分かるだけに余計可笑しい。他のやつらが気がつかない……仕方ない。気がついた監督と目が合った。


 真田、いきなりセーフティバント。巧い。そして速い。伊波さんのフィールディングも速いがそれを上回る。


 そして盗塁。しつこく牽制するも一気に二塁を陥れる。山鹿さんの平均盗塁阻止率は6割だ。凪沢や胆沢の時は8割を超えているが、下手投げ(アンダースロー)投手の宿命、中里さんの時は4割をきる。あっという間に無死二塁。


 さらに二番堀田さんもセーフティを狙うがなんとか一塁で刺す。一死三塁。

三番一角さんの左飛で悠々ホームイン。先制される。神宮で戦った作人館とほぼ同じ作戦だ。ただ4番の佐藤さんも強打者でヒットを打たれるが、堀田さんがセーフだったら2点目という場面だった。


 投手の大伴さんは右の本格派。流石に大門さんよりは下かな。低めにキッチリ決めてくる制球力は高い。能登間さんが一死で出て俺のヒットで三塁一塁。山鹿さんの犠飛で難なく同点。


 次の真田(同級生だから呼び捨て)の登場は3回一死から。中里さんのシンカーを打って二塁打。決め球を狙い打ちされて中里さんは顔をしかめる。


 堀田さんバントかと思いきやバスター。二遊間を抜ける前に能登間さんの美技。一塁はアウト。


「健!」

 ベンチからの声。しまった。真田は三塁を蹴って本塁突入。俺は本塁送球するがキャッチした山鹿さんのブロックをかいくぐってセーフ。2点目が。やばい。やっちまった。


 流石にイラッとした俺。ここは自分が悪いけど。その裏二死二塁から俺の放ったヒットは真田が守るセンターへ。能登間さん迷わず本塁へ。ところが尋常じゃないバックホーム。足が速い能登間さんが刺されてしまった。何という強肩。久しぶりにレーザービームという言葉を思い浮かべた。


 センター返し危険だな。次の回の山鹿さんはセンター前に打ったのに一塁でアウトという「センターゴロ」という珍しい記録に。山鹿さんは足が遅いのが難点なんだよなぁ。

「スタンドに放り込めば歩いて帰れるからいいだろ。」

強打者ゆえの自虐ネタである。


 足が速いというのは厄介で守備範囲の広さがやばいのだ。右中間、左中間というセーフティゾーンが無いに等しい。まさに「飛ばないボールの寵児(ちょうじ)」と言っていい。


 しかも、大伴さんはボールを低めに集めてくるのでなかなか長打が打ちづらいのだ。俺も加速をかけない限り俊足とは言えないから、打てるけど飛ばない、という感じだ。


 回が進み、5回にも真田の出塁から1点を失い3対1。ジワジワとくるんだよね。どうする俺?

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