つながった航路
様々な星々が沈む真っ黒な闇の中を、ただ惰性で進んでいく船。
その船には、自ら進むほどのエネルギーはない。
船が動いているのは、ただ遥か昔に進んでいた名残りがあるからだった。
その船の中に、クルーはいなかった。
生きているクルーは。
しかし、かつてはその船の中に、たくさんのクルーが過ごしていた。
笑い、語り合いながら、今日の行動や明日の事について誰しもが考えていた。
しかしその船には予測できないトラブルが起きた。
誰もそんな事が起きるとは思っていなかった。起きたのはそんな希少なトラブルだった。
結果、船は広すぎる宇宙で迷子になってしまった。
クルー達は様々な方法を試して足掻いたが、とうとうその努力が実を結ぶ事はなかった。
彼らが生きているうちにその船は、どこかにたどり着く事はなかった。
けれど、正常に動いていた頃の名残りを残した船は、ずっとずっと進んでいく。
命尽きたクルーを乗せていても、丈夫な船だけが長い間、ずっと星の海を漂い続けていた。
やがて、気が遠くなるほどの時間が過ぎた頃、真新しい船が近くを通りかかった。
真新しい船にのっていたクルー達は、その漂流船に気が付いた。
それは、今から一千年前に行方不明になった船だった。
古びた漂流船は、遠い昔に彼らが生活する同じ星から出発したきり、ついに戻らなかった。
クルー達は奇跡の再会に喜んで、漂流船を回収した。
そして、その漂流船をつれて星に戻ると、偶然の帰還に多くの人達が喜んだ。
しかし、遠い昔に旅立った船が、故郷の星に帰還できたのは偶然ではなかった。
その漂流船には、一千年の間何度もエネルギーが供給されていたからだ。
誰も知らないいくつもの船から、航行に必要なエネルギーが供給され、航路から外れていた時は誰かの手によって進路を修正されていた。
宇宙は広い。
そして、孤独なほどに静かで暗い。
けれど、その無限の暗闇の中には、顔も知らない誰かが、いまだ出会えていない人達とつながっている。