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短編とかその他

つながった航路

作者: 透坂雨音



 様々な星々が沈む真っ黒な闇の中を、ただ惰性で進んでいく船。

 その船には、自ら進むほどのエネルギーはない。

 船が動いているのは、ただ遥か昔に進んでいた名残りがあるからだった。


 その船の中に、クルーはいなかった。


 生きているクルーは。


 しかし、かつてはその船の中に、たくさんのクルーが過ごしていた。


 笑い、語り合いながら、今日の行動や明日の事について誰しもが考えていた。


 しかしその船には予測できないトラブルが起きた。


 誰もそんな事が起きるとは思っていなかった。起きたのはそんな希少なトラブルだった。


 結果、船は広すぎる宇宙で迷子になってしまった。


 クルー達は様々な方法を試して足掻いたが、とうとうその努力が実を結ぶ事はなかった。


 彼らが生きているうちにその船は、どこかにたどり着く事はなかった。


 けれど、正常に動いていた頃の名残りを残した船は、ずっとずっと進んでいく。

 命尽きたクルーを乗せていても、丈夫な船だけが長い間、ずっと星の海を漂い続けていた。







 やがて、気が遠くなるほどの時間が過ぎた頃、真新しい船が近くを通りかかった。


 真新しい船にのっていたクルー達は、その漂流船に気が付いた。


 それは、今から一千年前に行方不明になった船だった。


 古びた漂流船は、遠い昔に彼らが生活する同じ星から出発したきり、ついに戻らなかった。


 クルー達は奇跡の再会に喜んで、漂流船を回収した。


 そして、その漂流船をつれて星に戻ると、偶然の帰還に多くの人達が喜んだ。


 しかし、遠い昔に旅立った船が、故郷の星に帰還できたのは偶然ではなかった。


 その漂流船には、一千年の間何度もエネルギーが供給されていたからだ。


 誰も知らないいくつもの船から、航行に必要なエネルギーが供給され、航路から外れていた時は誰かの手によって進路を修正されていた。


 宇宙は広い。

 そして、孤独なほどに静かで暗い。


 けれど、その無限の暗闇の中には、顔も知らない誰かが、いまだ出会えていない人達とつながっている。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 一人だけど独りじゃないっていいですね。善意が起こした奇跡って素敵だなと思いました。
[良い点] しんとした暗闇の中に一筋の希望が感じられる点。 [一言] 今日という日にこの作品を拝読できてよかったなあと思いました。 なんだか温かい気持ちになりました。
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