~君と紡ぐ物語~
ネバダ州南部の、とある研究所の一角。慌ただしい足音と共に、なにやら大層に梱包された箱を抱え、女性研究員が入ってきた。
「博士、今日の発掘調査で見慣れない人骨のようなものが発掘されたのですが...」
「何!?新種か?遂にワシも歴史の教科書の1ページに載る日が来たのか?!」
「いやその、博s...」
「長年この研究所で働いて冷飯を食ってきた甲斐があったわい!今宵は祝宴じゃ!ビールを開けよ、肉を持ってこい!いやしかし、これでようやく役所の連中に大きな顔ができるわい。あいつら、考古学なんぞ補助金を出しても意味がないなどとほざきよる。今度会ったら札束でビンタしてやろうぞ!」
「博士!」
「なんじゃ?金なら山分けじゃぞ」
「いやそうではなく!何故かこの人骨、おかしいんですよ!」
「?」
博士は人骨を見て、アッと声をあげた。それもそうである。博士でなくても、考古学の知識がある人なら同じような反応をするであろう。
「何だこの...中頭蓋窩の異常な広さは..」
「明らかにおかしいです..それに、出土したのは3000年前の地層です。人類史からするとほんの少し前、という位置付けです...」
「しかし脳の容積、形から見ても、こんな物は40年以上この仕事をしてきて見たことがない...精密検査による調査と鑑定が必要だな。」
博士は大儀そうに、しかし輝きを顔から失わせることなく、箱を持って防塵研究室へ向かったのだった...
博士は集中しだすと何時間、何日間も食事など捨て置いて没頭するたちであった。長い長い時間が過ぎて、博士がヨロヨロと部屋から出てきた。
「これは..これは..我々並みの人間が関わってはいけない...私は..この世のタブーに切り込んでしまったかも...しれん」
そう言うと博士は、研究所からまるで疾風のごとく、出ていってしまった。
「博士!?どこへ行くのですか!博士!」
彼の行方は、誰も知らない。件の人骨も、塵のように消え失せてしまっていた。