4. 最強の武器
ウェスは顔を上げて真っ直ぐとコナタを見た。
「試すようで申し訳ないんですが、ひとつ質問してもいいですか?」
「もちろんさ」
コナタは快諾した。
「最強の武器ってどんな武器だと思います?」
ウェスの意外な質問にコナタは首を捻った。
「本当に試すような質問だね。そうだね、この国の者ならその質問に対してこう答えるだろう」
コナタはマリーと一度目を合わせる。そして、二人は呼吸を合わせ、声を揃えて「キーブの剣」、と答えた。
「もっと言えば、キーブの剣、クロノの双剣、イスコの槍だろうね」
自信満々に答えたコナタであったが、コナタの答えにウェスは見て分かるほどがっかりしていた。
「だけど、質問はどんな武器か? だったね? ならばこの三つの武器がどんな武器かを説明しなきゃいけない。ところで、ウェス君はこの国の始まりを知っているかな?」
「いいえ」
「そうか。じゃあ、少しその話をしてもいいかな? もちろん君の質問にも関係していることだしね」
ウェスはコクリと頷いた。
「キーブクロイス王国は革命によって生まれた国なんだ。その前の国は本当に酷かったらしくてね、多くの民衆が奴隷のような扱いを受けていたらしい。そんな民衆たちの前に突如現れたのがリーヌ三兄弟」
「あっ、あの花の名前」
「はい、そうです。あの花は革命のシンボルでもあったそうです。革命後に名前を変えてリーヌにしたんです」
「三兄弟の名前は上から順にキーブ、クロノ、イスコ。三人はそれぞれ剣、双剣、槍を持って戦った。
キーブの剣は天を裂き、クロノの双剣は右の剣は全てを焼き尽くし、左の剣は全てを凍てつかせ、そして、イスコの槍は大地をも砕いたと云われている。
三人の強大な力により革命は成功する。そして、彼らは新たな王となった。
もうわかってると思うけど、キーブクロイス王国は三人の名前キーブはそのままキーブ、クロノのクロ、イスコのイスを繋げて命名されたんだ」
ここでコナタはウェスが困った顔をしていることに気がついた。
「大丈夫だよ。ちゃんと君の質問に関係した話をするから。だからそんな顔をしないでおくれ」
戸惑うウェスの顔を見てコナタは優しげに言って笑う。そして、話を続ける。
「以上の話からこの国では最強の武器は今も語り継がれているキーブの剣、クロノの双剣、イスコの槍。多くの人々はそう答えるだろう。
しかし、代々武器職人をやってきたハウスランド家に生まれた僕の答えはちょっと違う。さっきも言ったようにキーブの剣は天を裂くとされている。
これは、それほどまでにキーブの剣術が優れていたからそう表現されたと考えている。さらにクロノ双剣の力は彼の冷静な判断力と情熱的な性格の二面性を、イスコの槍は彼の豪腕さを表現したと云われている。
だがハウスランド家に残っている資料では本当にそのような力を持っていたとされている。ウェス君、君はこの話を信じれるかい?」
コナタの質問にウェスはあえて答えなかった。
答えが返ってないことを悟ってコナタは再び口を開く。
「僕は信じている。なんせ僕の先祖が残した手記だからね」
コナタはそう言ってゆっくりと紅茶を飲んで喉を潤してから話を続ける。
「ではどのようにしてそんな武器を作るのか?
手記にはこう書かれている。彼らは己の魂の一部を武器に乗せた、と。
この一文はどういう意味なのか。単純に魂を込めて作った武器だと言いたいのか。
僕が思うにこれは違う。主語が彼らだからね。魂を乗せたのはリーヌ三兄弟であって僕の先祖の武器職人ではない。
では、こう考えるのはどうだろう。三人はそれほど大切に武器を扱ったと。僕にはこれもピンとこない。だったら、魂の一部なんて言い方をしないだろうからね。
だから僕はこう考えている。この一文は比喩などではなくそのまんまの意味だと。
方法はわからないが、彼らは本当に魂を武器に乗せた、込めた、取り込んだ、とね。
さあ、これでようやく君の質問に完全に答えられる。最強の武器とはどんな武器か?
それは魂が乗り移り強大な力を得た武器。
……こんなこと公に言ったら仕事の以来が減てしまだろうけど、どうだいウェス君? この答えは君のお気に召したかな?」
コナタはそう締めくくって、また紅茶を口に運んだ。
「ええ、とっても。……申し訳ないんですがもうひとつ質問してもいいですか?」
「なんだい?」
「武器に乗り移った魂は死者の魂でも問題ないと考えますか?」
「いい質問だね。実はいくつか死者の魂が乗り移ったと考えられている武器がある。その全てが今どこかにあるかわからないんだけどね。それらはリーヌ三兄弟の武器同様強大な力を得るとされたが大きな問題があった」
コナタは一度言葉を区切りウェスの顔を見て意味深に笑った。
「持ち主の体が乗っ取られてしまうんだ。だから、それらは呪いの武器と云われている」
「呪いの武器……」
「そう、三兄弟の武器は伝説の武器と評されるのに、それらは呪いの武器と非難される。恐らく力の根っこは同じなのにね。皮肉な話だよ」
そう言うとコナタは微かに笑った。
「それで、どうだい? 僕はカナタ・ハウスランドの代わりに君の要件とやらを聞く人間に値するかな?」
「……少々、時間をもらってよろしいですか?」
ウェスの再度の要求にコナタは怪訝な顔をしたがすぐに柔らかい表情を作って「どうぞ」とだけ言った。
「ジェシー、僕はこの人に話ししても問題ないと思う。ううん、それどころが話すべきだと思う」
「ジェシーは最初からいいよって言ってたよ」
ジェシーはいつもと変わらぬ調子で言う。そんなジェシーの声に拍子抜けしたウェスはいつの間にか入っていた肩の力を抜いた。




