31.不穏な一室
とある一室で若い男が赤ワインをを飲みながら複数の女を侍らかせていた。まだ陽は高いのに男の顔は赤く染まり酔っぱらっているのは明かだった。
その時、部屋の窓からノックが聞こえてきた。一斉に音がした方を見たが何もいなかった。そもそも、この部屋は5階なので誰かがノックするはずなどはない。風の音であろうと思った女たちは男の奉仕に戻った。しかし、男は違った。
男が指でパチンっと鳴らすと、女たちは不思議そうな顔をしながらいそいそと部屋を後にする。
男はよろよろと立ち上がりふらふらと歩き出し窓を開けた。
「よう、ルークおかえり……って、ブハハハハ、なんだ、その姿は」
窓の外の熊のぬいぐるみの残骸を見た男は最初怪訝そうな顔をしたがやがておかしそうに笑い出した。
ルークは男の脇をすり抜け部屋に入るとテーブル上の赤ワインの
瓶の横に座った。
「けっ、笑ってんじゃねーよ、この酔っ払いが。こっちは色々あったんだよ」
それでも男は笑うのをやめず、ルークの横の瓶をかっさらうとふらふらと歩いてソファーに倒れこむように座った。
「その色々とはなんだ? 任務は遂行できたのか?」
いつの間にか部屋のドアの前に男が立っていた。
「あらら、俺の部屋に入るならノックぐらいしてよ」
「したはずだが、それでどうなんだ? ルーク」
男は静かに部屋の扉を閉めた。
「いいや、失敗した」
「失敗だと? 最低でもハックは殺ったんだろな」
「いいや」
「ほう。それでよくのこのこ帰ってこれたな」
「この姿を見ればわかるだろ? とんでもない邪魔が入ったんだよ」
「とんでもない邪魔?」
「ジェシーだよ」
二人の男の顔色が変わる。
「ジェシーに会ったのか?」
気がつけば初老の男が椅子に座ってワイングラスを傾けていた。
「おいおい、本当にいつからいたんだよ」
「最初からだ。それでどうなんだ? ルーク」
「ああ、お陰様でこの姿だ」
「喰われたか。宿主は誰だ?」
「ウェスとか言う銀髪の少年だ」
「やはり、あの小僧か。どうしますか?」
初老の男はグラスのワインを一気に飲み干してから答える。
「全員に伝えろ、ジェシーを見つけ次第回収しろと」
「少年の方は如何いたしますか?」
「殺していい」
「仰せのままに」
「ルークよ。ジェシーの情報に免じて今回の失敗は不問にしてやろう」
「そりゃ、ありがとうございます」
「体も修復しといてやれ」
初老の男はそこまで言うと一瞬で消えた。
「ったく、突然現れたり突然消えたり嫌な爺さんだぜ。……ってお前らもかよ」
若い男がそう愚痴を零している間にルークと男も部屋から出ていた。ひとり取り残された若い男はワインの瓶をラッパ飲みした。
「ジェシーねー、まあ俺には関係ないね」
直後、先ほどの女たちが舞い戻ってきた。若い男は下品な笑みを浮かべるとと女たちの胸に飛び込むのであった。




