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人喰いジェシー   作者: 未々山田
第一章 フローズン村~港町コーネル編 最強の騎士と独立軍
29/33

28.プロヴァンスの敗北

 翌朝、ウェスとジェシーがキーブクロイス王国兵団コーネル支部のオスティーの部屋を訪ねた時には既にオスティー、レオナ、カイムとマイムそしてレオナが揃っていた。


「やあ、来たか。昨夜は急な解散ですまなかった」

「いえ、大丈夫です。それよりもハックさんとメアリーちゃんはどうでしたか?」


「ハックはまだ動ける状態ではないが問題ないだろう、頑丈さが最大の取り柄だからな。娘のメアリーちゃんの方だが、身体の方にはなんの異常も見られないんだが、記憶の方に異常が見られてだな」

「記憶ですか」


「ああ、どうやらここ数か月の記憶がところどころ曖昧らしい。恐らくはあの熊ルークが表に出たり、完全に操っていた間の記憶がおかしいのだろう。その点はむしろ好都合なのだが」

「好都合?」

 カイムが聞き返す。


「ああ、好都合だ。メアリーちゃんがルークに完全に操られていた時の記憶は少女の体験には好ましくないことが多かったはずだ。特に自分の父親を殺そうとする体験などな」

 ウェスは口には出さなかったが、ルークが意図的にそうしたのだと悟った。ジェシーが同意しているのを感じて思わず笑みを零す。


「それで今後の我が隊の予定なんだが、レオナ」

「はっ、ここからは碌に今後の予定も計画も話せない間抜けな隊長に代わり僭越ながら私が説明いたします」

「誰が間抜けだ、誰が」

 オスティーの正当な抗議を無視して話始める。


「今後、私たちはこれまで通り白の騎士団司令部より受ける任務をこなしながら、ルークが所属する組織を見つけ出し、調べる必要があります」

「見つけ出すと言ってもどうやってあんなの見つけるんですか?」

 マイムが当然の疑問を口にする。


「そこについては議論が必要なので後にします。先に我が隊に与えられた任務について話します。我々がコーネルに派遣された目的は反乱軍の鎮静化、恐らく司令部が期待していたのは反乱軍の壊滅でしょうが、我々は反乱軍と憲兵団コーネル支部との停戦協定を締結させることによりこの任務を達成とします」

「反乱軍側は隊長の旧友だとわかったので可能だと思いますが、コーネルの憲兵団が承諾しますかね?」


「マイムの言う通り、犠牲が出ている上に、反乱軍側と違って他の組織の企みがあったと理解できない憲兵団は納得いかないでしょう」

「では、どうやって?」


「なので、コーネルの憲兵団の上層部を丸ごと入れ替えます」

 真顔のまま答える横でオスティーはにやりと笑う。


「丸ごと? そんなこと可能なんですか? それに新しく来る憲兵の上級職が納得するとは限らないのでは?」

「まず可能かどうかという質問についてですが、可能です。私たちが来る前の憲兵団上層部は反乱軍に対して何の対応もできていませんでした。もっと言ってしまえば彼らがもう少しまともに対応していれば反乱軍側にも被害が出ていることに気が付き第三の組織の存在にもっと早く気が付けたはずです」


「あのー、僕たちも反乱軍側に被害が出ていると気づいたのはつい昨日のことなんですけど」

 カイムが申し訳なさそうに言う。


「その点は気にするな。ここに赴任した初日に私がハックと会いその事実を知ったから、敵を炙り出すために反乱軍側の被害について口止めしていたんだ」


「そうだったのですか。私たちには教えてくれても良かったじゃないですか」

「当初は憲兵団の中に犯人がいると思っていたからな。ただでさえ我々騎士団が来て警戒しているところに少しでもそんな素振りを見せたら尻尾を掴めないと思ってな」


「そういうことだそうです。私も不満ですが結果的に正解だったので何も言いません」

「不満と言ってるじゃないか」

 やはりオスティーの発言は無視してレオナは話を続ける。


「それで、もうひとつの質問の方ですがそちらも問題ありません。既に隊長が団長に連絡し、支部長にはハンゲル少佐、副支部長にはホーミィ大尉、ゲルニー中尉が就くことが決定しています」


「名前を聞いてもピンと来ないだろう、簡単に言えば3人とも私とハックの同期だ」

「ああ、なるほど。ハック……さんの友人ってことですね」

 カイムは合点が行ったようでポンっと手を叩く。


「そういうことです。お三方の赴任まで1週間ほどかかります。私たちはそれまでコーネルに滞在し、停戦の締結を見届けた後、本拠地に帰ります」

「本拠地ってどこですか?」

 それまで黙って聞いていたウェスが問う。


「お二人、いえケイト隊員も含めた3人にはまだ話していませんでしたね。私たち8番隊の本拠地はキーブクロイス王国城の北に位置するノースシティにあります。城の北にあると言っても他の4方位街と違い直接城下町には行けないんですけどね」

「ふーん、よくわからないけど、行けばわかるのかな?」

 そもそもここまでの話を理解する気があったのか怪しいジェシーが久しぶりに発言した。


「そうですね、お二人が目指すイーストタウンにも行けば言ってる意味がよくわかると思います。私たちは特別な任務がない場合はノースシティの治安を維持しながら待機です。ここまでがウェス君とジェシーを除いた私たちの今後の表の任務の予定です」

「表?」

 少し間抜けなトーンでカイムが言う。


「はい、表です。同時並行で裏の任務をこなしていきます」

「謎の組織の調査ですね」

 マイムの言葉にレオナはコクリと頷く。


「そういうことです」

「うーん、なんというか謎の組織って呼び方じゃ気合入んないですね、なんか組織名とかないの、ケイト隊員?」

 カイムの突然の質問にケイトは言葉を窮した。表情は誰からも見えないがケイトが困っているのは明かであった。


「カイムの発言なんて気にしなくていいぞ、ケイト隊員」

「いえ、期待に応えられなくてすみま……あっ!」

「どうした? 何か思い出したか?」


「組織名なのかはわかりませんが……」

「なんだ?」


「エリュシオン」

「エリュシオン?」


「はい、エリュシオンです。ルークは私に初めて会ったときエリュシオンのために働け、期待しているよ、と言っていました。それが組織名化はわかりませんが……」

「エリュシオン……? どういう意味だ? ……まあいい、では、これからは謎の組織改めエリュシオンと呼称しよう」

「「「了解です」」」

 レオナとマイム、カイムが間髪置かず答えた。遅れてウェスも言おうとしてやめた。


「エリュシオンかー、なんか無駄にカッコいい響きでムカつきますね」

 カイムの感想などどうでもいいと言わんばかりに

「それでは話を戻します」

 とレオナが素っ気なく告げる。


 話を続けようとするレオナをオスティーが制した。

「思い出した、その前にケイト隊員に確認したいことがある。君はいつ、どうやってレオナに憑りついたのだ?」

「それはあなたたち、あっ、いえ隊長たちが赴任してすぐにコナタ・ハウスランドの武器を受注したではないですか? その時に紛れ込んだのです。ルークが操っていた憲兵のひとりがレオナ隊長補佐に直接手渡したことにより憑りつきが完了しました」


「そんな早い段階からか。最初から我が隊に潜り込むことを狙っていたと考えるべきか」

「はい、私の記憶がはっきりして最初に与えられた任務がレオナ隊長補佐に憑りつくことだったのでそうだと思います」


「憲兵団と反乱軍の争いを激化させより上位の隊を呼び寄せそこにケイト隊員を潜り込ませることが目的だったか? いずれにせよ、今後手に取るものには警戒したほうが良いな。話の腰を折ってすまない、話を進めてくれ」

 満足そうにオスティーは深く座りなおした。一方、話を遮られたレオナは不満そうにオスティーも睨む。


「全くです。では話を戻します。裏の任務とはエリュシオンを見つけ出すことです。特に、今回、ケイト隊員が私に憑りついていたように王国兵団の他の隊にも忍び込んでいる可能性があります。なので、適当な理由をつけて各地に赴き、奴らが紛れ込んでいないか見極め、発見次第対処します」


「結局その、見つけ出すって言ってもどうやるんですか? ジェシーやケイト隊員みたいに喋ってくれれば一発でわかりますけど」


「そのためのケイト隊員とジェシーです。尤も、ウェス君とジェシーは完全に別行動なので、ほぼほぼケ

イト隊員に頼ることになるのですが……」

「はい、任せてください」

 オスティーとレオナの期待通りの返答をケイトはした。しかし、その返答に以外にもジェシーが待てをかけた。

「そのことなんだけど、あんまり期待しない方がいいかもしれないんだな」


「どういうことだ? ジェシー」

 ジェシーの予想外の発言にオスティーは眉をしかめた。


「気配をはっきりと感じられるのは表に出ている時だけなんだな。ルークは常にメアリー以外にも操っていた6人との線が残っていたからなんとなく感じられただけかもしれないんだな」

「だけど、ジェシーはケイトさんのわずかな気配も最初から感じてじゃないか」

 その事実を唯一知っているウェスが問う。


「そこなんだな。確かにジェシーは初めて会った時からなんか嫌な気配は感じていたんだな。それが誰からなのかはわからなかったけど。でも、ケイトの気配があれを食べて以来変わったんだな」

「あれって、あの黒い影?」


「そうなんだな。今のケイトからはあれが憑いていた頃程の気配をというかいい匂いがしないんだな」

「いい匂いって」


「きっと今のケイトが本気で隠れとうと思えばジェシーでもわずかな気配も感じ取るのは難しいんだな」

「じゃあ、ジェシーがケイトが隠れた状態でもわずかながらも感じていたのはあの黒い影の方だってことだね?」


「そうなんだな。あの黒い影はきっと隠れきれないんだな。あの美味しそうな匂いは隠しきれないんだな」

「それではジェシーとケイト隊員にも奴らは見つけられないと?」


「もしそいつがケイトがレオナの体を完全に奪っていたように、完全に表に出てればすぐにわかるんだな。でも、ケイトみたいに隠れて活動していたら難しいかもしれないんだな」

 オスティーは少し考えるように黙り込んでから視線をケイトに向けた。

「ケイト隊員。君はどう思う」


「はい、私はジェシー隊員」

「ジェシーでいいんだな」


「あっ、はい。私は、いえ私だけじゃなくあのルークもジェシーの気配を感じ取れていませんでした。ただ、ルークはオスティー隊長たちの急な動きに不自然さを感じて、あの日、オスティー隊長たちが来た日は注意深く見張っていたのです。そして、3人しかいないはずの会館から4つ目の魂を感じたのでルークは強行作戦に移行したのです」


「じゃあ、ジェシーもうまく隠れることができるんだね」

「当然なんだな」


「では、ルークがジェシーの存在に確信を持ったのはジェシーがハックに自己紹介したときか。しかし、困ったなそれでは予想以上に奴ら、おっと、せっかく名前を付けたんだし使っておくか。エリュシオンを探すのは難しいな」

「それでもケイト隊員がいるといないとでは全然違います」

 レオナが予定外に逸れた話の軌道を修正するように言う。


「それはわかっている。しかし、……情報が足りないな。予定を変更する、ここでの任務は私とレオナ隊長補佐、ケイト隊員だけで行う。カイム隊員、マイム隊員は王国図書館に行き魂だけがの存在について調べてくれ。あと、人喰いジェシーについてもだ」

「「「「了解です」」」」

 今度はケイトも声を揃えた。そのことに対し、ウェスは少し羨ましいと感じながら、一方で気になる単語があった。


「王国図書館……オスティーさん、僕たちもそこに行けませんか?」

「気持ちはわかるが、図書館があるのはイーストタウン同様、異国の者は許可証がなければ入れないサウスシティにある。許可証の申請は今朝のうちにレオナ補佐が済ませてくれたが、許可証が出るまでまだまだ時間がかかる」

 

 この時、ようやくウェスは許可証の存在を思い出す。

「そうだ、許可証! 出してくれるんですね、ありがとうございます」

「無論だ、でなければ隊員としての仕事に支障をきたすからな。それと、例の物を」

 レオナがすかさずウェスにカードを手渡す。


「これは?」

「私が認めた特別来賓者だと証明するカードだ。これさえあれば城周辺の街以外は審査なく入れるし、憲兵からの鬱陶しい追及もない。要するに君たち異国の者でも何不自由なく、いや、それどころが色々と優遇されるということだ」


「優遇ですか?」

「これさえあれば、王国兵団が運営する施設はこちら持ちで利用できます。どの街にも王国兵のためのホテルや食堂がありますのでそちらを利用するときに使ってください」


「凄いんだな。これでお金の心配はなくなったんだな」

「いいんですか、こんな凄いもの」


「君たちは8番隊の隊員なんだから当然の権利だ、気にするな。カードの裏に8番隊舎の電話番号が書かれている。何かあった時はそこに連絡してくれ、私が今のように他の場所で任務についていても隊舎の残ってる連中は私の居場所を把握しているから、すぐに私に繋げるようになっている」


 ウェスは言われるままにカードの裏を確認した。

「わかりました。ありがとうございます。でも、このカードがあっても僕とジェシーはまだイーストタウンにも図書館のあるサウスシティにも入れないので行くところがないのですが」


「その点に関してはレオナ補佐から提案があるそうだ」

「レオナさんから?」

 

 ウェスの目とレオナの目が合うとレオナは微かに笑った。

「はい。少々遠回りになりますが私のお話をお聞きください。私の生まれはキーブクロイス王国イースト地方にある3連城壁街プロヴァンスという街で生まれました」


 聞きなれない単語にウェスは首を傾げた。

「3連城壁街ってなんですか?」


「プロヴァンスは3つの村が合併しできた街といわれています。そのため3連です。そして城壁というのは行けばわかるのですが、三つの村がすぐ東にある敵国ベイベイルから守るために村人たちが合同で築いた王国最長の防壁のことを指します。その見た目から城もないのに城壁と呼ばれています。この二つの特徴を表し、3連城壁街と呼ばれています」


「最長の防壁……そんなものを築かなきゃいけないほどそのベイベイルという国が強国ということですか?」


「いえ、そういうわけではありません。歴史的事情があるのですがその話はあとにします。重要なのは街の名プロヴァンスの方にあります」

「プロヴァンス?」


「はい、プロヴァンスです。プロヴァンスとはとある家族の性です。その家族に感謝の意を示し、その性から取って街の名前にしたと言われています」

「もしかして、その家族って……」

 話の流れでウェスは予感する。


「はい、その家族というのがジェシーとその両親であると聞いています」

「初耳だな。では王国唯一の敗戦『プロヴァンスの敗戦』のプロヴァンスは地名ではなく人名から来ているということか?」


「はい、そうです。敗戦の将の性がプロヴァンスなのです」

「しかし、なぜ敗戦の将の性を街の名にしたんだ?」


「先ほども言った通りプロヴァンスは3つの村が合併してできたのですが、3つの村が合併することになった原因はプロヴァンスの敗戦によって3つの村が壊滅したからです。逃げ残った人たちで街を造り、そして、恨むべき相手の名を忘れぬよう街の名にしたのです」


「それでも、恨んでいる相手の性を街の名にするなんてちょっと変わってますね」

「その通りです。今説明した街の名の由来は、それは表向きの理由で実際は違います。街の名をプロヴァンスにした理由はプロヴァンス一家に感謝の意を示し、つけられたというのが真実です」


「私の記憶では『プロヴァンスの敗戦』の将軍は王国史上最大の愚将と評されているが、なぜ直接被害を受けた者たちが造り上げた街でそんなことになる?」

 プロヴァンスの敗北はキーブクロイス王国の兵士ならば必ず入団時に王国唯一の敗戦として学ぶことになる。その時に教えられる敗北の将は貶され罵倒されることはあっても決して褒め称えられるようなことはなかった。


「それについては正直わかりません。詳細についてはいわばタブーなのです。しかし、街のお年寄りは皆言います。プロヴァンス家への感謝を忘れてはいけない、と。そして私の代までは確実にプロヴァンスは感謝の対象として伝えられています」


「将軍だけでなく、家族に感謝というのも気になるな」

「家族にというのはジェシーと母親にも何かしらの恩があったとみて間違いないと思います。当然、『人喰いジェシー』の童話はプロヴァンスにもありましたが、読み終えると必ず本当のジェシーはこんな娘じゃなくて、ととても良い娘で可愛らしい女の子だったと付け加えられました」

 ジェシーが得意げに鼻をふふんっと鳴らした。


「かつてのプロヴァンスの人は童話のジェシーのような好き嫌いで人を喰らうジェシーではなく本当のジェシーを知っているということですね。それにしても、『人喰いジェシー』のジェシーと『プロヴァンスの敗戦』の将が親子なんて初めて知りました」


「その事実を知ったらジェシーは王を喰おうとして死刑にされたのではなく、父親の責任をとらされ死刑にされたのかと考えてしまうからな。そうなると、なんの罪もない子供が処刑されたことになり王国への信頼が揺らぐことになる。その事実を誤魔化すために作られたのが『人喰いジェシー』なのでは?」


「それでは『人喰いジェシー』を作ったのは王国側の人間ということですか?」

「そんな面倒なことしないでジェシー死刑の事実を消せばいいんじゃないですか?」

「もし死刑にしたなら記録が残っているはず。もし記録になくても民の記憶には残る。そうなると何らかの形で残る可能性は高いく事実を消すのは難しい」


「そうだとしても、やはりジェシーをモチーフにした童話を王国側が残すのは不自然じゃないですか? それよりも王国がジェシーを死刑したことに対する抗議として民衆が残したのでは?」

「その可能性もあるか……いずれにしても、ジェシーが死刑されたのかどうかは大事だな。調べる価値はありそうだな。カイム、マイム」


「わかっています、人喰いジェシーとプロヴァンスの敗戦あとジェシーの死刑の記録があるかどうかも調べればいいんですね」

「ああ、その通りだ、頼んだぞ」


 トントン拍子に出てきたジェシーの新事実にウェスは戸惑い、さらにはそれについてオスティーたちが総出で調べることに申し訳ない気持ちでいっぱいであった。

「いいんですか? その辺はジェシーと僕の問題でエリュシオンと繋がるとは思えないことなのでわざわざ皆さんに調べてもらうなんて」


「気にするな。君たちは我が隊の隊員なのだから。それにエリュシオンとジェシーはなんらかの関係があると私は考えている。なんせ、奴らにはジェシーと同じ、物に魂を宿したのが他にもいる可能性が高いんだからな。そうなるとジェシーについて調べるのも重要だ。それにルークは童話のジェシーじゃなくて包丁のジェシーを知っていただろ?」


「あっ! そう言われたらそうですね」

 オスティーの言う通りルークはウェスが持つ包丁を見てジェシーだとわかったのだ。ルークはジェシーが包丁に憑りついていると知っていたことになる。


「何か関係あるとみていいだろ」

「うーんと、とりあえず、その敗戦の将プロヴァンスっていうのがジェシーのお父さんなのかな?」

 暫し聞くのに徹していたジェシーがジェシーにとって最も気になっている部分だけを問う。


「恐らくは」

 レオナは淡々と答えた。


「レオナさんの話だと、そのプロヴァンスというのがジェシーの性なんだよ。聞き覚えないのか」

「どうかな? ジェシーは皆にジェシーと呼ばれていた気がするんだな」


「確かに、小さな子供を性で呼ぶことってあまりないですね」

 カイムの同意をかき消すようにレオナはパンパンと手を叩き議論を止めて注目を自分に向けた。


「話を戻します。ここまでの話からわかると思いますがウェス君とジェシーは私の故郷3連城壁街プロヴァンスに行ってみるというのはどうでしょうか?」

「僕はレオナさんの提案に賛成だけどジェシーはどうだい?」

「ジェシーも賛成なんだな。他に行くところもないわけだし」


「ふむ、これで今後の予定が決まったな。私とレオナ隊長補佐、ケイト隊員はここに残り独立軍と停戦協定を締結させたのちに我が隊の本拠地ノースシティに帰還。カイム隊員とマイム隊員はサウスシティの王国図書館に行き調べ物をしたのち本拠地に帰還。そして、ウェス君とジェシーは3連城壁街プロヴァンスに行きプロヴァンスとジェシーの関係性について調べたのち本拠地に帰還。いずれも今日より2週間後に本拠地帰還とする」

「「「了解です」」」


「その頃にはウェス君の許可証も降りているだろうしな」

「では、早速私とカイムは今日の午後にも発ちます」


「いや、今日の夜に来客があるから、発つのは明日にしてくれ」

「来客ですか?」


「ああ、予定では18時に着く。表のレストランを予約しているからその時分に集合してくれ」

「あの、僕たちもですか?」

 マイム同様、今日の午後には発とうと思っていたウェスが確認する。


「当然だ。だから、ウェス君とジェシーも発つのは明日にしてくれ」

「それでは一時解散と致します。カイムとマイムは明日発つ準備を、ウェス君とジェシーは自由に過ごしてください。ケイト隊員は……我が隊に入隊したことですし王国兵団の規律や歴史でも勉強しましょうか。それでは皆さんまた後でお会いしましょう、解散」

 レオナの号令と共にウェスとジェシー、カイムとマイムは部屋をあとにした。


 部屋を出てすぐカイムはため息を吐く。

「ケイト隊員もお気の毒に」

「お気の毒ですか?」

 カイムの言葉の意味を理解できないウェスは聞き返す。


「ああ、お気の毒さ。兵団の規律や歴史は新兵の訓練時にあっだったけど覚えることが多いうえにとてもつまらないからね」

「規律はともかく歴史は地獄ね」

 マイムが苦い表情をしてカイムに同意した。


「マイムさんでもそう思うほどなんですか。……僕たちも学んだ方がいいんですかね?」

「別にいいんじゃないかな? ケイト隊員は今暇だからっていうだけだからね。ウェス君とジェシーは明日の準備をするべきだよ」


「うーん、でも特に準備なんてないんですよね。荷物は最小限でいつもまとめてるので」

「それもそうね。まあ、夕食までゆっくりしてればいいのよ。それにせっかくコーネルに来たのにどこも観光していないんでしょ? ここは漁港の街よ。美味しい魚が食べられるわよ」


「夕食前に言うことかよ」

「……それもそうね」

 

「いいんだな、お魚食べたいんだな」

 食欲が無限大のジェシーはマイムの提案に乗り気であった。

「ジェシー、気持ちはわかるけど人前じゃ僕たちの食事は見せられないよ。うーん、どうしようかな……あっ!」


「何か思いついたかい?」

「カイムさん、この街にも図書館はありますか?」


「図書館? 小さいけどあるよ」

「僕でも使えますか?」


 ウェスがなぜ図書館に行きたいのかマイムはすぐに理解した。

「問題ないはずよ。調べたいのは『プロヴァンスの敗北』ね?」

「はい、プロヴァンスに行く前に知っておきたいんですね」

「ジェシーも気になるんだな」


「図書館はどこにあるんですか?」

「時間もあることだいこのまま案内するわ」

 こうして4人は図書館を目指すことにした。



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