23. 喰わずのジェシー
気が付けば降り続いていた雨は強く、大粒になっていた。
レンガ街の袋小路で熊のぬいぐるみと対峙するウェスとジェシーの頭上にも冷たい雨は容赦なく降り注いだ。
赤い熊のぬいぐるみの頭上にに大きな雨粒が落ちると、ぬいぐるみはゆっくりと空を見上げた。
「僕の体に雨は良くない。雨も強くなってきたことだし、そろそろ終わらせようか」
ティムはメアリーの肩から飛び降り笑う。
同時にメアリーも2歩進み二人の男の間に並び立つ。
「次は3人がかりで行くけど、反撃不可能な状況でいつまで躱せるかな?」
ティムの合図で操られているメアリーとハックの部下の男二人はウェスとジェシーに飛び掛かった。
ウェスは微動だにせず。3人が来るのを待つ。そして、3人がウェスの射程距離に入った瞬間、
「ごめんよ」
ウェスは今度は迷いなくジェシーを振るう。
「馬鹿な! 喰う気か!?」
そこまで言ってティムはジェシーの異変に気が付く。ジェシーにはっきりと歯が見え、その歯はガチガチに閉じられていた。
口を閉じたままのジェシーによって二人の男は喰われることなく左右に吹き飛ばされ、少し遅れて突進してきたメアリーはその場に伏せ落とされた。
ジェシーは歯をカチカチと鳴らした。
「ジェシーも食べるものくらい選ぶんだな。食べたくないときは歯を食い縛ればいいだけなんだな」
「そんなのありかよ!」
驚くティムを無視してウェスは駆け出し一気に距離を詰める。そして、ティムの頭目掛けて一気にジェシーを振り下ろした。ティムは咄嗟に躱そうとするが躱しきれずティムの右腕はジェシーに噛みつかれ、喰いちぎられた。バランスを崩したティムはそのまま勢いよく横に転がっていった。
「糞っ! 俺の腕を!」
すぐさま立ち上がり毒づくティムとは対照的にウェスとジェシーは茫然と立ち尽くし全く動かなかった。
ティムの腕を喰った瞬間、ウェスとジェシーの脳内にとある映像が駆け巡った。
そして、呟く。
「ルーク……シティ?」
ティムはぎょっとした。
「お前、なぜその名を?」
ウェスはゆっくりと視線を熊のぬいぐるみへと移した。
「ルーク……なんで? なんで妹まで殺したんだ!?」
ウェスの語気にははっきりと怒りの念が込められていた。しかし、それ以上に怒りを露わにしたのはティムと名乗っていた熊のぬいぐるみに憑りつくルークであった。
「お前! 一体、何を見た!?」
ルークの言う通りウェスとジェシーは見たのである。ルークの記憶を。




