20. 雷の正体
ティムはそう零しておもむろに両手を挙げた。と、同時にメアリーも両手を挙げる。
「なんだ? 降参か?」
そうオスティーが笑った瞬間、さっきまで3人がいた建物の上からひとりの女が飛び降り、オスティーの背後に立った。気配で察知したオスティーは素早く反転し身構え、飛び降りてきた人物の顔を見て微かに笑った。
「やっぱり、君もか……レオナ」
オスティーの言葉を受けなぜか嬉しそうにレオナは笑った。その笑顔にオスティーは違和感を覚えた。
「違うんだよ、オスティー!」
ジェシーが叫んだ。ジェシーの言葉の意味が理解できなかったウェスとオスティー思わず顔を見合わせた。その一方でジェシーの言葉の意味を理解していたティムとレオナは不敵に笑った。
「そいつはまた別の奴なんだな!」
そうジェシーが叫ぶとほぼ同時にレオナは剣を抜きオスティーに飛び掛かった。オスティーはジェシーの言葉の意味を理解できぬままレオナの一撃を受け止めた。
刃越しに二人の目が合う。そして、レオナは笑った。
次の瞬間、レオナの剣先からパチッという微かな音とともに光が発せられる。
オスティーはその光が視界に入った瞬間、咄嗟に大きく後方へ飛んだ。それは王国最強の騎士だからこそ為せた判断であった。しかし、流石のオスティーも次に起きる出来事を予想できていたわけではなかった。
そして、剣先から発せられた光が四方に八方に爆ぜる、雷となって。
「か、雷」
ウェスが呟く。ウェスは思い出すあの雨の日の夜を。あの日の雷は音がなかった。そして、気が付くウェスとジェシーが見た雷が自然の物ではなくレオナが発したものだと。
その雷からオスティーは間一髪逃れる。しかし、それは実力ではなく完全に運であった。それを自覚しているオスティーは顔を強張らせた。
「初見でこれを躱すとは、褒めるしかありません」
褒めると言う割にはレオナは表情を変えなかった。
「オスティー、レオナの剣には別の奴がいるんだな!」
再びジェシーが叫ぶ。その言葉でオスティーは理解した。
「この雷はそういうことか……貴様は誰だ」
オスティーは躱したときについた顔の泥を拭いながら言う。
「名を名乗る必要はあるのですか?」
レオナに乗り移った何者かは答えた。
「ふふ、悪いね、残念なことに彼女は自分の名を覚えていないんだよ」
ティムは愉快そうに笑う。そして再び手を挙げる。レオナは素早く反応しレオナはティムに向き直す。こ
れだけで二人の関係がわかる。ティムが上でレオに憑いてる奴が下である。
「ここは任せるぞ」
ティムの言葉にレオナはコクリと頷く。それを見てティムにを肩に乗せたメアリーが二人の操り人形を率
いて走り出す。向かう先はウェスたちがいる方向とは真逆。すなわち逃亡である。
「糞っ、逃がすか」
オスティーがすぐに後を追おうとしたが素早くレオナが目の前に立ちはだかった。
オスティーは立ちはだかるレオナを見て思う。目の前にいるレオナは知っているレオナであり知らないレオナである。
――一体、いつから?
自身の疑問を打ち消すようにオスティーは首を振る。そして、叫ぶ。
「ウェス君、ジェシー奴を逃がすな! ……彼女は俺が何とかする」
その言葉にウェスはすぐに動けだせなかった。オスティーの何とかするという言葉がオスティーと出会ってから今までで一番弱弱しかったからだ。
「行くんだよ、ウェス。オスティーを信じよう」
「早く行け!」
ジェシーとオスティーの言葉を受けウェスは拳を強く握りしめ、オスティーを見て強く頷き走り出した。
「それでいい」
オスティーは嬉しそうに笑った。
「いいのですか? 二人を行かせて?」
「二人か……認識しているな。問題ない。君は私一人で止める」
「最強の騎士でしたか? しかし、あなたの剣はただの剣。それで止めれると思っているとは舐められたもんですね」
レオナの言葉を受けオスティーは笑う。
「君は私を近くで見ていたはずだろ? だったらわかるはずだろ? 何も問題ないと」
レオナは不愉快であったのだろう、わずかに顔を歪めた




