16. 独立軍リーダー ハック
四人が独立軍の男達に連行された先は小さな建物であった。入口の横に「コーネル南会館」と書かれた木製の看板があった。
会館に入るとすぐに大きな部屋へと繋がっていた。部屋の中央に会議用の長机が四つ、長方形を作るように置かれていた。奥の机に男がひとり座り、その両脇に二人の若い男が立っていた。ウェスは座っている男が独立軍のリーダーだとすぐにわかった。
男は髪は一切なく完全に禿げていた。一方でヒゲはぼーぼーで口髭も顎髭もたっぷりと蓄えられていて、口を中心に黒い丸が描かれていた。ガタイは非常に良く、腕は丸太のように太い。袖がまくられて見える腕には多数の切り傷があった。
「お前たちは出ていろ。大人数で囲んで脅すのは好きじゃねえ」
男がそう言うとウェスたちを取り囲んでいた男たちはすんなりりと外に出た。
「座れ」
男はドスのきいた声で言った。ウェスたちは言われるままに目の前にあった椅子に座った。
「昨日の今日でこの辺をうろうろするとは随分と肝が座っているな」
「うろつかなきゃいけない理由を作ったのはそっちです」
マイムは怯むことなく言った。その横でカイムの顔は相変わらず青ざめていた。
「理由? なんだ、次の標的でも探していたか?」
「標的? なんの話です? むしろ次の標的を探しているのはそちらでは?」
マイムの言葉に男は訝しげな顔をした。
「王国兵殺しのことか? 先に断っておく。あれには俺たちは関与していない」
「そんな戯言を信じろというのですか?」
「信じるかどうかはそっちの自由だ。いずれにしても俺たちはそんな愚かな真似はしていない。それで、そっちはどう説明するんだ?」
「質問の意味が分かりません」
男はチッと舌打ちをした。
「とぼけやがって。俺たちの仲間が昨夜襲われた。あれはお前たちの仕業だろ? 王国兵殺しの報復のつもりか? だとしたら飛んだ勘違いしやがって!」
カイムとマイムは目を丸くした。
「お、襲われた? そんな話こっちには届いていません」
カイムは震えた声で言った。
「わざわざそっちに知らせる必要なんてないだろ。お前らがやったんだから」
「それは誤解です、ハックさん。われわれはそんなことしていません。それどころがその事実も知らなかった」
マイムはカイムと比べて冷静な口調で言ったがそれでも動揺しているのはウェスにもわかった。
「ふん。どうだか……ところで、その小僧はいったいなんだ?」
ハックはウェスの存在に今気がついたかのように言った。
「はじめまして。ウェスと言います」
ウェスは丁寧お辞儀をした。
「名前を聞いたんじゃねえ。騎士団と一緒に行動するお前は何者なんだって聞いたんだ」
「それをあなたに説明する必要はありません」
マイムがウェスの代わりに答えた。
「ふん。生意気な女だ」
ハックはそう言ってマイムを睨みつけた。マイムも対抗するようにハックを睨んだ。二人が睨みあい陳m久我訪れた。その時、
「ウェス! 気配を感じるよ!」
ジェシーがウェスにだけ聞こえる声で言う。ウェスに緊張が走る。次の瞬間、部屋の扉が開けられた。先程ウェスたちを取り囲んでいた男のひとりが立っていた。
「どうした?」
ハックが言う。
「邪魔してすいません、リーダー。その……娘さんがお見えです」
そう言う男の足元をすり抜けてひとりの少女が走り抜けていった。そして、ハックの足にしがみつくように抱きついた。ハックは少女をの頭を撫でながらさっきまでの険しい顔から一変して穏やかに笑った。
「どうした、メアリー?」
「パパ。あのね、ティムの耳が破けちゃったの」
メアリーはそう言って抱いていた赤毛の熊のぬいぐるみを見せた。
「治るかな?」
「大丈夫だよ、メアリー。お母さんがちゃんと治してくれるさ」
「本当?」
「ああ、本当だとも」
すっかりパパの顔に変わったハックを見てマイムの顔からも険しさが消えた。
「あー、騎士団のお姉さんとお兄さん」
カイムとマイムの存在に気が付いたメアリーは目を輝かせながら2人のもとに駆け寄っていった。ハックはメアリーの視界に入らないようにして露骨に嫌な顔をした。
「どうも、こんにちは。確かメアリーちゃんね?」
マイムは先ほどまでのハックとやり取りしていた顔と打って変わって穏やかな表情で言う。
「うん。それでね、こっちのクマさんがティムって言うの、メアリーの1番の親友なの。カワイイでしょ?」
「うん、とってもかわいいクマさんね」
「でしょー。 お兄さんもそう思うでしょ?」
「うん、とってもかわいいね」
さっきまでビビッて青ざめた顔をしていたカイムも子供が余程好きなのか緩み切った顔で答えた。が、すぐに自分を睨んでいるハックに気が付き、緊張した表情に戻った。そんなこと知らないメアリーは自分の親友が褒められて嬉しいのかニコニコと笑っていた。
次いでメアリーはウェスに話しかけようとしたところでハックが咳払いをした。
マイムもカイムもハックの意図が分かりすぐにハックの方に向き直した。メアリーもウェスに何かを言おうとするのをやめて、不思議そうな顔でハックとマイムとカイムの顔を何度も見比べていた。
「オスティーに伝えろ。我慢の限界だ。明日の三時にここに来い、と」
ハックは父親の顔から独立軍のリーダーの顔に戻して言った。
「あなたたちの要求に応じる必要など我々にはありません」
マイムも険しい顔に戻して答えた。
「それはお前が決めることじゃない。オスティーが決めることだ。わかったら帰れ」
マイムはなにか言い返そうとしていたが結局なにもいわず席を立った。ウェストカイムも立ち上がり四人は部屋を出た。
会館を出ると、外で待っていた男たちが睨むようにウェスたちをみた。ウェスは男たちをじっくりと眺めた。
「ジェシー、どの人かわかるかい?」
「うーん、ちょっとわからないかな。さっき少し感じただけだからね。それに完璧に表に出てるわけではないみたいだから」
「でも、この中にいるのは間違いないんだね?」
「うん。この近くにいるのは間違いないよ」
ウェスはもう一度全員の顔を見渡し、記憶した。そしてウェスたちはその場をあとにして、まっすぐオスティーが待つ兵舎に戻った。




