1. 廃墟と化した街にて
月明かりが照らす荒廃した街、かつての栄えた面影もなく、今あるのは崩れ果てた瓦礫の山と、どこかから聞こえてくる不気味な獣の雄叫びだけである。そんな中1人の少年がトボトボと歩いていた。
歩く少年の姿は異様であった。髪は老婆のように白く染まっていて、体もこれまた衰弱した老婆を思わせるようにあまりに細く、弱々しくガリガリであった。
月明かりに照らし出された色白な腕は棒切れのようで少しの衝撃ですぐにも折れそうだ。羽織っているコートは赤黒く染まっており、その色はコート本来の色ではなく、コートに付着した血であることはすぐにわかる。
そんな薄気味悪いコートとは対照的に白く可憐な一凛の花が胸ポケット刺さっていた。そして、手には汚れ一つない妙に綺麗なままの包丁が握られていた。
歩く少年に意識はなかった。歩いているのは少年の意思じゃない、別の何かの力だ。
やがて、少年は目を覚ます。歩みを止めぬまま辺りを見渡した。
「……? 僕は何を……? ここは……?」
答えなど期待していない単なるひとり言のはずだった、なのに……
「ここはキーブなんとか王国を真っ直ぐ西に進んでたら出た原っぱだよ」
どこかから聞こえてくる場違いに明るい少女の声に反応し、少年は再び辺りを見渡した。しかし、誰もいない。
「ここだよ、ここ、こ・こ」
声の出所を理解した少年は自分の手元を見て微笑んだ。
「変わった姿をしているね。君は誰だい?」
「もう忘れたの? 私はジェシー」
「そうか、ジェシーって言うのか……ジェシー僕たちはどこに向かっているんだい?」
「西だよ」
「西? なぜだい?」
「そうしろって言われたから」
「誰に?」
「ウェスに」
「ウェス……? そっか。ジェシー、もう1つだけ質問させておくれ、……僕は一体誰だい?」
少年はそう問いかけておきながら、答えを聞く前に再び意識を失った。ジェシーは、あっと小さな声を漏らしてから
「もう、仕方ないなー」
と呟きまた少年の步を進め始めた。
もう3年も前の話である。




