第三十話 再戦
そこは見慣れていた景色が存在した場所であった。焼き焦げた地面が広範囲に見られ、焼け落ちた家屋がいくつか存在感を示している。――ここは俺の村だ。
リクス達とはここに来る前と同じ距離を保っている。相変わらずにけた面が気に障る。
「ここがキミの故郷の村、だった場所らしいね。見晴らしが良くて実に良い実験場だ」
「――っ! お前達がこんな姿にしたんだろ!」
俺は剣を前に構えたがリクスは余裕の表情を崩さない。
「それは少し違うねえ。正確に言うと、この一四一番がやったことだ。うちの研究員から話は聞いているよ」
リクスは紫色の魔晶石を元の場所に戻すとその手でイヨイの背中に触れた。しかし、イヨイには何の反応もない。
俺が言葉を返さず睨んでいるとリクスが話を続ける。
「さて、今からキミにしてもらうのは――、いや、先にこの透き通った玉のことを説明した方が良いかな」
手に持ったガラス玉を俺に見せつけるように前に差し出され俺はそれに目をやる。
「端的に言うと、これはキミの弟だ。この子はキミに似てなかなか優秀でねえ。我々が次世代の研究として人間自身を魔晶石に変えるというものをしていたのだが、この子はそれに適合したんだ」
俺はその言葉を聞いた瞬間、何かが切れた。
「貴様あああああ!」
俺は剣を上げてリクスに斬りかかった。しかし、薄笑いを浮かべたリクスの手にあるガラス玉が光ると俺の身体に衝撃がぶつかり後方へ飛ばされてしまう。
「ぐっ!」
「はっはっは、話は落ち着いて最後まで聞くものだよゼクト君。それでこのガラス玉はそういうものなんだけどまだまだ実験段階でねえ。単体でも魔晶石以上の力があるのは確認出来たが我々は次の実験に移りたいんだ」
はじき飛ばされた俺はリクスの言葉を聞きつつ体勢を立て直して剣を構える。
「それはね、魔晶の力が宿った人間にこの次世代の魔晶石を埋め込むとどうなるか、だ。それにピッタリな人材が俺の横に居て、それと渡り合えるかもしれない力を持った者が俺の目の前に居る。どうだい、実験を行うには最高なタイミングだろ?」
俺はその言葉に声を張り上げるしかなかった。
「貴様! また俺にイヨイと戦えと言うのか! やめろ!」
そんな俺の声に反抗するかのように、リクスは意識がないイヨイの前にガラス玉を掲げる。すると、そのガラス玉が浮かび上がり、イヨイの身体に触れるとそのまま抵抗なく体内へと入ってしまった。
「ふふふ、はっはっは! ではゼクト君、あとは頼むよ。俺は離れた所から観戦させてもらうからね」
そう言うとリクスは再び魔晶石を取り出すとそれを掲げて姿を消す。俺が辺りを見回すと遠くの焼け落ちた家屋の柱の上にいるリクスの姿が目に入った。
俺は未だ俯いているイヨイに目を向ける。
「い、イヨイ……」
弱弱しく発した俺の言葉に反応してか、イヨイはゆっくりと顔を上げた。




