第2章 襲 撃 5
遊馬達は1階東館の東口にいた。
「やっぱりここも駄目なようだね。完全にシャッターが下りてしまってる。」
「遊馬さん。どうしよう。」
美沙は真っ赤な瞳で問いかけた。。
今でこそ泣いている奈緒の肩を抱きついてきているが、先程まで美沙も奈緒と一緒に泣き崩れていたのだ。遊馬に説得されてなんとか落ち着きを取り戻していた。
遊馬は携帯を取り出して操作を始めた。「なるほど。それならここからの方が近いな。」と呟き、すばやくメールを打つような動作をすると、パタリと携帯を閉じた。
「晃、この美沙ちゃん達のこと頼めるかい?」
「何するんだ?」
「ちょっと地下の制御室に行って、この防火シャッターを上げてこようかと思ってね。」
遊馬は宿題を済ませてくるような気軽さ、これには晃も美沙も驚いた。
「遊馬。何言ってるかわかってるのか?制御室なんてとこにはさっきの放送してた『十二使徒』ってのがいるに決まってるだろ。」
「そうです。危険ですよ。大人しくここで警察が来るのを待ちましょう。『きっと近いうちに警察が駆けつけるから大丈夫』って言ったの遊馬さんですよ。何処かに隠れている方がいいに決まってます。」
「そうだね。だから3人は何処かに隠れててほしい。」
「遊馬さん!」
「僕は大丈夫だから。晃がいれば2人とも大丈夫だよ。それにシャッターを開けるために龍朱も動くみたいだしね。」
「お兄ちゃんが?」
「そう。だから地下に近い僕が開けに行くほうが早いからね。」
「でも。どうやって?」
「ここからだよ。」
遊馬はトイレを指差した。
「トイレから天井裏に入って、地下に入る通路を探すよ。」
「そんな無茶苦茶な!」
「無茶でもやるしかないからね。」
遊馬は笑顔で語りかけた。
「龍朱はすぐ無茶するからね。僕も動いて少しでも龍朱の負担を減らさないと。僕の能力≪ちから≫なら彼等に見つからずに行動できるからね。」
「でも…。」
美沙はポンと肩をたたかれた。
振り向くと、晃はいつになく真剣な眼差しで美沙を見て首を振った。
晃は遊馬に視線を移した。
「大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思うよ。」
「わかった。」
「じゃあ、よろしくね。いってくるよ。」
遊馬は振り返る事なく歩いていった。
第2章はこれにて終了となります。
次回更新からは、第3章の始まりです。
お付き合いいただければ、幸いです。