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SATAN  作者: 司堂 要
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第2章 襲 撃 3

「お話の続きをしてよろしいですか?」

 美涼は席に座りなおし、紅茶の残りを飲み干した。

 龍朱は一度美涼を睨み、、乱暴に腰を下ろした。

「分かってただろう。なぜ妹もここに連れ込んだ?」

「仮に、『美紗さんが危ないからここに行かせてはいけません』と言って、貴方は信用しましたか?」

 龍朱は言葉を詰まらせた。

「妹さんは初めからここに来る予定だったはずです。止めることは不可能だったのです。」

「でも…、なんか他に方法はなかったのか?」

「友人との約束をしていたのでしょう?簡単に予定を変えるのは無理だったと思いますよ。」

 龍朱は絶句した。反論が浮かばなかった。確かに友人と買い物に来ると言っていた。どうするのが正しかったのか?自分には何ができたのか?考えれば考えるほど、どうしようもないジレンマに陥っていく。

「だから、貴方をここに呼んだのです。」

 まっすぐと見つめられた美涼の視線。

「落ち込んでいる暇は無い」と訴えるかのような厳しい眼差しだった。

「貴方が未来を変える鍵と申し上げたでしょう。」

 龍朱は頭を強く掻き、「あーーーっ」と一声あげた。

「分かった。話を聞こう。」

 覚悟を決めた眼で美涼を見返した。

「ありがとうございます。これからの事を一緒に考えましょう。」


「妹さんは結城君と一緒にいます。この時点で私の見た未来とは状況が違います。結城君と古藤君が入ればしばらくは大丈夫だと思います。まずはこの階から脱出することが先決です。」

 龍朱と美涼は喫茶店を出て中央棟と西館の境まで来ていた。そこにはシャッターが下りており、中央棟にも下の階にも行けない状態だった。

 簡易の館内案内があり、それを見ながら話を今後の話をしていた。


【ヒビノモール案内掲示板】

3F

 東館:ゲームセンター,書店

 西館:レストラン街

2F

 東館:子供服,おもちゃ,家具

 西館:夫人服

1F

 東館:メンズ・レディースファッション

 西館:紳士服,化粧品

B1F

 東館:雑貨、お土産

 西館:生鮮食料品,お惣菜


「いえ、おそらく『十二使徒』と名乗る輩達やからたちは中央棟一階に人を集めるはずです。」

「なんで中央棟に集めると分かるんだ。」

「各階をシャッターで仕切り、順々に人を移動させるのでしょう。そうとなれば中央棟に集めるのが一番手間が少ない。更には、中央棟一階はイベント用に作られてますので障害物が少ない分、集めた人間を少人数で監視できますからね。」

「美沙達は一階東館にいるはずだ。携帯で連絡してみるか?」

「美沙さん達が、見つからないように何処かに隠れているとしたら連絡をすると見つかる確率を上げてしまいます。もし捕まっているのなら、携帯は取り上げられるでしょうから、連絡は取れないはずです。」

「じゃあどうすんだよ。」

「Twitterを使います。あらかじめ結城君には知らせてあります。お互いフォローをしてますから捕まるまでならある程度連絡を取る事ができます。まだ結城君からの連絡はありませんが…。」

「遊馬にも遊馬の事情があるんだろう。こっちはどう動く?」

「先程も言いましたが、各フロアごとに人を移動させるという事は、全てのフロアに人を同時に送れないと考えるのが自然です。相手の人数は少ないはずです。どのフロアから人間の移動をするかは分かりませんが、一刻も早く各階のシャッター上げる事を考えるほうがよいでしょうね。」

「で、そのシャッターを上げる方法は?」

「おそらく地下一階。中央棟の真下辺りにある管制室に制御スイッチはあると思います。」

「じゃあ、まずは地下に行かないといけないわけだな。経路は?」

「そうですね…。…んっ?」

 美涼は突然眼をこらし何もないシャッターを見つめだした。

「誰か来ます。急いで隠れましょう。」

「おい、ちょっと。」という龍朱の手を引き近くの回転寿司の店の入り口に向かった。

 ガガガガガ…。

 程なくシャッターが開きだした。

 二人はすし屋の入り口横のカウンターの下に滑り込んだ。

「身長180センチ以上ある体格のいい男性が入ってきました。」

「『視えた』のか?」

「何とか。」

 コツコツコツと廊下を通り過ぎる足音が聞こえる。

「こいつが。」

「おそらく『十二使徒』の仲間かと。ここに来たということは、シャッターの鍵を持っているかも知れません。」

「鍵?」

「えぇ。制御室から遠隔操作もできますが、コンピューターの不具合での誤作動などのことも考えて鍵もあるはずなのです。もしかしたらこの階の鍵を持っているかも知れません。」

「それじゃあそいつを何とかして奪えばこのフロアからの脱出は…。」

「可能になります。」

 龍朱はしばらく考えた後、真剣な顔で美涼に問いかけた。

「二つほど確認する。」

「はい。」

「十秒後の未来が見えるって言うのは本物か?もう一つは、入ってきたのは一人しか見てないんだな。」

「どちらの質問もYesです。」

 龍朱はニヤリと笑った。

「よし、それなら…。」


新年初更新です。

この第2章はその5までつづく予定です。

お付き合いいただければ幸いです。


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