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SATAN  作者: 司堂 要
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第2章 襲 撃 2

 ヒビノショッピングモールは、地上三階、地下一階の総合ショッピングセンターである。

 円筒形の中央棟に東西に直方体の東館と西館が伸びている。

 一階には若者向けメンズ・レディースのファッションや紳士服,化粧品店が立ち並び、二階は婦人服や子供服、家具やおもちゃ売り場となっている。三階東館には書店やアミューズメント施設を完備。西館三階のフードスペースは休日、多くの人たちが集まっている。地下一階にはスイーツや日用雑貨売り場、生鮮食品売り場があり、生鮮食品は地産の新鮮な肉や野菜を取り揃えている。

 円筒形の中央棟は一階から三階まで吹き抜けになっており開放感がある。更に天井もガラス張りとなているため、太陽の光を棟全体に取り込めるようになっている。基本的には西館と東館を結ぶ連絡棟の役割を果たしているが、中央棟一階スペースでイベントを行う際は中央棟が全てイベントスペースの役割も果たしている。


「どうしてこうなったんだ…。」

 龍朱はヒビノモールの前で一人愚痴た。

 美涼と別れ、自宅に戻って事情を説明したところ、美沙は調度友人の有栖奈緒ありすなおとヒビノモールに行く約束をしていたらしく、遊馬と買い物ができるなら喜んでと快諾。遊馬と友人に急いで電話を掛けていた。

 準備を済ませ遊馬と奈緒と合流し、ヒビノモールに向かっていたところに晃が鉢合わせしたのだ。美沙は反対したのだが、奈緒が遊馬と晃の二人と一緒に過ごすことなんてめったに無いと晃の意見に賛同。しぶしぶ承諾し、合計五人でヒビノモールに向かう事になったのだ。

 美涼とはヒビノモール中央棟南口で合流した。

 少し驚いた顔をしていたが、

「お食事は沢山で食べるほうがおいしいですからね。楽しい夕食になりそうです。」

とにこやかに微笑んでいた。


 中央棟に入り、午後六時に三階のレストランで待ち合わせの約束をすると、美沙達四人は東館へ向かっていった。

「さて、どちらに参りましょうか?」

「三階のフードスペースの喫茶店に行きましょう。あそこの紅茶は美味しいのですよ。」

「じゃあそこにいきましょうか。」

 二人はエレベーターに乗り、三階西館の喫茶「散歩道」に向かった。


 「散歩道」の窓際の席に美涼と龍朱は向かい合って座り、二人の目の前には入れたての紅茶が湯気と心地よい香りを立ち上らせている。

「さてと。本題を聞きましょうか。先輩。」

 美涼は紅茶の香りを楽しみながら一口含み、微笑えんだ。

「まだ時間はゆっくりありますのに。紅茶を味あわれてはいかがですか?」

 龍朱はまだ熱い紅茶を一気に飲み干して、美涼を見据えた。

「何を企んでるんだ。俺たちに危害を加える気はないみたいだが。」

「危害なんてとんでもありません。ご相談があると申し上げたではないですか。」

「それでなんだよ。」

「そんなにツンケンされなくてもよろしいではありませんか。」

 もう一口紅茶を口に含んで、テーブルに紅茶を置いた。

「仕方ありませんね。では、本題と参りましょう。」

 龍朱を見据え、話を始めた。

「このたびは私に力を貸していただきたく、お時間をいただきました。」

「力仕事でも頼みたいのか?」

「そうですね。ある意味、力仕事になりますわね。今朝、貴方の力を見せていただきました。」

「・・・・・・」

「その力を私に貸していただきたいのです。」

「何の話だい?力なんて何にも使ってやしないぜ。買いかぶりだろ。」

「いえ、そんなことはありません。私もデュナミスですから。」

 龍朱は目をみひらいた。

 そんな状況も意に介さず、美涼は紅茶にひと口つけて話を続けた。

「私の力は未来予測リベレイション。具体的に言えば予知よち啓示けいじが能力となるでしょうか。」

「占い師にはもってこいだな。」

「そうでもないのですよ。予知は十秒後のことしか見えませんし、啓示は不意に頭に流れ込んでくる未来の記憶のようなものなので、意識的に見れるものではないですので。」

「未来の記憶?」

「えぇ。未来に起こる出来事ですね。始めは偶然と思っていたのですが、それが外れないのです。私は結果をただ見ているしかなかったのですよ。」

「そいつは難儀な事だなぁ。それで、俺にどうしろと?」

「貴方には、その未来を変える手伝いをして頂きたいのです。」

「俺にはそんな力はないよ。」

「そんなことはありませんよ。私が見た啓示では、未来を変えられるかもしれない鍵は貴方だと。」

「買いかぶりすぎだろう。厄介ごとは抱えたくないんでね。すまないな。」

 龍朱はケーキを二口で平らげ、レシートを持って席を立とうとした。

「待ってください。まだ話が…」

「いや、話は終わりだよ。本当の力仕事なら手伝ってもいいから、また声をかけてくれよ。これは借りを作りたくないんでね。俺が持つよ。」

「そうではなく、まだ話が…」

 ウーーーーー。

 突然のサイレン音。

 喫茶店内の客が騒ぎ出した。

 ガッコン

 ガガガガガガガッ

 館内に鳴り響くシャッター音。

 店内の客がパニックになり店外に出て行くなか、美涼は落ち着いて席に座ったまま紅茶を飲んでいた。

「始まってしまいましたね。」

 龍朱は美涼の胸倉を掴み、立ち上がらせた。

「どうなってんだ!こうなること知ってたのか?」

「だからまだ続きがあると申し上げたではないですか。落ち着いて話を聞いてください。」

 睨み付けてくる龍朱の目を美涼は物怖じせず見返している。

「このままだと妹さんの命が危ないのですよ。」

「美沙が?美沙がどうなるって…。」

 ピーッ…ガー…

 館内放送のスピーカーが入った。

『我々は、『十二使徒』。

このショッピングモールのシステムは我々が掌握した。

各フロアおよび出入り口の防火シャッターは下ろさせてもらっている。

我々も無駄に諸君らを傷つけるつもりはない。大人しく我々の指示に従ってもらいたい。』

 龍朱は美涼から手を離し、呆然と立ち尽くした。


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